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鬼は死して尚、修羅を生く  作者: 夢現
第一章 明日の事を言えば鬼が笑う
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第一章07 『さくら色の記憶』

 空も少しずつ白んできたようで、蛍光灯の明かりと窓から射し込む柔らかい光とが道場の中で溶け合っている。


 街のあちらこちらで音が目覚め始め、太陽の動きに合わせて繰り返される営みの再出発を共有する。


 蛇口を捻ると細長い管を旅したお湯が、無数に空いた穴から外の世界へと勢いよく飛び出した。温められたお湯は冷え込む外気に触れて真っ白な湯気を作り出す。


 宗馬は汗ばんだ体をシャワーのお湯で流し、そのまま髪の毛を濡らしていく。

 髪の毛先から足の先までを辿る流水は、最後には排水溝の上で渦を作りながら飲み込まれてしまう。


 汗や汚れを洗い流すと、気持ちに区切りが付いて、新たな始まりをすんなりと受け入れることが出来るから不思議だ。


 いつも髪の毛から洗う宗馬は、この日も無意識にシャンプーのポンプを押して手の平にとろみのある液体を出す。両方の手の平を素早く擦り合わせて泡立たせると、馴染みのあるシトラスの香りが宗馬の周囲を漂い包み込む。


 不意に記憶がフラッシュバックして、鮮やかな真紅の色が宗馬の視界の隅を通り過ぎる。


 栞の髪の色だ。

 栞が道場を出て行った時の記憶だ。


 栞の残した香りに覚えがあったのも当然の話である。

 いつもなら宗馬を落ち着かせるはずの香りは、洗い流すことも出来ず蟠った感情を思い起こし、何故か心をざわつかせた。


 ――俺は何を迷っているんだ?


 宗馬は吸い込まれて消えていく水の流れを見つめている。


 栞が何か問題を抱えていることは交わされた会話の端々から伝わってきた。やり遂げなければならない目的があるとも言っていた。しかしそれらは、宗馬が軽い気持ちで首を突っ込んでいい話とも思えない。


 それに何かが引っかかるこの違和感は何だろうか。


 長い夜の短い時間を偶然共有しただけの間柄だ。

 その束の間の時間でのやりとりが宗馬の頭の中で断片的に何度も再生されていた。


 役割を与えられぬままの泡は、手の平を抜け出して手首を伝い、曲線を描きながら腕を流れ、肘の出っ張りに大きな玉を作っている。重力に負け落下した白い雫は、透明なお湯の流れに濁りの筋となって伸びていく。


 どうじゅつ――とかいう力? のようなものを使っていた。


 にわかには信じ難いが、実際に目にした宗馬には少なくとも手品の類には見えなかった。

 印を結ぶような動作をしていた。あれが目線を誘導する囮で本筋の仕掛けが何か別にあったのか。とにかく十五歳の全裸の少女が巨大な火の玉を作り出した。


 体には何も隠していないことを裸一貫で証明してみせた。


 そのおかげで反応が遅れ、危うく殺されそうになったのだが。


 そういえば誰かに見つかったと言っていた。何者かに追われているのか。その何者かも不可思議な能力を持っているのだろうか。

 自分がここに居たら宗馬や宗馬の家族に危害が及ぶかもしれないからと慌てて出ていった。

 果たして無事に逃げることは出来たのだろうか。


 ――いや、違う! あいつの瞳は闘う覚悟をした者の瞳だった!


 宗馬の家に栞が居たことが特定されてしまった。


 栞が逃げてしまったら、栞を追う何者かがここを訪れ、凶行に及ぶかもしれない。

 その可能性を危惧した栞は、何者かを迎え撃つ覚悟を決めたのだ。


 ――俺や俺の家族を守る為に!


 ゴミ箱から引っこ抜いてやっただけだ。着替えと風呂を貸してやっただけだ。パンツを見た。あろうことか裸も見た。名前と年齢を知ってるだけだ。他は何も知らない。そんな得体の知れない男や、その家族を守る為に闘おうとしているのか。


 宗馬が切迫した事情を抱えていることは事実だが、栞もそれは同じで、内容の違いはあれどそこに大小や優劣をつけること自体間違っている。重要なのはその状況下で他人を思いやり、慮る行動が出来たかどうか。


 心の内でどのような葛藤があったのか、無かったのか知る由もないが、少女は見事それをやってのけた。


 ――クソっ、ダセぇな俺。


 蛇口を捻るとお湯はその勢いを失っていき、やがて止まった。


 足下からお湯の吸い込まれていくゴポゴポという音が聞こえてくる。


 湯気ですっかり曇ってしまった鏡を大雑把に一撫でする。薄く貼った幕を破り取ると宗馬の顔の半分程が写り、もう一人の自分と視線がぶつかり合う。

 つり上った目の中心で暗く光る、深い漆黒が宗馬を見つめる。


 宗馬のよく知る瞳がそこにあった。


 闘う覚悟を決めた者の瞳が――。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 二王頭は大倭仙人会おおやまとせんにんかいに籍を置き、これまで何人もの道士(どうし)を輩出してきた日本有数の名家である。


