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英雄召喚されたのに色々問題発生です  作者: 七地潮
第一章
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道中〜ネイ団長との話 2〜

「同じ町にトモ家?の方もいらっしゃるのですよね?」

確か先にそちらへ行くと言う事だったよな。

「そうですね、トモ家の方々にはずっとお世話になっています。

以前の世界で主従関係だったそうなのですが、別世界の事なのですから、忘れても良いと思うのですが。

おかげで私達は好きな事を出来るのですかね」

好きな事?それってスイの家みたいな感じに、自由奔放なのか?

なんて思ったのが顔に出たのか、スイが首を振る。

「元々軍務大臣は他の家の方がやっていたのですが、ラト様が実力で今の地位に就いたのです。

うちとは違いますよ」

「揉めたりはしなかったのですか?」

大臣職なんて上昇志向が有れば、絶対に手放したく無いだろうに。

「当時の軍務大臣の方は、家系的には古くから続く名家でしたけれど、後継の方が亡くなって、他家へ嫁がれて居た長女の方が家を継いだのですが、そのご主人様は、どちらかと言うと文系の方でして、とても軍をまとめる事はできなかったのです」

「そこで名乗りを上げたのが、ラト様なのですよ」

「父は元々おさを継がず、地元で自衛団を作り、兵を束ねていました。

町や周辺の状況を報告するのに城へ上がった時に、軍の状態を見て「このままでは有事に使い物にならない、自分が叩き直してやる」と王に直訴しまして」

「向いていない仕事に、体調を崩していた大臣が了承したと言う話です。

一族の方々も、このまま無理に職に就いていて、不祥事を犯す事になるより、職を離れて穏やかに暮らしたいと言われる温厚な方が多くて、すんなりと話しは纏まりました」

「じゃあ元々はオダ家は大臣職には就いていなかったんだ」

「そうですね、城から離れたオワリの町を治めるのと、国境を守る事がオダ家の仕事でした」

ニッコリ笑うネイさんだけど、ちょっと違和感が……。

「あの…」

ネイさんに声をかけると、どうされましたか?とこちらを見るけれど、やっぱりそうだ。

「聞いていいことかわからないから、答えたくなければ答えなくていいです。

……ネイさんスイ以外の人と視線合わせないよね?」

ズバリと言うと、ハッとしたネイさんと一瞬視線が合ったけど、すぐ逸らされた。

「あー…それな……。ってかよく気づいたな。

まぁ小さな事は気にするな」

聞いちゃあいけなかったかな、あははと笑いながらニトがそう言うけれど、スイの隣、斜め向かいに座っているネイさんは「いいのですよ」とニトに頷く。

「話をしているのに視線を合わせない…目を見て話さない事は失礼だと思いますが、私の血筋の問題で、視線を合わせる事の方が失礼にあたるのですよ」

血筋?もしかして母親がバンパイヤだから何かあるのかな?

「普通は魔物のハーフには魔法は使えず、その特徴も、身体的なモノ以外は受け継がれません。

しかし私は母親のチャームの能力が受け継がれてしまいました。

それも中途半端に……。

普通ですと、バンパイヤは視線を合わせると、相手を自由に操れます。

その相手も選ぶ事ができますが、私は視線が合った相手を無差別に……魅了してしまうのです」

「魅了?操るとは違うんですか?」

「そうですね、操るとは好きなように行動を指示する事ができます。

でも私の魅了は……」

説明しづらいのか、口籠るネイさんの後をスイが引き継ぐ。

「ウチ様が動物や魔物の方に囲まれるのと同じ感じですよ」

あ〜、フェロモン垂れ流し状態……すごくよくわかる。

しかしそれは辛い。

「あれ?でもスイとは視線合わせるよね?」

スイだから大丈夫なのか?

何だかスイなら大丈夫と言われても、納得出来るけど。

「自分より上位種には効きませんので、スイ様となら視線を合わせられます」

「ドラゴンハーフだもんねぇ」

「後は自分と同等の種の方ですと、影響があったりなかったりですので、ニト様の場合、体調によれば……」

「隙があるから影響を受けるのですよ」

「スイさんドイヒー」

「……こんな中途半端な力無ければ良いのに…………」

俯き小さくこぼすネイさん。

「親の血はどう影響するのかわかりませんからね……。

ネイ様の気持ちよくわかります…」

あー、スイもコンプレックス持ってるもんね。

違う種族の血が混じると言うのは色々あるんだなぁ。

「でもさ、ウチなら大丈夫なんじゃない?

何せほぼ不死身なほど祝福が有るんだし」

重くなりかけた空気を全く無視してニトが言う。

何その無責任発言。

「……ありえるかもしれませんね」

あれ?いつもならピシーッて言うスイも同意見?

「今なら狭い場所だし、俺もスイも居るから、試すだけ試してみれば?

視線を合わせられる人が増えるのって良くない?」

おいおいおい、僕の意見は?

「……そうですね、試してみてもよろしいですか?」

視線をずらせたまま聞いてくるけど、これって断れなくないか?

「構いませんよ」

としか言えないでしょ、この流れ。

ネイさんの目を見ていると、失礼しますと一言告げて、ゆるりと視線を合わせる。

「………………」

「…………………………」

「…………………………………………」

「……………」

「なんとか言えよ!」

あ、ニト、突っ込みありがとう。

「なんともありませんか?」

「こう…好きだー!とか、触らせろー!とか思うか?」

「いや、なんとも」

「抱きつきたいとか、好きにしてとか、無いですか?」

好きに……とか老若男女問わず言われるの?

僕みたいに幼児体形ならまだしも、二十代半ばに見える成人男性に?

女性相手ならまだしも、それ以外だと絵的に無いわ。

「無い無い」

「ほら、大丈夫だったろ?」

なぜかニトがドヤ顔をする。

「良かったですね、これで気を使わずに話せる相手が増えましたよ」

「それにネイの気持ちはウチにはよくわかるだろうしな」

あー、そうね。同じ悩みだよね。

「これから仲良くしてくださいね」

僕が言うと、しっかり視線を合わせて頷きながら微笑んだネイは……うん、もしかしなくても、魅了の力が無くても迫られるのでは無いのか?と思わせる魅力的な微笑みだった。

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