薄緑の小鳥
美智は、知らなかったのです。女の子は、ぽろぽろぽろぽろなきながら、薄緑の小鳥をそっと手のひらに抱えました。それは、とっても軽くって、まるで羽のように重さなんて感じないのに、とくとくとくとく、命の音と温かみがそこにありました。
鳥はくるしそうに、めをとじて、くちばしを何度か震わせていました。
とくとくとくとく 命の音は聞こえているのに、温かみはきちんとあるのに
鳥は、もうすぐいなくなるって女の子は予感がして、どうにかしたくて、ちいさな鳥の口に何度も何度も水を含ませました。身体を温めて、一生懸命看病しました。
美智は、知らなかったのです。女の子は、ぽろぽろぽろぽろなきながら、薄緑の小鳥をそっと手のひらに抱えました。それは、とっても軽くって、まるで羽のように重さなんて感じないのに、とくとくとくとく、命の音と温かみがそこにありました。
口を開けて水を必死に飲みました。いっぱいいっぱい飲みました。
目を開けて、ふっと身体を起こすと、ふわりと身体が浮きました。
美智は知らなかったのです。今まで看病してくれた女の子が、もう起き上がらないことを。
薄緑の小鳥は女の子からつけてもらえた名前が美智だということをきちんと知っていました。
何度も何度も女の子の周りを薄緑の小鳥の美智はぐるぐるぐるぐるしました。鼻先に湿ったくちばしを添えてみたりもしました。小さな足先で飛びあがって女の子の肩に乗って、頬にすり寄ったりもしました。
美智はなんだかとてもわからなくなって、首を不思議そうに傾けると、ちいさくピィと鳴きました。
それでも、女の子が起き上がらないことを、薄緑の小鳥の美智は知らなかったのです。わからなくて、薄緑の小鳥の美智は、終いには大きく大きく鳴きました。
よくわからないのに、とてもとても鳴かずにはいられなくて、
開け放たれた窓からは、やわらかな日差しと澄んだ風が入り込んできていました。
白いレースのカーテンがさらっと揺れていました。




