妖精側の気持ち
妖精王の言葉に驚き思わず聞き返す。
「眠りにつくって……繋がるって意思の疎通が出来たり術を使えるようになるだけじゃ無いのか?」
妖精の言葉は分からなくとも、僕の問いかけで不穏な空気を感じたスイは黙って成り行きを見守る。
『そうなの、全部が繋がるの。
だから残されて寂しい想いもしなくて良いのよ』
「寂しい想いって……いや、でも寿命まで繋がるなら確かに本当に好きじゃないと簡単に繋がれないよな」
そりゃあお願いされたからってほいほい人と繋がるなんて出来るわけない。
まさか命がけでなんて思いもしなかった。
「……ウチ様、妖精は何と仰っているのですか?」
僕の声しか聞こえないスイはそれでも重要な事を話してると推測し、聞いてくる。
なので祝福を授けた妖精は繋がった人と同じ寿命、つまり人が亡くなると妖精も一緒に死んでしまうと言っていると伝えると、とても驚いている。
「知らなかったのですか?」
「知りませんでした。
祝福を受けた本人でない限り、妖精は光にしか見えませんので見分けがつかないのです。
会話も出来ない、見分けもつかないですから、どの光がどの妖精かの個別判断がつきません。
なのでまさか人と一緒に儚くなっているとは存じませんでした」
そうなんだ。
しかしそこまでして人に尽くさなきゃいけないのか?
会話も出来ない相手に術を使えるように力を貸して、相手が死んじゃうと自分まで死ぬとか、言い方悪いけど便利に使われてるだけじゃ無いの?
口には出せなくても、理不尽に思う。
『そんな事ないよ、使われてるんじゃなくて、好きだから力になりたいんだよ』
王がにっこり笑って僕の思考に答える。
純粋かよ!どんだけ健気なんだよ!
って突っ込んでしまっても仕方ないよね。
好きだから力になりたい、好きだから残されて寂しい思いするより一緒に……。
ただただ純粋な思いで行動する彼ら。
これが人同士なら思いを交わし合う事も(色んな意味で)有るだろうけど、会話も出来ないので相手になんて報われないのでは?
『そんな事無いの。
ありがとうって気持ちは伝わるの。
言葉じゃなくて素直な気持ちは伝わるの』
ああ、言葉だと変に飾ったり、本心じゃない事もあり得るけど、繋がっていると純粋な気持ちがダイレクトに伝わるのか。
『うん、そうだよ。
そのありがとうはボク達の力になるの』
そうか。妖精達にも得るものがあるのならば、一方的に搾取されてるので無いのなら少しは安心か。
安心と言うより知ってしまった罪悪感は薄れると言うのが正直なところか。
『そんなに難しく考えなくても良いの。
ワタシ達が好きでやってるの』
これは人としてありがとうと言っておくべきかな。
これから僕も色々と力を貸してもらう事も出てくるだろうから、とやかく言わずに素直に感謝しておけば良いのか?
『それで良いんだよ。
とうちゃん難しく考え過ぎだよ』
妖精って純粋な生き物なんだね。
しみじみ思ってると二人は照れると顔を赤らめた。
「あの……」
スイが声をかけてくる。
あ、途中から頭の中の会話になってたか?
「今の話王に報告してもよろしいでしょうか?
妖精達に伺って頂けますか?」
そうか、今現在祝福受けてる人も多いし、これからも妖精との付き合いは続いて行くのだろうから、新たに分かった情報は共有した方が良いよな。
てな感じなんだけど、伝えても大丈夫なの?
僕の問いかけに王も女王も大丈夫と頷く。
「あれ?ちょっと待って、繋がった人が亡くなると妖精も一緒にだと、僕が死んだら二人もだけど、百人以上の僕と繋がった妖精いっぺんに皆死んじゃうの?」
そんなに大量の妖精を道連れにしちゃうとか、まるで大量殺人(殺妖精?)じゃないの。
『大丈夫なの。
ワタシ達居なくなってもすぐ新しい妖精生まれるの』
『ボク達は常に一定の数存在するから、一度に百人居なくなったとしても、すぐに百人生まれるから大丈夫だよ』
え?そんなに一気にすぐ生まれるもんなの?
『人みたいに生まれるんじゃないの。
発生するの』
…自然発生って事?
そうそうと頷く二人。
妖精の事は分からない事だらけだな。
そのうち詳しく聞こう……覚えていたら。
とりあえず今は一旦頭を休ませたい。
スイが淹れなおしてくれた紅茶を飲みながら柔らかなソファーに深く埋もれた。
後日集まった王様や重臣達の前で妖精達に聞いた話を披露した。
これって通訳の初仕事かな。