キラキラメルヘンファンタジーはおっさんには辛いです…
スイは報告して来ますと部屋を出て行った。
残されたのは僕と妖精王と女王、そしていつの間にか集まっていた沢山の妖精。
部屋の中がイルミネーションの様にキラキラ輝いている。
そう言えばと思い立って聞いてみた。
「さっきなんかも呼ぶ時、女王とか王って呼んだけど、皆の名前は?」
問いかけにふよふよ漂っていた妖精が一気に集まって来て身体にまとわりつく。
『ぼくは風だよ』
『わたしは水』
火、闇、光、木、雷、音……などなど、口々に言うけど
「それって属性とか言うやつ?」
『そうなの、それが名前なの。
だから雪は雪だし、王は王なの』
「確か属性毎に一つの意思とか言ってたから、混乱する事無いのか。
でもさ君達はちょっとややこしいかもね。
この国の王様を名前呼びなんて出来ないから、名前が有れば良いなと思うんだけど」
『名前?人みたいに?
王なのに王じゃ無くてボクだけの名前?』
『ワタシを呼ぶ時にワタシだけの呼び名?』
「うん、そう。
ダメかな?』
そう聞くと暫しの沈黙の後、二人は飛び上がり
『スキーーーー!』
と両頬に張り付いてグリグリ頭を押し付けてくる。
痛くは無いけどくすぐったいなぁ。
喜んでる様だから良いか。
名前をどうするか聞いてみたら僕に付けてくれと言われたので考えてみた。
妖精女王…二文字だから、テイ……イタ………ニアだな。
「ニア……ニア…ニア………あれ?声に出すと意外に言いづらいって言うか聞き取りづらい?」
実際声に出して気づいた。
どうしてもニヤーと耳に届くのは聞き慣れている言葉に脳内変換されるのか?
「まぁ、言いやすいのも有るし、ニヤで良い?」
女王に聞くと頭の周りを飛び回りながら
『ニヤ、ニヤ、ニヤ、わたしはニヤー』
と嬉しそうだ。
ニヤニヤ言ってると妖精の女王って言うより猫娘……えー、王様はどうしよう。
オベ…ベロ……無いな、ロンだな。
「ロンでどう?」
女王と同じノリで決めようとしたら
『ロンはダメ』
とダメ出しされてしまった。
『ロンはミヤ家のロンと一緒だからダメ』
あ、そう言えば医療大臣がミヤ・キリ・ロンって言ってたな。
同じ名前はダメだし、ミヤ・ロンとニヤとロンってなると響き的にもアウトだな。
「えー、じゃあ………シェ…ク……ピア、うんピア…………ん?ピア…あれ?」
何だろう、二文字で語尾が『ア』って意外に言いづらいし聞き取りづらいんだ。
「ピヤでも良い?」
『ピャ〜〜』
と王も頭の周りを飛び始める。
ニヤと手を取って二人で
『ニャー』『ピャー』
と言い合いながらくるくる踊りだした。
何だか女王の擦り寄る感じが猫っぽいし、泣き虫な王だし、案外合ってる……とか思うのは自画自賛?
踊る妖精王達に釣られて他の妖精達もくるくる踊り始めた。
いやー、何だろうこのメルヘンな世界。
このキラキラな中心に居るのがくたびれた中年のおっさんじゃ無くて、見た目だけでも幼児なのがせめてもの救いに思える。
報告へ行っていたスイと、アフタヌーンティーのお菓子の乗ったワゴンを押したメイドさんが連れ立って戻って来るまでこのキラキラメルヘンは続いた。
何故だろう、綺麗だし癒される光景のはずなのにライフゲージ削られた気がする……。
まぁ、おっさんだしねぇ…。