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4話 怪物ピッチャー 黒川 一輝。。

4話 怪物ピッチャー 黒川 一輝。。


西中との練習試合。結局黒川は3イニングを投げてベンチに下がってしまった。

3イニング、被本塁打1 奪三振9


七瀬以外のバッターには、全て三振で打ち取った。

黒川はベンチに戻ると一杯の水を飲み、ベンチ代わりの椅子に腰かけた。


『七瀬、、全部アウトコースのストレートだと打ちやがるか。』

そして、、

『やっぱ、天才は天才なんだな。中学生でも、、プロで極めた俺のストレートを打ちやがった。』

黒川はそう心で呟いた。


七瀬がサヨナラホームランを打ちエンジェルズが優勝した日。黒川は30勝した試合の後、

ゲームセット後ベンチに戻りタオルを頭から被った黒川は、七瀬と同じくそのまま意識を失った。


そして、七瀬と同じく母校の中学校に迷いこんでしまっていた。

そう、、黒川も記憶と実力そのままに中学生に転生。

しかし黒川は意外と冷静だった。

こうゆう時に人は性格が出る。

『まあ、いつか戻れるだろ。しかもこれは誰かの夢の中かもしれないしな、、』

そう思いとにかく今出来る事をやろうと思った。

いかにも冷静な黒川らしい考えだった。

そんな時、七瀬のいる東明中学校と練習試合があるという、、


『中学生の七瀬、、まあ抑えて当然だが勝負してやるか、。』

そう思い、この試合に臨んでいた。

ホームランを打たれた後、黒川は、

『さすが、七瀬、、ストレートだけでは打たれるか、』

そう思い何気に顔がにやけていた。

が、、次の対戦では中学時代の黒川では投げていない球種を投げてでも、抑えてやろうかと思っていた。


当然、七瀬が転生している事を知らない。


黒川 一輝。天才七瀬のライバルであり続けた男。

プロ野球チーム 東京タイタンズに、高卒でドラフト1位で指名された。

何とその時は12球団中、10球団が指名するという歴代最多指名数だった。

七瀬は、高卒でドラフト2位でエンジェルズに入団する。

高校時代では、明らかに黒川の方がプロ側の評価は高かった。

理由、、

黒川は高校卒業時、192cm、、対する七瀬は168cm、、

七瀬のこの体格ではプロ野球では通用しない、、と思われていたからだ。

もう一つ理由があった。

七瀬は名門『帝都大岐阜』に進み、黒川は県立の強豪『大崎商業』に進んだ。

甲子園に出場するのは誰でも5季、5回のチャンスがある。

その5回のチャンス中、何と『帝都大岐阜』が、5季連続出場を果たす。当然、七瀬の覚醒もあるのだが、他にも西中4番の増田を始め、有能な選手が集まったのだ。

甲子園出場、春夏合わせて30回の出場を誇る『名門帝岐』でも、歴代最高チームといわれた。

『大崎商業』に進んだ黒川は、一度も『帝岐』に七瀬に勝つ事が出来ず、甲子園には出場していない。

その経歴があって、プロ側は指名が少ないだろうとみていたのだ。

この時代岐阜の高校野球は、七瀬、黒川を始め、大いに盛り上がった時代だった。


黒川は、中学時代は140キロ台のストレートとスライダーしか投げなかった。それだけで充分だった。

高校に入りカーブとチェンジアップを覚え、ストレートも160キロを誇り、ほとんど無双状態だった。対帝岐戦以外は、、

そして、プロに入り球速も最速168キロ、平均160キロまで伸びた。フォークも覚え、二桁勝利を勝つまでにはなっていた。

しかし、球速だけでは抑えられないのがプロだ。

黒川が怪物といわれるには訳がある。

プロに入って覚えた魔球、、その魔球をいつしか人はこう呼ぶようになっていた。

『モンスターボール』


天才七瀬は対黒川に対し、確かに4割の打率を誇る。

しかし、三振は実に50個を記録。

つまり、100打席のうち、ホームラン、ヒット合わせて40本。残りのアウト60個のうち実に50個の三振を奪っていた。

これは、七瀬からしたら完全なる敗北である。

しかし黒川も打率4割を打たれた事で、敗北感を感じていた。


〜この試合、、

結局西中が、16点を取り5回コールドで勝った。

七瀬の2打席目は、ファアボールだった。


試合後、東明中学ナインは学校のグラウンドに戻っていた。

チームメイトは、元気なく無言だった。

副キャプテンの丹羽がみんなに声をかける。

「ここで負けて良かったんじゃないか、俺たちより上がいるって分かっただけでいいじゃないか。」


七瀬は至って冷静だった。この結末を知っていたからだ。

丹羽から話を促された七瀬は、みんなにこう言った。


「野球は打てなきゃ勝てない。素振りとバッティング練習を増やせばいいだけ。幸い、西中とは県大会に進まなきゃ対戦しない。打ちまくって、市の大会と地区大会を勝ちまくって、県大会を目指せばいい。」


