21話 攻撃のプレッシャー。。
21話 攻撃のプレッシャー。。
決勝一番乗りは、育英東中学となった。
この試合を見ていた七瀬は、
『大森中学の守備はさすがだった、、が、、結局、打てないと勝てないって事だな、、』
と思った。
野球は守備と攻撃では、全く違う。
何しろ使用する道具までも違う。
バレーボール、サッカー、バスケ、テニス、ラグビー等他のボール競技は攻守目まぐるしく変わる。
しかし、野球は攻撃と守備が決まっている。
今から攻撃、今から守備、、といった感じに。
それに加えて、ピッチャーという個人競技的なポジションもある。
野球の監督は、どの項目に重点を置くか、、
監督の資質が問われる球技だ。
東名中学は、守備は2年生の時に練習をして、3年生になると打撃練習がメインとなる。
特に、七瀬達の世代は、『打たなきゃ勝てない。』と特に打撃練習に時間を費やした。
準決勝第2試合。
東名中学対赤川中学。
赤川中学は、東名中学が1回戦で戦った、明泉中学と同じ市だった。
市大会優勝は明泉中学。決勝で負けていた、、
が、そのスコアは11対12。
乱打戦の上、明泉中学に負けていた。
中谷から11点を取っている事に驚きもあったが、12点も取られている。なんと粗い野球、、と東名中学ナインは誰しもが思った。
そして、地区大会1回戦。。
こちらも9対8だった。
完全に打撃のチームという事が分かる。
しかし、七瀬は違う事が気になっていた。
『どちらも1点差、、得点からして派手だからよく打つチームというのは分かる。が、、1点差を演じるという事は、それなりに野球ができているという事だな。』
〜野球ができている、、
この言葉の意味は、プロ野球を経験している七瀬ならではの発想だった。
プロ野球では、1点差で負ける試合がよくある。その1点差で負ける試合が多いほど、監督の力が足りないだけで、そもそも弱いチームではない。
が、、それは試合が多いから分かる事で、負けたら終わりの学生野球では、1点差だろうがなんだろうが負けは負けである。
お互いのチームがグラウンドに集まり、準備を始める。
すると、観客席に第1試合を戦った、育英東中学のナインが姿を現した。
次に決勝で当たる相手を見ておこうという事だろう。
赤川中学の試合前ノックが始まった。
東名中学ナインは、そのノックの様子を見ていた。
山之内が話す。
「打撃のチームだと思っていたけど、案外守備もやるなぁ。」
和田が答える。
「まあ、地区大会の準決勝だからな。それなりにはやるやろな。」
七瀬も赤川中学のノックを見ていた。
『ん?何人か見た顔がいるな、、』
しかし、特に覚え出せずにいた。
赤川中学の先行で試合は始まった。
ピッチャー和田は1番バッターに、いきなりレフト前ヒットを打たれる。
2番、ここは送りバントもありうる場面だが、赤川中学はヒッティングに出る!
2番バッターもいい当たり!
センター前ヒット!
打撃に自信があるのだろう。いきなりの2連打!
3番も送りバントではなく打ちにきた!
ここはライトフライでワンアウト。
『いいねー、イケイケじゃないかよ。』
七瀬は相手の攻撃スタイルに、嬉しく思った。
4番、、ここで右中間を破る2ベース!
いきなりの2点先取だ!
ランナー2塁だが、次の5番、6番もバントはなし。
和田はなんとか後続を打ち取り、この回を終える。
0対2。
ベンチに帰ってくる、和田と大谷のバッテリー。
「ほんと、振り回してくるな。」
「変化球ももっと混ぜるか、、」
と、話し合っていた。
1回の裏、東名中学の攻撃。
ピッチャー宮本。
特に目立った所はないが、コントロールは良さそうだ。
1番加藤がヒット。
東名中学は送りバントで、2塁へ送る。
ワンアウト2塁。
3番和田が、内野安打で出塁。
ワンアウト1、3塁で、4番七瀬だ!
カキーン!
七瀬レフトへライナーで飛び込む3ラン!
いきなりの逆転だ!
これで、七瀬は1回戦から4打席連続のホームランになった!
赤川中学の監督 染谷は、「こりゃモノが違うわ、、」と呟いた。
が、呟いただけで、焦る事はしない。
その後、チャンスは作るが点は入らず初回の攻防は終わった。
1回を終わって、3対2。
2回表、、赤川の攻撃、、
相変わらず、振り回してくる。バントはしない。
和田も連打、連打で3点を取られてしまう。
和田、大谷のバッテリーもあの手この手で抑えようとするが、連打を許してしまう。
和田がベンチに戻ると、悔しがった。
「くそ、、何投げても振り回してくる。。」
これが、攻撃のプレッシャーだ。
結局、守備が良くても相手にプレッシャーはかけられない。
攻撃が強いチームは、調子にのると手がつけられない。
点数は3対5。東名は逆転された。
2回裏、、東名中学の攻撃、、
8番からの攻撃だが、こちらも連打で応戦する。
七瀬の前の和田で攻撃は終わってしまったが、
2点を返す。同点だ!
5対5になった!
序盤から点の取り合いだが、赤川中学は特に焦った様子はない。
慣れているのが東名中学ナインは分かった。七瀬以外はそれがなんとも不気味に思えた。
3回表、、
ここは和田がランナーを出すも無得点に抑えた。
守っていた東名中学ナインは、やっとか、、と安堵した。
七瀬は、『ここもバントなしか、、まあそんなチームは全然怖くないんだけどな、、』
と、この回もランナーを出したのにバントをしてこない相手に、恐怖感も何も感じなかった。
3回裏、、
カキーン!!
七瀬、またまたレフトへホームラン!
なんと5打席連続!!!
これには、乱打戦に慣れているはずの赤川中ナインも、監督も驚きで呆然としていた。
観客席の育英東中の藤井は、七瀬の連続ホームランを見て、どう攻めようか、シュミレーションをしてみたが、どうにも答えは出なかった。
カキーーン!
!
5番山之内もホームランだ!
山之内は2試合連続!
この回、東名中学は2点を追加した。
7対5となった。
序盤3回を終わっての乱打戦。点の取り合い。
ここは、0点に抑えて、相手の戦意をなくすのが鉄則だ。
しかし、和田はこの回1点取られてしまう。
中々、ペースが握れない展開だ。
4回裏、、
東名中学の攻撃は、上位に回るが、無得点。
8番、9番、1番と三者凡退に抑えられた。
このイニング、東名中学がやりたい事を逆にやられてしまう。
点数は7対6。1点差で東名中学が勝っているとはいえ、流れは赤川中学にきていた。
5回表、、赤川中学の攻撃は5番バッターからだ。
5番バッターは、この回バットを短く持っている。
七瀬はその姿を見て、『うーん、、どこかで見た事あるような、、』
和田も調子を取り戻したのか、ストレートは走っている。
しかし、バッターは粘る。そして、際どい球を見切られて、ファアボールでランナーに出る。
6番バッター。東名中学守備陣は驚いた。
バントの構えをしている。
七瀬はサードの守備位置から思った。
『ここで、送りか、、まあ1点負けてるからな、、しかし、、』
和田に声をかける。
「和田!簡単にいくなよ!」
和田は七瀬を見て頷く。
しかし、和田は『簡単にいくなよ』の七瀬の言葉の意図を、半分しか分かっていなかった。




