もちの次はしゅういちろう?
ウグイスは僕の部屋で飼っていたんだけど、独特の鳴き声が気になるらしく、トキ家の人々だけでなく、お客さん達からも
「あれば何の音?」
と聞かれるので、昼間は店先に籠を置き、看板鳥になってもらっている。
「へー、あの聞きなれない音は鳥の鳴き声だったのか。
見たことない鳥だなあ」
「僕のいた世界の鳥で、ウグイスって言うんですよ」
「珍しい色をしているのね。
それでこの子のお名前は?」
名前……そう聞かれて、咄嗟に思い浮かんだ物を口走ってしまった…。
「もちです」
ウグイスと言われたら、鶯餅しか思い浮かばない僕って、もしかして残念な奴だろうか…。
熊沢さんに食べないよう言い聞かせて、僕の家族が増えました。
なんて言ってた一月後、店にまたネイが生き物を持ち込んだ。
「ウチ様、今回はとても珍しく、可愛い生き物が見つかったので、是非受け取って下さい」
前回と同じ大きさの竹カゴに入ったその生き物は……。
「え?モモンガ?」
やっぱり日本固有種のモモンガだ。
大陸モモンガとは違う、日本の固有種。
動物園にも十匹くらい居たなぁ。
しかし、こんなに頻繁に日本の動物がこちらの世界に来るなんて、何か異変があるのか?
真面目に考えようとしたけど……あ、ダメだ、モモンガのつぶらな瞳にノックダウンです。
かーっわいいよな〜、モモンガって。
夜部屋の中でデレデレと眺めていると、ヤキモチを妬いた熊澤さんに耳を齧られてしまった。
勿論このモモンガも看板モモンガになったんだけど、店先に出してると、皆が皆、
「ウチにそっくり〜〜!」
と言うんだけど……こんなつぶらな瞳のモモンガと、五十路のおっさんを一緒にしないで!
因みにモモンガの名前は、満場一致で、【しゅういちろう】になってしまった。
いや、こちらの世界では下の名前名乗らないけど、僕の名前をそのまま付けるのはやめて欲しかった……。
だって、
「しゅういちろう、今日も可愛いね」
ならともかく、
「あ、しゅういちろうが寝てる」
とか、僕がサボってるみたいじゃないか。
それより何より、
「あー、しゅういちろうがウンチしてる!」
とか子供が叫ぶのは、羞恥プレイ以外の何物でもないよ!
でも、一緒に暮らしてるうちに、熊澤さんと仲良くなってくれたから、ありがたい。
また僕の家族が増えた……動物ばかりだけどね。
「しかし何でまた最近日本の動物がやってくるんだ?」
モモンガと聞いて、牧さんがわざわざマモランドからやって来た。
モフを実感したいがために。
「それも全部北の方から来てるみたいなんだって」
実はあの後、北方の国に潜入しているトモ家の人から、鳥と犬の死体がオダ家へ持ち込まれた。
もしかして、これらも地球から来たのか確かめるため、オワリへと呼ばれ確認したところ、鳥はキジだし、犬は柴犬だし。
「やっぱりゲートでも開いてるんですかねえ」
「んー、それだけならいいけどね〜」
しゅういちろうを突きながら、珍しく真面目な顔の牧さん。
「何ですかその不穏な言い方」
「ん〜〜、俺の妄想だから、杞憂で終わればいいんだけどね〜」
牧さんの言葉が頭の隅に引っかかったまま、二ヶ月程経った頃、最悪の事態が露見した。
補足……と言うか言い訳?
「モモンガって世界中にいるじゃん」
と言うのは正解ですけど、タイリクモモンガ、アメリカモモンガ、エゾモモンガ、ニホンモモンガと、大雑把に種類があります。
ほら、狼だって世界中にいるけど、ニホンオオカミは絶滅したって言うと、想像つきやすいですかねえ。
ニホンモモンガは日本の固有種なのですよ。
「なぜ見ただけでそんなのわかるの?」
とも思われるでしょうが、主人公元々動物園の飼育員で、動物に懐かれやすく、人馴れしてない動物や、気が立ってる動物も大人しくなるので、担当を持たず、全ての動物を見ていた……実際そんな事有り得ないけど、そう言う設定の人物ですので、多種多様な動物の勉強をした、と思っていただけると有り難いです。
動物のプロだからこそわかった、と言うことにしておいてください。




