道中〜ネイ団長との話 3〜
「ん?でもそんな体質だと大勢の団員と一緒に居るのに支障とか無いの?」
マモランドで取り囲まれただけでヘロヘロになったのに、始終団員に囲まれて行動を共にしてると気が休まらないのでは?
「あははは、何で近衛団長なんてやってると思ってんの?
小さな頃から囲まれる度に返り討ちにしてたら、最強になっちまったからだよ。
今では国王の為の近衛なのか、ネイの親衛隊なのかわかんないよねー」
え?そんなに強いの?
団員さんって結構ムキムキマッチョが多いよね?
血筋で団長なのかと思ったんだけど……
って言うのが顔に出てたのか、
「こう見えてネイって、国軍も合わせて最強だよ」
「こう見えては余計です。
触って見ますか?」
差し出された二の腕部分を触ってみる。
「うっわ、カッチカチ」
あー、ブルース⚫️ー体型ってやつ?スリムな筋肉に覆われてるってやつなのかな。
確か西洋剣みたいな武器だと、叩き斬るから腕力が必要だけど、日本刀の場合切り裂くから、ムッキムキな筋肉は要らないとか何とか、聞いたことがあるような無いような…。
あれ?でも確か日本刀って……、
「有事にはその刀を使われるんですよね?
刀って斬った時に着く血や脂ですぐ斬れなくなると聞いた覚えが……」
だから昔、戦の時刀は腰にさしてても、実際に使う武器は槍や弓だったとか、何かで読んだ記憶が薄っすらと有るんだけど。
「本来ならそうらしいですね。
しかしこの刀は、始祖様から受け継ぐ刀でして、どれだけ斬っても斬れ味は落ちず、岩を斬っても刃こぼれしない特別な物なのです。
一族の中で一番強い者だけが使う事の許される一刀なのですよ」
刃こぼれも無しとか、どこの斬⚫️剣なんですか。
何でもアリですか。
なんて突っ込みはしませんよ。
ここはそう言う世界だと、色々目をつぶらなければいけないって事は、学びましたから。
「ネイ様の剣術は、まるで踊っているようで美しいですよ。
特に雷の妖術を纏わせた攻撃は、斬られる相手さえも目を奪われますからね」
うっとりとスイが言うけど、雷⚫️剣ですか、まあ確かに一度見てみたい。
やっぱり日本人としては、ロングソードや戦斧とかより、日本刀に惹かれるよな。
もし自分で武器を持つなら、やっぱり日本刀持ちたいもん。
しかしやっぱり、この体質が変わらないのなら、力をつけた方が良いのか?
今日からでも筋トレ始めた方が良いのかもしれないな。
休憩で馬車を降りるたび、団員さんに話を聞いてみたけれど、魅了の力なのか、心がそわそわする感じはあるそうだけど、やはりその技量に惹かれるそうだ。
どの団員さんも、訓練や魔獣討伐時のネイさんの剣さばきに、惹かれずにはいられないと言う。
何だかますます見てみたいな。
前回近衛団を見学した時は、団員さんの稽古しか見ていないから、一度団長さんの稽古を見学させてもらおう。
「そう言えばさ、スイにはネイさんの事、随分気に入ってるみたいだよね。
魅了って効いてないんだよね?」
スイがいつもと違う気がしてニトに聞いてみた。
「魅了は効かないよ。
ハーフと言えどもドラゴンの血統なんだし。
でもスイがネイを気に入ってるのは当たり。
だってスイの性格考えてみな?
真面目で、言葉遣いが丁寧で、仕事に真面目で、こうと決めたら血筋に関係無く真面目に取り組んで、マジで真面目なクソ真面目!」
……何回真面目って言えば気がすむんだ?
「ネイもそんなところが有るから、なんて言うんだっけ?似た者夫婦?」
「夫婦ちゃうし、似た者同士でいいし」
「まぁ俺に言われせば二人ともマゾだね、本当マゾめ」
…………もしかしなくても、真面目とマゾめを掛けたのか?
寒っ!
「まぁ気が合うってのは分かるかな。
でもニトもスイといいコンビだと思うよ」
ボケとツッコミで。
「いやいやいや、俺マゾじゃないから。
ネイにやられて喜んでる近衛の奴らと違って、スイにボコられて喜べないから」
「ん?あの二人マゾじゃないの?」
しれっと突っ込みを入れる。
「うわっ、スイと一緒にいる時間が長いから、ウチが毒されてきてる」
「とりあえず今の会話はスイとネイと団員さんに、漏らさず伝えとくね」
「ウチ〜〜、年上をからかうのは感心しないぞ〜」
「あ、スイー」
ニトの後ろに視線を向けて声を上げると、慌てた彼は僕を担ぎ上げ走り出した。
「冗談だって、冗談」
担ぎ上げられたまま、肩をポンポンと叩くと、その場に崩れ落ちた。
「お〜ま〜え〜な〜〜〜」
ニトイヂリは面白いかも。
*****
ネイに話を聞きながら(ネイさんと呼ぶと、姉さんに聞こえる事があるので、敬称を省くように言われたので、呼び捨てにするようになった)、ニトを弄りながら馬車は進み、国境の町【オワリ】に到着した。
……うん、想像してたけど、やっぱり時代劇のセットだ。
木造日本家屋が並ぶ町の中央に、【日本の城】が建っている。
流石に髷は結って無いけど、着ている物は浴衣や甚平の人もチラホラ。
そんな中に目立つ洋風の建物の中には、国軍の制服を着た兵士さんが居るのが見える。
でも、和風の中に洋風が…と言うことよりも違和感が有るのは、やっぱりミミや尻尾や角だよな。
百鬼夜行って感じだ。
洋風ファンタジーの世界で、ここだけ和風ファンタジー。
さぁ、ラスボス感覚の織田家の前にトモ家を訪ねる事にしよう。




