表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/102

6話 ツイスター打法解禁!。。

6話 ツイスター打法解禁!。。


三谷中学監督の近藤は七瀬のプレーに驚嘆と疑問を持った。

『確かに、スクイズを読んでサードランナーより前にダッシュをしたのは驚きに値する、、が、、あのゴロはピッチャーが取るのがセオリーだ。サードが取るなんて、、」


七瀬はバッターのサインを見終わった後の仕草に、違和感を感じて見事にスクイズを読んだ。

その違和感とは、おそらく他の者には分からないだろう。

独特のフィーリング、、オーラが見えるとでも言おうか、、


ピッチャーの投げるクセもそうだ。ストレートを投げる時に誰でも力を入れる。その時に感じるオーラが見える、、七瀬独特のフィーリング…


七瀬は焦っていた。

冷静に考えるとまだスクイズで点を取られてもまだ3点。初回に3点はまだセーフティーゾーンだ。

そしてバッターをアウトにして、ワンアウトランナーなしから、仕切り直すのがベストだろう。


しかし、七瀬は焦っていた。

前の世界ではこの試合、コールドで負けていたからだ。

1点でも取らせない!その強い気持ちが七瀬のミスに繋がった。


七瀬は、ボールを和田に渡してサードのポジションに引き上げる。

『くそ!俺とした事が、、、野球は中学もプロも関係ないな、、』


しかし、ここで乗り越えられる精神力を持っているのがスーパースター七瀬 健である。

こうゆう時は、集中だ。

七瀬の特殊な能力といってもいい、超集中力が発揮される。


ノーアウト1塁 で迎えるは5番バッター。


和田は第1球を投げる!

バーン!

「ボール!」

七瀬は集中してバッターを見ている。


2球目!

バッターはセーフティバントの構え、その構えの動きをする一瞬の動きを捉えた七瀬は、またもやダッシュ!

バッター、バント!

だが、転がったボールのすぐそこには、もう七瀬がいた!

七瀬ボールを捕って、超高速スローイングで、セカンドへ!

豪速球がセカンドへドンピシャだ!

そして、セカンド黒柳はファーストの丹羽へ!

アウト!ゲッツー!


七瀬の超ファインプレーが飛び出した!

「ツーアウト!」

七瀬がナインに叫ぶ。

このプレーには、観客席で見ていたライバルチームも拍手を送った。


三谷中学監督の近藤は、またもや驚嘆していた。

『なんて魅せるプレーだ。ダッシュでミスしてダッシュでファインプレー、、こうゆう選手がいるチームは強い…』


和田はこれで立ち直るだろう。

七瀬に限らず、他のチームメイトもそう思った。


しかし、和田は次の6番にファアボールを与え、迎えた7番バッターにホームランを打たれた。

8番バッターはキャッチャーフライで抑えて、スリーアウトチェンジ。初回いきなりの5失点である。


ベンチに引き上げながら、七瀬は思った。

『おいおい、、内容は違うけど初回5失点は前と同じじゃねえか、、冗談じゃない!!この俺がいてこんな所で負けてたまるか!』


1番センター加藤。

相手ピッチャー中垣の調子を崩してほしい所だ。

西中の練習試合で負けてから、バッティング練習に力を入れてきた。中垣あたりのレベルなんて打てる!


しかし、、加藤はキャッチャーフライ。

2番キャッチャー大谷。

センター前ポテンヒット!

3番ピッチャー和田。

サードフライ。


中垣の特徴はストレートの重さだ。球速はそこまで速くはない。しかし3人が3人ともフライを打ち上げた。思ったより伸びがある。七瀬は冷静に分析していた。


4番バッター七瀬。

他のチームメイトは、七瀬が打ってくれる事を祈っていた。


中垣は七瀬の事をライバル視していた。

新チーム結成の2年の夏、初の練習試合は東名中学だった。

そこで、七瀬にはサイクルヒットを打たれていた。

極め付けは最終打席。ホームランを打たれたらサイクルヒットの場面で、レフトに場外ホームランを打たれていた。

そこから秋の新人戦、春の市大会決勝、全てにホームランを打たれていた。


七瀬はバッターボックスに入る前に、前の世界での中垣の対戦を思い出していた。

『、、、カモ、、だな。。』

七瀬は最早ホームランは当たり前と思っていたが、ここで出してやろうかと思っていた。


そう、七瀬がプロ野球で恐れられた打法。

『ツイスター打法』である!

この構えをされたら、ほとんどホームランか三振。

しかし、そのホームランの確率は上がっていきその比率は8対2。ホームラン8、三振は2であった!


七瀬は右バッターボックスに入ると、ボックスの一番後ろの白線の手前で右足を置く。そして左足はほとんど広げず、左足だけ膝をくの字に曲げ爪先立ちをした。そして、バットを持った両腕はグイっと後ろで構える。まるで弓矢を目一杯弾いた感じだ。

プロの世界では、いわゆる『割れ』と呼ぶ。ピッチャーが投げる直前にバッターが動作に入る、その時の後ろにバットを弾く行為が『割れ』だ。

その割れを最初から構える。しかし、、足は奇妙だ。

この奇妙な構え方に、チームメイトはおろか見学をしている他のチームも不思議がった。


それは、中垣も同じだった。

『なんだ、、あの構え、、春ではしてなかったが、、』

しかし、中垣にとってはリベンジである!

臆する事なく大きく振りかぶった!


第1球!

中垣が投球動作に入った時に、七瀬も動き出す!

左足は振り子のように、しかし1本足程足は上げず、右側に降る。その時に腰も右側に回す。殆どトルネードだ!

身体全体を、右側に捻らせボールを迎え撃つ!

その時の重心は、右足1本、取り分け右足の親指に集中していた!

中垣は思いっきりストレートを投げ込んだ!

左足をガッ!と踏み込み、しかしボールをギリギリまで呼び込む!

そして、ボールがホームベース真上に来た瞬間!

ぶおーーん!!!

一瞬、、ほんの一瞬まさに電光石火!そんな例えがハマるほど鋭いスイングはボールを捉え、一直線にレフトフェンスを越えた!

ホームラン!!


中垣も、チームメイトも、ライバルチームも黙ってしまう程の鋭いホームラン!


七瀬は悠々とダイヤモンドを走る。

『わざわざ、ツイスターを出さなくても打てるか、、まあ、久しぶりだしな。』

この後、市大会1回戦で見せた『ツイスター打法』は、噂になって方々へ駆け巡る事になる。


後続は打ち取られ、東名中学の初回の攻撃は2点を取り返して終わった。


2対5で、初回の攻防は終えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