 道士は道術という古代中国にその起源を持つ、特殊な能力を使う者達のことである。


 伝来後は、陰陽五行思想や天文学、暦学、易学など、様々な要素を取り入れ、日本独自の発展を遂げた。


 程なくして、政治の表舞台に進出していった陰陽道とは似た側面を持ち合わせていたが、時代が進むにつれ、それとも一線を画す存在となった。


 道術は地球の大地の下を網の目の様に張り巡らされた龍脈から、龍血と呼ばれる目に見えない大地の力を吸い出して、自らの体の中に流れる氣と混ぜ合わせる。


 それから天の印と呼ばれる印を手で結び、融合させた氣を術に合わせて変換し、地の印を結び外に送り出す。


 それを受け取り吐き出すゲートの役割を担うのが、道術を使う際に重要な道具である札である。

 何も知らない者が見れば、呪文のような文字の羅列で埋め尽くされた神社やお寺にあるような札だ。


 道術はこの様な流れを辿り、最終的にその札からあらゆる現象となって行使される。


 尚、天と地の印は使う術によって結び方、組み合わせは異なる。札に書かれる文字もまた然り。

 故に道術には無限の広がりがあり、その修行は当然過酷なものとなる。


 また、道士について語る上で欠かせないのは殭屍(きょうし)の存在である。


 殭屍とは道士が使役する使い魔のような存在であり、有事においてのパートナーでもある。

 その存在は殭屍の文字が示すように、人間の死体を道術によって使役する。


 火葬が基本の日本人的感覚からするとかなり異質だが、殭屍の実態がそれである。


 まず新鮮な死体を確保する。

 何よりも死んでからの時間が短いことが重要になる。無論死体は時間の経過と共に徐々に腐敗していく。


 だが理由は他にも有り、それは魂の定着の問題からだ。


 魂の失われた死体を操り動かすことも可能なのだが、その場合術者は常に殭屍に氣を送り続け、尚且つ殭屍を操る繊細な技術が求められる為、術者への負担が大きい。

 加えて剣の達人等、生前に培われた技を引き出すことが出来るのは、当然本人の経験によってのみしか出来ないことなのだ。


 魂を保ったままの新鮮な死体の確保が出来たのならば、例によって札を使う。

 札を丸めて死体の口へと押し込む。印を結び死体に氣を送ると、死んだ者が再び魂を体に定着させた状態で体を動かすことが出来るようになる。

 とはいえ、生き返った者が勝手な行動をしてしまっては困るので、殭屍は術者の命令には絶対に逆らえないようになっている。


 道士は主にこの二つの力を使い、現在では凶悪犯罪を追う警察への協力や、国会議員や国賓といった要人の警護などの治安維持。

 加えて、古来より受け継がれてきた様様な伝承や知識を、民俗学や歴史学などの専門学の分野に寄与したり、災厄や穢れを祓う神事、風水や占星術、数秘術(カバラ)などを駆使した占いをおこなったりと、その活躍の場は多岐に渡る。


 また、大倭仙人会は太古の昔より日本の国の中枢に深く関わり、重要な責を負ってきた。

 その為組織の持つ影響力は甚大で、国の一大事には必ず背後で彼等の暗躍がある。


 二王頭は日本国内において五本の指に入る道士の名門であり、その本家の一人娘が二王頭 栞である。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 東の空から日が昇り、放射状に広がる光の直線が思い思いにその丈を伸ばし、乱反射しながら空に色彩のコントラストを描く。


 すっかりと夜は明け、新しい朝が訪れていた。


 ダボダボのジャージ姿で住宅街を息を切らしながら走る栞の姿があった。


 反対側の歩道で散歩途中の犬が何やら一生懸命地面に鼻を擦り付けて匂いを嗅いでいる。何かの残り香に夢中になっている愛犬の横で、眠たそうにその行為の終わるのを待っている飼い主のおじさんが、栞の走り抜けていく姿を大欠伸をしながら見送る。


 栞の走る姿を見かけた人は、お年頃の女の子が思いつきで何度目かの続かないダイエットを始め、兄か父のジャージでも借りて慣れないランニングをしているものと思うのだろう。


