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英雄召喚されたのに色々問題発生です  作者: 七地潮
第一章
41/150

熊澤さん

「それで、タタンジュは何匹居るのですか?」

スイの問いかけに、ん?と思う。

「一匹じゃないの?」

「ウチ様、タタンジュは毒を持ってますが、成獣でこのサイズです。

毒は強いですけどそんなに量は取れると思いません。

薬を作るなら、ましてそれを販売するとすれば、それなりの量は必要でしょう。

ならこの一匹だけでは無いと思うのですが」

成る程、流石スイさんです。

ただの怖い人では無いですね。

スイの言葉に男は視線を彷徨わせ、身体に似合わぬ小声で言う。

「じゅう……」

「10匹ですか。全てを届け出て下さいね」

男は返事をせずに、更に激しく視線を動かす。

「………きゅう……」

「19匹ですか?」

毒を持つ動物が街中の家で19匹、それはちょっと多いな、と思ってたら、男は後ずさりながら更に続ける。

「……………の2倍………」

2倍?

「……それは38匹と言うんです」

スイのコメカミがピクピクしてるよ……。

でも確かに38匹は多いと思うな。

「……と5匹…………」

ちょい待てーい!それって43匹だよね?

いや、いくらなんでも多過ぎでは無いの?

その数をこの世界でキチンと管理出来るの?

現代日本でも毒を持つ動物の管理は、とても慎重にされてるのに、町中のお屋敷で管理出来るの?

既に熊澤さん逃げ出してたよね?

しかもこのサイズの動物43匹って、飼育スペースも広くないと、動物にストレス与えるだけだよ。

「……………………飼育場所はどこですか?」

深呼吸したスイが声を抑えて問うと、

「大丈夫、ここで飼うわけじゃないから。

次男が転移の術使えるから、東の森の中に敷地を準備してるんだな。

そこで放し飼いする予定なんだな。

ここへは2、3匹ずつ連れて来て毒を抽出する作業するだけで、全部は連れて来ないからな」

焦りながら男が言い募る。

「東の森ですか。

……わかりました。届出は全ての獣を、町へ連れて来る時はその都度連れて来る数を報告して下さい」

男は音がするくらい勢い良く頭を縦に振る。

「それではウチ様、その獣を渡して下さい。

怪我を診た後に森へ移転させましょう」

「はい」

やはりスイには逆らわない方が吉だな。

僕は上着毎熊澤さんを手渡そうとするけど、熊澤さんはタレ眉、細いタレ目でこちらを見上げ、ピヨピヨ鳴く……。

「………………」

「ピヨピヨピヨピヨ」

「………………………………」

「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ」

「………………………………………………」

「ピヨ……ピヨ〜……」

「…あー、ダメだ、この子飼う!」

「ピヨ〜〜!」

「何を言っているのですか!」

「無茶だな」

熊澤さんとスイと男の声が重なる。

「熊澤さん……この子も離れたく無いって思ってるようだし」

「だから毒が有って危ないと言ってるでしょ」

「毒は定期的にここで抽出して貰えはいいでしょう?」

「まぁ一回抽出したら暫くは毒は出ないな」

「貴方は黙っていて下さい!」

男が援護してくれたけど、スイに一蹴されてしまう。

「ちゃんと面倒みるし、人を噛まないように躾けるから」

「魔獣は躾けられません」

「そんな事無いんじゃないの?」

「今まで魔獣を躾けたと聞いた事有りません」

「魔獣だって動物だよ」

「魔獣と動物は違います」

うー、頑固だなぁ。

本当に躾けられないのか?

前例が無いだけだろ?

僕はニヤを呼んだ。

「ニヤ、この子飼いたいんだけど、魔獣って躾けられないの?」

『躾け?出来るの。

魔獣だって考える事も出来るし心もあるの。

だからちゃんと言い聞かせると言うこと聞くのよ』

「スイは躾けられ無いって言うんだけど、大丈夫だよね?」

『うーん、人間って自分に危ないと思ったら排除するの。

人間が敵意を持つから魔獣も敵意を持つの。

人間が優しかったら魔獣も大人しいの。

だからとうちゃんならどんな魔獣でも言う事聞くのよ』

うん、魔獣だけじゃなくて、動物でも人間でも、こちらが敵意を持ってたら同じものを返されるよね。

僕は絶対動物に敵意は持たない。

だって動物は僕を無闇に傷つけないから。

「スイ、妖精女王も大丈夫って言ってるよ。

だから僕はこの子を飼います」

僕がきっぱり言い切ると、スイは何か言おうとしたのを飲み込んで、小さく息を吐く。

「分かりました、王には私から伝えておきます。

但し必ず定期的に毒の抽出をして下さい。

躾けもキチンとして下さいね。

後、他の者にもウチ様のペットだと分かるようにに、首輪か何かを着けて下さい」

渋々だけど許可を貰えた。

「ありがとう、スイ!

よろしくね、熊澤さん。

絶対に人を噛んだり引っ掻いたりしないでね」

「ピヨ!」

返事をする熊澤さん。

「もしかしてさ、こちらの言う事理解してる?」

ニヤに聞いてみたら、

『当たり前なの。

言葉は通じなくても、意思は伝わるから、理解は可能なの。

ほら、他の人と妖精の関係と同じ感じ』

成る程成る程、分かりやすいなあ。

『あとね、思ったの。

毒を抽出しなくても、毒袋取っちゃったら毒大丈夫になるんじゃ無いの?』

ん?そんな事も出来るのか。

確かにそれなら安心だけど、毒もこの子を造っている一部なんだから、人間に害が有るからって身体を切り開いて…って言うのは僕は嫌だな。

だからその方法は内緒な。

『とうちゃん優し〜い』

ニヤは言いながらくるくる回る。

毒の抽出を僕が忘れなければ良いんだから、身体に負担をかける事なんてしないからね。

そう思いながら、僕は熊澤さんをそっと撫でた。

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