この世界の学問事情と結婚事情
ユゲ家では王弟のレン様が迎えてくれた。
宰相のレニ様はまだ仕事中の様だ。まぁまだ昼前だし。
「レン様、暫くの間よろしくお願いします」
頭を下げるとレン様は、
「敬称など不要ですよ。
レンとお呼びください」
笑って言われるけど、実際の僕と同じ年くらいだろうけど、見た目幼児が呼び捨ては無いだろう。
「ではレンさんで宜しいでしょうか?」
「ではそれで。
勿論妻や子供も敬称不要ですよ」
「いえ、流石に一国の宰相を敬称抜きとは……」
「城では宰相ですが、家では私の妻ですからね。
それに性別も変わりますから切り替えしやすいでしょう」
イタズラっぽく笑うレンに、
「確かに」
と頷く。
「では私の事も様抜きでお願いしますね」
僕が言うと、
「ならばお言葉に従いましょう」
態とらしく言いながら笑って手を差し出す。
僕は握手だと思って握り返したのだが……はい、そのまま手を引かれて屋敷の中へと案内されました。
ええー?王様もレンさんもハーフじゃ無いと聞いていたんだけど。
後日聞いたところによると、魔物の人達の様な『触りたい、抱きつきたい、触って欲しい』とかではなく、ただ単に自分の子供より小さな見た目だから手を引いた、との事。
つまりは完全に子供扱いって事だった。
*****
応接室でレンとお茶を飲みながら話をする。
「妻は夜になると戻りますが、息子も今は家庭教師が来ていて勉強中なので、紹介は昼食時で良いですか?」
この世界の子供は午前中家庭教師に勉強を教わる様だ。
「来年から学園ですから、基礎をしっかり学ばないといけませんからね」
家庭教師は色んな基礎を教えて、12歳から学園へ通うそうだ。
基礎…礼儀作法に始まり歴史や各国との力関係、国内の諸事情から馬術、剣術、体術、薬学、勿論妖術の基礎も学ぶと。
基礎だと言っても学ぶ事は多そうだ。
その基礎を学びながら、本人の資質や希望で、学園で何を学ぶか決めるそうだ。
家庭教師は小学校、学園は高校とか大学って感覚かな、と感じた。
学園で四年間学び、卒業後それぞれの道を進むとの事なので、学園はやっぱり大学ってイメージだな。
この世界では16歳で成人なので、学園卒業したらもう一人前だと。
僕の中の感覚では16歳ってまだまだ子供って感じるけど、卒業と同時に結婚する人もそれなりに居るそうだ。
いや、早いって!って思うのは現代日本人の感覚か?
そして他国では当てはまらないそうだけど、この国では離婚率ゼロなんだと。
素晴らしい!
死別は有るけど、良く聞く浮気や性格の不一致、DVや仕事にのめり込み過ぎて家庭崩壊とか、ギャンブルや買い物で借金が理由で、などなど結構耳にしてたけど、ここでは無いそうだ。
素晴らしい!
結婚するのも一人で生きるのも自由で、年取ってから独り身で居ても、周りは何も言わないと。
素晴らしい!
別に離婚をしてはいけない、など決まっているわけでは無いけれど、
『この人とずっと一緒に生きて行く、死が二人を分かつまで』
と思える相手と結婚するので、離婚は有り得ないとの事。
素晴らしい!
独りで居るのは、そんな運命の相手に出会えて居ないだけの事で、無理に結婚する必要も無い、と言う考えが一般的だと。
素晴らしい!
浮気とかは無いのかと聞くと、逆に
『死ぬまで一緒に居たい程好きな人と一緒になって、他に目を向けるなどあり得ない』
そうだ。
いや、本当に素晴らしい!
浮気…した事無いけど、された事は…………何だろう、景色が滲んで見えるなあ。
「魔物の方や祝福を受けた方は長生きしますからね、死別はあり得ますが、それ以外で別れるという事は無いですね」
「一生一緒に居る相手って、どうやって見つけるんですか?」
僕が聞くと首を傾げ、
「どうやってと言われても、出会えば分かるものなのではないですか?
運命の相手は必ず出会えますから。
私も妻と出会った時、私はまだ3歳でしたけど、ああ、この女が私の相手だとわかりました。
ですが、その時はまだ旦那さんが居ましたから、待ちました。
妻もその時感じるものが有ったそうです」
ん?旦那が居た?
宰相さんは再婚か。
と言うか3歳って……。
「あ、妻の年は聞かないで下さいよ。
女性の年齢は秘密ですからね」
そう言ってレンは笑うけど、宰相さんハーフと言ってたし、結構年上なのかな。
しかし3歳で運命の相手が分かるとは、感覚が違うんだなとしか言いようが無い。
しかし良いなぁ、円満夫婦……僕もこの世界で運命の相手に出会えると良いなぁ………今度こそ幸せな家庭を……ああ、やっぱり視界がボヤけるよ…。