 胸の前で揺れるリュックだけがやや違和感を覚えさせる。


 だが実際のところ事態はもう少し切迫していた。


 栞の心臓はドラムを連打しているように耳障りなほど激しく鼓動し、肺は忙しない収縮に目を回し悲鳴を上げていた。

 喉が焼ける。

 いつのまにかジャージの下もじんわりと湿っていて、先程サッパリとしたばかりの体を滲み出る汗がベタつかせていく。


 ――だいぶ離れたかな。


 氣を高め、なるべく目立つように放出しながら移動したつもりなのだが、上手く引きつけることは出来たのだろうか。


 結局栞が使役する殭屍を見つけることは叶わなかった。


 準備不足のまま迎え撃つことになるとは予想外だが、もう後戻りは出来ない。どのみち乗り越えなければならない障害なのだ。

 そのタイミングが遅いか早いかの違いでしかない。


 程なくして、栞は広いグランドのような所に辿り着いた。


 粒の細かい乾いた土が一面に広がり、奥の方へいくと背の低い草が生い茂っている。

 野球も出来るようになっているのか、見上げる程高いフェンスが周囲を囲っている。

 人の気配は何処にも無く、木々の騒めく音だけが唯一存在を主張していた。


 栞は膝に手をつき、なんとか呼吸を整えようとする。冷たい風が吹き抜けると、火照った体にひんやりとして気持ちが良い。


 ――ここにしよう。ここなら何かを壊して迷惑をかける事も無さそうだし。


 善は急げ、休む暇も無いまま栞は戦闘の為の準備に入る。


 大事に抱えていたリュックを下ろすとチャックを開けて、中から札を何枚か取り出す。


 札は黒墨の文字で隅々までびっしりと埋め尽くされている。全て漢字で書かれた文字は栞が書いたものだ。


 道士の修行には習字も含まれており、女性らしい流れるような文字はしかしながら達筆で、年齢以上の大人びた字面だ。


 グランドの四隅にそれぞれ一枚ずつ貼り、火の玉を出した時のように一枚貼る度に右手で印を結んでいく。

 四隅全てに貼り終えると、グランドを満たす空間が揺らぎ、シャボン玉のような膜でグランド全体が覆われた。


 これは道術の一種で、人の意識から空間認識を阻害する結界を張ることが出来る。つまり、このグランドに立ち入ることは愚か、その存在を意識すること自体が出来ないという事だ。

 尚、栞のように道術を使う者には殆ど効力が無く、あくまでも関係の無い一般人を巻き込まないようにする為の火急の措置である。


 戦闘用の札も予備を含め、多めに持って来ている。先刻、予想外のアクシデントが起こった際に思わず一枚使用してしまったが、支障は無い。

 本当に、全然、全く。


 人生最大の痴態を思い出して、火照った体が余計に熱を帯びる。


 人払いの結界を張っておいて良かった。


 きっと冷たい外気に触れて栞の頭から湯気が出ていたことであろう。


 栞は大きく息を吐き出すと、額の汗を拭った。とりあえずの準備を終え一息つくと、急に焦りと緊張が襲ってきた。


 栞にとって練習以外での他人との実戦は始めてである。


 落ち着け、落ち着けと何度も言い聞かせてみるが、心の内で唱える度に、心臓が爆発して肋骨を突き破ってしまいそうな気がする。

 栞は手の平に人の文字を三回書いて呑み込むというなんとも古典的な方法にすがろうとする。一回、二回と書き終わり三回目の人に取り掛かろうとしたその時――。


 ズバアァァァ!


 鋭い刃の一振りが鉄製の金網を斜めに斬り裂き真っ二つにした。重たい金網が折り畳まれるように落下すると、空高く土埃が舞い上がった。


 物を壊さないようにとした栞の配慮は、ものの見事に無駄骨となった。

 悲しいかな、思いやりや気遣いも、伝わらなければ所詮は独りよがりか。


 土煙の中に二つの影が現れる。


 栞の体がビクッと震え、緊張が走る。瑞瑞しい朝の風が粉煙を攫い、明らかに異質な空気を纏った二人の男達のその全貌が露わになる。


「まさか逃げずに立ち向かってくるなんて、良い度胸じゃないですか。ですかぁ。栞お嬢様ぁ」


(よもぎ)さんっ!」


 蓬と呼ばれた男は時折吹く風に長髪を揺らしている。


 その隣には頭巾で顔を隠した男。

 布の隙間から、黒く塗り潰したような瞳がじっとりと栞を見ている。


 栞は鋭い視線で二人を見返す。


 派手に登場した長髪の男と、その隣を歩く一体を栞は知っている。


 全身を闇が覆っているような黒尽くめの長髪の男は二王頭蓬(におうずよもぎ)といって、二王頭家の分家当主の息子であり、分家の跡取りとして最有力候補である。年齢は栞より八歳上の二十三歳になる。


