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英雄召喚されたのに色々問題発生です  作者: 七地潮
第一章
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迷子の出会い

さて、困ったぞ。

今現在三つ程困っている。


困っている事その一、城下町にて、只今絶賛迷子中。


困っている事その二、迷い込んだ裏道で、怪我をした小動物を発見。


困っている事その三、どうもその小動物が、毒を持っていそうな見た目で手助けを躊躇してしまう。


さて、どうしたもんか。


*****


まずは迷子なんだけど、今日から城下町のフジ家へ行く事になっているのだが、到着してみると取り込んでいて、少し待って欲しいとの事。

なので町に出たついでにと、スイに色々案内してもらっていたところ、囲まれてしまったんだ。

何にって、女性にスイが!

綺麗な娘さんから、可愛い女の子、艶っぽい女性まで、どんどん集まって来て、弾き出された僕は、

「この辺ウロウロしてるね」

と声をかけてその場を離れた。

「お待ち下さい」

と引き止める声は聞こえたけど、護衛の騎士さんもいる事だし、高い建物の無いこの町では、どの場所からも城が見えるから、いざとなったら城へ戻れば良いやと呑気に構えていた。

時刻は昼時、1メートルちょっとの身長ほ僕は、護衛の騎士さん達から見失われてしまっていた。

でもあまり気にせずに城へ向かって歩いていたんだけど、どこで間違えたのか行き止まりの袋小路に入ってしまう。

引き返して戻ったつもりが、人の家の庭に入り込んでいたり、突き当たったら川だったり、そうこうしているうちに城は(僕の身長では)見えなくなり、人に道を聞こうにも、いつの間にか人通りのない裏道に入り込んだようだった。

……まあ、いざとなれば妖精の力を借りれば良いんだけど、何が一番困ったかって……絶対スイに怒られる事だよな。


そしてウロウロしていたら、道の隅で蹲っている毛玉を見つけた。

最初は落し物の縫いぐるみかと思ったんだ。

だって派手なオレンジ色しているから。

でも微妙に動いているように見えて、近づいてみると毛玉が動いた。

立ち上がっただろう(毛が長くて足が見えないけど立ったと思う)その毛玉は毛の長い小型犬……マルチーズっぽい。

でも違う点がいくつか。

目が細く、柄なんだろうけど、眉毛が有る。

その上鳴き声が、

『ピヨピヨピヨ』

ひよこかよ。

さらにその脚はどう見ても爬虫類系の形態だ。

爪も鋭い。

それから毛色も犬ではあり得ない色だ。

細い目で困ったようなハの字眉、その情けな……ゴホン、気の弱そうな……いや、気の良さそうな顔を見て僕の口から出たのは、

「熊澤さん」

職場で園長の下で働いていた五十代の男性職員の顔が脳裏に浮かぶ。

何時も身勝……大らかな園長の尻ぬぐ………フォローと、ワガマ……自由奔放なバイトの間に入って、困った顔をしつつも、怒る事も声を荒げる事もなく、仕事が円滑に行えるように頑張っていた先輩が思い出された。

胃を悪くして何度も入院していたよなぁ、熊澤さん大丈夫かなぁ。

などと思い出しながら、その生き物を見ていて気付いた。

「お前怪我してるのか?」

僕の方を気にしながら、しきりに舐めている後脚に血が滲んでいる。

これは保護した方が良いんだろうけど、僕が近づけない理由が、もしあの脚が表すように、この生き物が爬虫類だとすると、色が問題ある気がするんだよね。

その生き物はとても鮮やかなオレンジ色で、ミミや脚先が黒の派手な色合いなんだ。

確か爬虫類などで派手な色合いって、警告色な場合が多かった気がする。

もしあの鋭い爪に毒なんか有ったら目も当てられない。

しかも相手は手負いの獣なのだ。

小動物とは言えど、身長1メートルちょっとの僕からしたら、体長50センチはありそうなその生き物は、かなり大きく感じる。

さてさて、どうしたもんかな。


暫く考えたけど、やはりこのまま放って置く訳にもいかず、

「いいか、今から抱っこするけど、危害は与えないから大人しくしてくれ。

怪我をしているから、怪我を治してくれる人を探して連れて行ってあげるから。

絶対助けてあげるから大人しくしてくれよ」

穏やかな声を心がけて、話しながらゆっくり近く。

相手はじっと僕の方を見ているが、警戒している様子は無いようだ。

目の前まで行ってもじっとしているので、しゃがんで顔の前に下から手を出す。

するとマルチーズ擬きは鼻先を近づけ、ペロリと指を舐めてきた。

どうやら大丈夫な様だ。

やっぱりこれって僕の体質のおかげだよな、など考えながら、上着を脱ぎ、そっとマルチーズ擬きを包み込み抱き上げた。

腕の中でその子は僕の顎をペロペロ舐める。

懐かれたかな?

よし、スイを探して獣医さんの所へ連れて行ってもらおう。

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