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英雄召喚されたのに色々問題発生です  作者: 七地潮
第一章
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スイのコンプレックス

「…母上、どうして止めてくれないのですか」

ため息混じりにスイはユキさんに言う。

秋彦さん達に言っても拉致があかないと思ったのだろう。

「あら、私が言ったくらいで聞く二人だと思うの?」

きっと誰が何と言っても、二人共自分の好きにしかしないと思う。

「それに貴方にも会いたかったからね」

ユキさんは、そっとスイを抱きしめる。

「貴方も義父様もお城に行ったきりでしょ、仕事が好きなのはわかりますけど、たまには逢いに来てくれないと寂しいわ」

「……すみません」

「あら、謝って欲しいわけではないの。

真面目なのは良事なのだけど、もっと顔を見せて欲しいわ。

勿論私だけじゃなくて、他の家族の皆も同じだと思うわ」

「……そうですね、もう少し顔を出すようにします」

「そうしてあげてね。

でも無理をしてはダメよ」

「ありがとうございます」

おお、なんだかスイが可愛いぞ。

昨日今日とスイの珍しい顔を見られて楽しいな……嬉しいと言うべきか?

距離が近くなれた気がする。


「それでね、久しぶりにスイも空を飛びましょう。

貴方がお世話しているウチさんは私が乗せてあげるから」

え?今何と?

「スイって空を飛べるの?」

「…………ええ」

「スイはね、祝福も受けているけど、私の血が強いのか、変体できるのよ」

「ほおおおお、て事はスイってドラゴンになれるの?」

ついつい食いついてしまうのは仕方ないよね?

「……一応は…」

何だ?ドラゴンに変身できるのに、歯切れが悪いなあ。

「あのな、ドラゴンはサイズが大きい方が良いとされているんだけど、スイは身体は変えれてもサイズは変わらないんだよ。

だからあまりドラゴンになりたがらないんだ。

でもさ、スイはドラゴンじゃなくて、ハーフだけど人間なんだから、ドラゴンの世界の強弱は関係ないのに、真面目だからねぇ」

ヤシさんが近づいて来て、小声で教えてくれる。

成る程、大きな方が良いと言う価値観がドラゴンの世界に有ったとしても、スイは人間社会で生きていくんだから関係無いよね。

それでもそこを気にするのがスイか。

第三者からみると、ドラゴンに変身できるって凄い事だと思うけど。

「久しぶりでしょ、一緒に行きましょう」

「ハーフと言っても人間として生きているんだし、勿論今の姿が本来の姿なんだけど、ドラゴンもあいつの一部なのに、頑なにドラゴンになろうとしないんだよ。

一部を抑えつけてるって不自然だろ?

でも俺達が何と言っても聞かないからな。

だからたまにユキさんにお願いしているんだよ」

僕の後ろに立った秋彦さんが小声で言う。

茶化してるようで、スイの事を考えての行動なんだ。

もしかして僕の方が巻き込まれたんじゃないのか?

「……そうですね。

ウチ様に空から国を見て頂くのも良いかもしれません。

母上、ウチ様をよろしくお願いします」

そう言ったスイが、母親の抱擁から身を離し、少し離れた所で目を閉じて大きく息を吸う。

スイの姿が滲んだ様に見えたかと思うと、次の瞬間そこには一匹の黒いドラゴンが居た。

「うぉおおおおおお!凄い!」

体長3メートル程の、黒い鱗が艶やかに輝くドラゴンだ。

「それじゃあ私も本体に戻りますからウチさん、私の背に乗って下さいね。

アナタ、後は任せましたよ」

「あゝ……ボク以外の男がユキさんに乗るなんて」

わざとらしくヤシさんが嘆く。

「でもユキさんのお願いは何でも聞くのが男の包容力!」

一人芝居ですか?

突っ込みませんよ、僕は。

ユキさんも変身した。

ユキさんは髪と同じ水色のドラゴンになった。

大きさはスイより一回り大きいくらいだ。

ん?大きいのがステイタスなのに、小さくない?

「ユキさんの本来の姿は今の十倍くらいかな。

でも君を乗せるのに大きかったら都合悪いから、最小サイズになったんだよ」

秋彦さんが僕の疑問顔を見て教えてくれる。

その秋彦さんに支えてもらってドラゴンユキさんの背へ。

「鬣をしっかり持ってね〜。

安全飛行だと思うけど、気をつけて。

風の抵抗はユキさんの魔法でどうにかしてくれるから」

「詳しいですけど、秋彦さんも乗った事あるんですか?」

秋彦さんはニヤリと笑ってサムズアップする。

「本来のサイズに乗せてもらってるよ」

ユキさんとスイはゆっくり地上を離れ空へと舞い上がる。


空の散歩はサイコーでした。


えー、スイってドラゴンになれるんだ…。

秋彦さんの暴走からスイのカミングアウトになってしまいました。


さて、クリスマスイブから七日間の連続更新、本日までとなります。

お付き合い頂きありがとうございました。

明日からはまた奇数日更新に戻ります。

よろしくお願いします。


と言う事で、また明日お会いしましょう。

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