モフモフ VS ツルスベ
何とか気を持ち直し、謁見していた部屋に戻る。
国と言っても、ラグノルみたいに城が有るわけではなく、大きな屋敷という感じの建物だ。
謁見の間と言うのも無く(謁見する人が訪ねて来ることが無いと)普通に生活している二階建ての屋敷だ。
申し訳程度に尖った屋根が城っぽいと言えば城っぽい。
廊下の窓から見える町の家々も、イメージ的に【童話の挿絵】と言う雰囲気の、メルヘンチックな佇まいだ。
その中を行き交うケモミミの魔物の人々が、一層ファンタジーさを増している。
趣味丸だ……本人の理想を実現した国なんだろうな。
「凄いだろ、まさにシャングリラ」
左腕にロリさんを座らせた牧さんが、いつのまにか隣にいた。
「バラバラに隠れ棲んでたケモ達の楽園だ。
これからもケモによるケモの為の楽園を守って行くのが自分の使命だ」
うん、まあ魔物の人々からすれば、迫害される心配も無く、のびのびと暮らせる良い国なんだろうけど、何だか素直に頷けない。
「ところでいくつか聞きたい。
先ずはそのモフは?」
開いた手で首元を指差す。
「僕の家族の熊澤さんです」
「タタンジュだな。
人に懐くとは珍しい」
ロリさんが驚きの表情で言う。
「良ければ触らせてもらえないかな」
牧さんに言われて、熊澤さんの背中をポンポンと叩く。
ちょっと離れての合図だ。
するりと首から外れた熊澤さんは僕の肩に乗る。
「熊澤さん、こちらのユウさんがちょっと触らせてって言うけど、良いかな?」
僕の言葉を理解した熊澤さんは頭をちょっと下げて、撫でやすい体制をとる。
「失礼して………」
身を屈めそっと手を伸ばし、熊澤さんの頭を撫でた牧さんの口から「ふぉぉぉぉ」と、感嘆のため息が漏れる。
「どうですか、気持ちいいでしょう」
きっと僕は今ドヤ顔していると思う。
「分かりみが深いわ」
意味はわからないけど、きっと同意してくれているのだろう、撫でる手が止まらない。
「でも、モフでは無いな」
身体を起こしながらの一言に、思わず目が座ってしまう。
「これはこれでアリだけど、モフとは違うな」
「まあ熊澤さんはモフモフと言うより、ツルスベですが何か?」
「確かにコレはツルスベだな。
それはそれで尊いけど、やっぱり尊みが深いのはモフだな。
モフは神」
「モフモフな動物は沢山居るけど、こんなに素晴らしいツルスベは他に無し!
熊澤さんが一番です!」
「マ?それマ?
大草原だわ〜、一番最強なのはうちの奥さんのこのモフに決まってる」
「確かにモフモフだけど、所詮狐でしょ、想像はつくし。
熊澤さんのモフに見える見た目でツルスベなのが一番です!」
「は〜〜?その辺の狐と一緒にするとか、ナイワ〜〜。
この神モフに勝てるものは無し!」
「いやいや、熊澤さんが一番!」
「豊なまふぅ〜んな奥さんの尻尾が上だね」
「熊澤さん!」
「奥さんに勝てるモノ無し!」
お互い一歩も引かずに居ると、ポンっと軽い破裂音がした。
音のした方を見てみると、見知らぬ女性が腕を組みこちらを見て居る。
誰?
「下らない事を言い争うのはお止めなさい」
あー、釣られてついつい熱くなっちゃってたな、反省反省。
冷静さを取り戻そうとして居る僕の隣で、牧さんが膝から崩れ落ちた。
「あああああ……ミミが………尻尾がああああ…………。
ごめんなさい、反省するから元の姿に戻って下さい〜〜!」
もしかして、このミミも尻尾も無い、ボンキュッボンのオリエンタル八頭身美女は……
「ロリた〜〜〜〜ん‼︎」
あ〜、下らない事で一話潰れてしまいました。
いや、でもきっと拘り有る人にとっては大事な事だと思いますよ……たぶん。
明日もよろしくお願いします〜




