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<見捨てられた者たち>

 三日月島の外園からの報告書を完全に無視した日本の外務省であるが、すぐに似たような案件に対応することになる。

 それはサマール王国よりもさらに南にあるチョコリカン王国という国での出来事だ。外務省から派遣された使節団が国王に謁見して日本という国名を名乗ったところ、国王は外務省職員の言葉をさえぎってこう言ったのだ。


 「日本・・・どこかで聞いたことがあったな。・・・ああ!あの十年前に皆殺しにしてやった蛮族たちの国か」


 この発言にはその場にいた外務省職員全員が困惑した。十年はおろかこの世界に来て一年もたっていないのが日本の状況なのだ。結局この時に国交開設の話はまとまらず、その後何度も交渉を行なうことになったのだがその途中にとんでもないことが発覚した。

 それはサマール王国の日本大使館に侵入した獣人が発端であった。その獣人は羊皮紙に書かれた日本語の文書とそれぞれ違う人物の名前が書かれた運転免許所を所持しており、調べたところ十数年前の失踪者たちだとわかったのだ。


 文書と侵入した獣人からの話によると今から十五年前、当時日本人と獣人たちが暮らしていた場所をチョコリカン王国が侵略してきたのだという。しかし多勢に無勢、そこにいた日本人は今ではすべて死んでしまい今は生き残った獣人たちがほかの国の獣人に協力してもらいながらゲリラ活動をしているそうだ。


 そして、ほかの国に問い合わせたところチョコリカン王国による侵略があったのは事実であり、確実な証拠もあったことからこの情報はすぐさま首相官邸へと送られたのである。



・・・・・



 異世界における日本人殺害について、日本国政府は緊急の会議を開くことになった。しかし、この会議は開いたことが意味ないほどまともな話が進まなかったのである。

 その原因は会議に出席した外務省の官僚、穴見茂あなみしげるが原因である。チョコリカン王国への抗議に関しては国交がないという理由で言い訳をしたためそれ以上の話に進めなかったのだ。

 そのうえ・・・。


 「今やっと国交開設の話がまとまりそうな時期なんです。邪魔になるのでこんなことで騒ぐのはやめてください」

 「たかが十数人のごときのことで国交開設がなくなってもいいんですか、こんなことにこだわって国交開設ができないのは国益に反する」


 といった持論を展開したのである。しかしこの情報と発言が漏れ、新聞を通して国民に知れ渡るとその怒りは外務省へと向かうことになる。

 しかし、それでも外務省はこれに対応するための仕事を何一つせず停滞状態となる。抗議もせず、国交の開設をするわけでもなく、ただ現状維持をするだけになったのである。




 これで完結とさせていただきます。

 この作品を書き始めたきっかけは日本が異世界に転移するほかの作者の方の作品を読んだとき、逆に人工衛星などが使えない球体の内側のような異世界に日本が転移したらどのようになるのだろうということから始まりました。

 そのため、異世界で苦悩・活躍する日本というものではなく、球体の内側という世界観だけを書きたかったというのが正直なところになります。

 長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。


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