抱っこの詳細?
「妻には前の旦那さんとの間に六男三女が居ます。
淫魔やハーフでは少ない人数なんですよ」
うん、まあ淫魔って字面からして子供多そうだよな。
「家を継ぐのは黒髪の子供と決まっていますけど、仕事を継ぐには資質ややる気によりますからね。
他の子達もいい子でして、皆それぞれやりたい仕事に就いています」
前の旦那さんのお子さんとも良い関係のようだ。
「まあ、いい子と言いましても、皆私より年上なんですが」
言いながらレンは笑う。
どうやらレンが生まれた時には一番下の子でも成人済みだったとか……。
寿命の差が有るからとは言え、複雑に思えるけど、この世界では特に大したことではなく、よく有ることみたい。
「ナチが次期王って言うのは、僕が聞いても良かったんですか?」
下克上とか言うやつなんじゃ無いよね?
「ええ、別に隠して居ることでも無いですし。
兄の二人の子とこの子の中で、王の資質が有るのがこの子だけなのです。
兄も私も子供はもう作らないでしょうから、この子が次期王となるのは決まっていて、周知のことですよ」
王の資質?僕が聞いていいのか迷っていると、察したレンに、
「その辺りの詳しいことが知りたいのでしたら、それは兄に聞いてください。
諸事情を私が話して良いかは分かりませんからね」
まあ国の事情だから部外者に、勝手に広げて良いわけないか。
機会が有れば王様に聞いてみよう。
その後は三人で色んな話をしながら過ごした。
*****
バルコニーで綺麗に整えられた庭を見ながら三人で話をしていると、宰相が戻ってきた。
「今戻った」
「お帰り」
「お帰りなさい、お疲れ様でした」
迎えるレンとナチに軽く頷き、
「ウチ様、着替えてまいりますので、一旦失礼致します」
「ごゆっくりどうぞ」
頭を下げて、宰相はバルコニーを後にする。
「わざわざ挨拶に来てくれたんですかねえ」
着替える前に挨拶に来てくれたのかと思ったら、いつもの行動パターンだそうだ。
日が暮れて来て風が出て来たので、リビングに移ると、宰相はドレスを着た女性の姿で現れた。
「貴方、ただいま。
ナチ、今日もいい子にしてましたか?」
「お帰りレニ。
今日もお疲れ様。いつも兄を助けてくれてありがとう」
言いながら座っていたソファーから立ち上がり、レンはレニをハグして、頰にキスをする。
うおー、ラブラブっすね。
ナチも歩み寄り、
「お帰りなさい母様」
レニはレンから離れてナチをハグする。
まるで海外のホームドラマだね。
一人だけ座ったままなのも落ち着かず、僕もソファーから立ち上がる。
するとレニが近寄って来て、
「ウチ様、我が家へようこそ」
とハグされてしまった。
そして僕をハグしたまま、
「あー、成る程、他の人の言ってた通り、これはなかなか離れ難いですね」
言いながらギューギューする。
ああ、魔物のハーフだから、僕の体質に反応してるのかと、慣れて来てしまっている僕は諦め気分でいたんだけど、前王と外交に出ていて、先日始めて会ったレンと、今日初顔合わせのナチが驚いた顔をしてこちらを見ている……。
あれ?これカイ王子と同じパターンにならないか?
と言うか、宰相とは今まで何度か顔を合わせていたのに、今まで抱っこされた事無かったぞ。
なぜ家族の前で……。
「母様、どうなされたのですか?」
ナチは不審げな声で問いかけくる。
「あー、話には聞いていたけれど、こんな反応になるの…か?
レニ以外でも?」
一応話だけは聞いていたみたいなレンだけど、複雑そうだ。
僕から望んで抱っこされてる訳でもないし、逆に抱っこ塗れは勘弁して欲しいので、口は閉じておこう。
「そうねえ、ナチは馬が好きだわよね?
目の前に毛並みの良い、美しく可愛い仔馬が居たら、しかもその仔馬が絶対にこちらに危害を与えないと分かっていたら、撫でたくなりませんか?」
レニの例え話に、少し考えてナチは頷く。
「そうですね、その仔馬が怯えなく、嫌がらなければ撫でると思います」
「魔物からすれば、そんな感じがウチ様から漂っているのよ」
そうなのですかと、ナチは言いくるめ……レニの言い分に納得したようだけど、成る程、そんな感じが漂っているのか。
複雑な顔をして居たレンも、そこに性的な意味は無いと分かり、ホッとした顔をしながらも、
「レニ、ウチは迷惑なようですよ」
と窘めてくれた。
レンの言葉で抱っこから抜け出した僕は、元のソファーに腰を下ろす。
「ごめんなさいね。
他の人から話は聞いて居たし、実際晩餐会などでも皆がウチ様を触っているのを見ていましたけれど、仕事中は気を引き締めていますから我慢できていました。
けれど、プライベートで、まして近くに居るとこの誘惑はなかなかですね」
いやいや、誘惑なんてしてないから!
誤解招きそうな言葉はやめてくださいよ!
「そうなのか。
そのウチから漂っていると言うものは、魔物のみ反応するのか?」
「自分では分からないのですが、元の世界では、フェロモンと呼ばれているものが発せられているのか、幼少の頃から動物を引き寄せていましたね。
元の世界には魔物が居ませんでしたけど、気の荒い野生の動物でも好かれましたね」
動物に好かれても、異性には好かれませんでしたが。
心の中で自虐突っ込みを入れてしまう。
「フェロモン?と言うのですか。
それは誰にでも有る能力なのですか?」
「能力……とは違うと思いますが、そうですね…僕もそんなに詳しくないけれど、動物にはそう言った引き寄せる物質が体内で作られているものもいて、周りに影響を及ぼす事が有ると聞いた事があります。
異性を惹き寄せたり、一定の行動や発育の変化をもたらす事も有るとか」
自分達の知らない事柄に、三人の知的好奇心を刺激されたのか、
「例えばどんな行動が?」
などと聞かれたので、学生の頃自分の体質に悩み、色々調べた時の事を、夕食の準備が整ったと声を掛けられるまで話して聞かせた。
本日も読んでいただきありがとうございます。
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……まあ、つまり明日ですね。
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