 栞はチラリと蓬の隣で静かに佇む巨躯を見やる。

 何の感情も感じられない黒いガラス玉のような瞳と目が合った。その瞳を見つめる栞の表情が一瞬曇り、その顔を歪ませると、逃げるように瞳を逸らした。


 ――弁慶。


 『武蔵坊弁慶』


 源義経に仕えたとされる僧兵である。


 平安時代、京で帯刀した武者と決闘をして千本の刀を奪うという腕試しをしていた弁慶は、九百九十九本の刀を集め終わり、最後の一本である千本目の決闘において、牛若丸(後の義経)に敗れその家来となる。


 その怪力無双は義経を助け大いに活躍した。


 また、敵方の雨のような矢を浴びて立ったまま絶命したとされる壮絶な最期、『弁慶の立往生』は有名な逸話である。


 では何故弁慶の死体を二王頭が手に入れることが出来たのか。


 一説では頼朝に仕えていた先祖がその死体を譲り受けたという。

 代々二王頭の当主に弁慶の殭屍は受け継がれ、その支配権を当主の座と共に譲渡してきたのだ。

 栞の父である二王頭創(におうずはじめ)も受け継ぎ、使役していた巨躯の殭屍。今は栞の前に立ちはだかり、その刃をかつての主人の娘へとむけている。



 淡い色味に包まれた幼き日の記憶が思考を追いやり、栞の頭の中を満たしていく。


 桜の花びらが風に舞い、地面をピンク色に染めていた。

 いつ頃の記憶か定かではないのだが、世界を覆い隠してしまうような桜吹雪を鮮明に覚えている。


 下から見上げると顔すら見えない大きな体に駆け寄って幼い栞は肩車をせがんだ。


 弁慶は巨体を無理矢理縮こまらせるようにして屈み込み、小さな栞に視線を合わせる。

 顔全体を覆う白い頭巾の隙間から、かろうじて覗く両目が困ったように笑った。

 弁慶はいつも、栞が我が儘を言うとそうして目を細めた。


 栞はその優しい目元が好きだった。


「栞お嬢様。危ないですから、絶対に暴れてはいけませんよ」


「うん! 弁慶早く早く!」


 弁慶は栞の脇の下を掴むと、軽軽と栞の体を持ち上げ、自らの肩に乗せた。

 弁慶の肩に乗ると、栞の眼に映る景色は一変した。

 世界の全てが見えるようになった気がして、栞の心は弾み、その瞳を輝かせた。


「栞のお家はどこかな? 見て弁慶、あっちに変なお家がある!」


「栞お嬢様、落ち着いてください!」


 栞は弁慶の心配などどこ吹く風、自由奔放に無邪気な嬌声を上げている。弁慶は気が気でない様子で栞の一挙手一投足に神経を注いでいる。


「お父様、お母様!」


 栞が振り向いて手を振ると、その視線の先で寄り添うように佇む二人の男女。


 栞と弁慶のやり取りを後ろで微笑みながら見守っていた二人は、栞が手を振りながらこちらを見ているのに気付くと、ヒラヒラと手を振り返した。



 今はもう失われた幼き日の輝かしい記憶。

 取り戻す事のできない過去は、振り返るとその輝きを増し、未来に向かって細く長く影を伸ばす。


「さぁ、大人しく仙道の札(せんどう ふだ)を渡してもらいますぜ。ますぜぇ」


 抑揚の無い気怠げな声がして、栞は我に帰る。一度目を閉じ、よぎる逡巡を強く振り切る。


 ――迷うな私。弁慶はもうお父様の使役する殭屍じゃないんだ。


 栞は真っ直ぐに前を見据えた。殭屍は術者には逆らえない。闘うしかない。


 かつて優しく笑いかけてくれた目元には影がかかり、その心情は判然としない。


 弁慶に対抗する力、共に闘う殭屍の存在のないまま、栞の未熟な道術では立ちはだかる二人には到底敵わないかもしれない。


 だがそれでも、栞に逃げの選択肢は無かった。


 自分にはやり遂げなければならない使命がある。その決意だけが彼女に無限の勇気を与えていた。

 蛮勇と言われようと、無謀と言われようと揺るがない、若さ故の大胆さが栞の背中を押していた。


「抵抗するなら死んでもらいますぜ。ますぜぇ」


「あなたに仙道の札は絶対に渡しません! お父様が事故で亡くなった隙に弁慶を奪い、本家当主を名乗るなんて許せません! 私の夢のためにも、蓬さん、あなたには絶対に負けません!」


「フハッ! 落ちこぼれと言われた栞お嬢様が一族一の道士の俺を許さないですか。ですかぁ! どう許さないのか教えて貰おうじゃないですか。ですかぁ! 殺れ、弁慶!」


 無言のまま白い巨人は蓬の前に出る。命令を与えられ、電源の入れられた機械のように目の奥が鈍く光った。栞は札を右手に持ち、臨戦態勢を整える。


 栞にとって覚悟を試される闘いが始まろうとしていた。

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