こうゆう時は、明確に目標を設定する事が大事だ。

大きな目標なんていらない。どうせ叶わないんだから。

それなら、より現実的な目標を立てる事が大事だ。

七瀬はそうやって一歩一歩レベルアップをしていき、天才バッターになったのだ。


七瀬の冷静な問いかけに、チームメイトは元気になった。

「そうだな!打ちまくってやろうぜ!」

早速、フリーバッティングを開始する事になった。


〜一方、、西中。。


試合後、練習に励む西中の野球部。そんな中、外野の端っこで黒川と4番の増田が会話をしていた。

増田が黒川に話す。

「なあ、黒川。なんか急に球が速くなったな。先週よりかなり速くなった気がするけど、」

「ん?ああ、、筋力トレーニングが実を結んだんだろうな、」

ここで、増田が提案する。

「じゃあさ、、俺と一回勝負してみないか?」


増田の提案に黒川は快く引き受けた。

「そうだな、なんかモノ足りないしな、、いいやろ。」

そう決まった増田は早速立ち上がり、チームメイトに声を掛けた。

「おーい!俺と黒川が勝負するから、あけてくれるかー?」

声を掛けられたチームメイトは、お、、面白そうだ!といい、グランドをあけてくれた。

黒川も立ち上がり、早速キャッチャーの猪瀬とキャッチボールを始めた。


西中4番の増田。

間違いなく、県内最強のバッターだ。

前の世界の七瀬でも、中学時代は増田の方が上だ。


その増田は中学卒業後は七瀬と同じ高校、名門『帝都大岐阜』に入学し、七瀬と4番争いを繰り広げる事になるのだが、、

それは、前の世界の話である。


黒川がマウンドに上がった。

右打席に増田を迎えると、顔色が変わった。


『増田、、前の世界では俺とお前、、エースと4番として全国ベスト4までいったよな、、』

そう黒川は呟き、第1球を投げるべく大きく振りかぶった。


初球!

唸りを上げるボール、、しかし大きく曲がる!

スライダー!!

増田は、鋭い振りを見せるも大きく空振り!

ボールは、右打席の増田の膝下に食い込んできた。


「146キロ!」

スピードガンを持っているチームメイトが叫ぶ!

西中は軟式野球にしては珍しく、スピードガンを持っていた。

昔から野球には熱心な学校だったからだ。


『146!?』

増田は驚いた。

『こんな速い球、、スライダーじゃなかったのか??』


2球目!

インローにストレート!

クロスファイヤーだ!

ズドーーン!!

キャッチャーミットが壊れるぐらいな、恐ろしい音を立てる!

増田は、振る事さえもできない!


「152キロ!」

スピードガンを持っているチームメイトがまたもや叫ぶ!

「おいおい、、最高記録じゃないのか?」

チームメイトがどよめく、、


そして、3球目!!

増田は、黒川がボールを離した瞬間に振りにいった!

そうでもしないと、当たる気がしなかったからだ!

タイミングはドンピシャ!

増田は捉えた!と思った瞬間、、

ブーーン!!

『何!???』

増田の鋭い空振り音が響きわたる!


空振り!

ボールはキャッチャーミットを弾き、バックネットへ!


『なんだ??』

増田は訳が分からなかった、、

「球速は!?」

増田は、スピードガンを持っているチームメイトに声をかけた。

「測定、、不能、、」


『ジャストミート、、したはず、、』

キャッチャーの猪瀬にも聞いてみる。

「おい、どんな球だった??」

猪瀬は、全く見えなかった、、と答えた。


投げた黒川は、平然と立っていた。

増田も猪瀬も、何を投げた!?

と黒川に問いただしたが、ストレートと答えた。


この時投げたボールが、プロに入って覚えた球種、

『モンスターボール』だった。


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