日本から来た…?
それは客として来店している国軍の兵士さん達の話から始まった……。
「そう言えば最近、失踪者の探索依頼が多いよな」
「三、四年前からたまに有ったやけど、ここ最近は本当に多いやな」
「単なる家でなのか、事件なのか」
「ただ単に、思いついて旅行に行ったのやもな」
「んなわけあるかい」
そんなノリツッコミな会話を聞くとなしに聞いていた。
*****
ある日、いつものように、ネイが休みだからと店に来た。
「お邪魔してすみません。
今日はちょっと変わったお土産を持って来ました」
特別な用事が無い限り、この15年間ほぼ毎週通って来ているのだけど、珍しい物や美味しいものなどが手に入ると、こまめに持って来る。
「別にそんなにちょこちょこ、手土産なんて持って来なくてもいいって言ってるでしょ。
別に来店拒否なんてしないから」
もう諦めてるからとは言わないでおこう。
「いえ、本当に珍しいものなんですよ。
トモ家の者が見つけて、オダ家へ献上されたのですが、ウチ様が好きそうですから持って来ました」
献上品の使い回しか。
僕的にはお金を使うより、家にある物を持って来る方が、気を使わなくて済むけど、それを渡したトモ家的にはどうなんだろう。
そっとカウンターの上に置かれた手土産は、50センチ四方程の箱を風呂敷で包んでいる物だ。
中から生き物の気配がする。
「山脈に一番近い国で捕まえたそうです。
初めて見る鳥なのですよ」
言いながら風呂敷を取り外すと、中は竹で作られた鳥籠に入った一羽の鳥……
「え?これって……。
この鳥ってこの世界にも居たの?」
ちょっと驚いたので、思わずネイに詰め寄った。
「いえ、初めて見る鳥です。
ミル様に書物を調べて貰いましたけれど、このような鳥は記録にも無いそうです。
……ウチ様はご存知なのですか?」
籠に近づいてよくよく見ても、やはりこれって…。
「うん、僕の世界の鳥だね。
しかも日本固有種……僕の住んで居た国と、飛んで渡れる近隣の国にしか居ない種だ」
前に聞いたように、やっぱり日本とのゲートでも有るのかもしれないな。
まさかこの世界でこの鳥を見るなんて…。
不測の事態に動揺している僕の目の前で、籠の中の鳥は澄んだ声で鳴く……。
「ホー…ホケキョ」
実は一二ヶ月前、町中てセグロセキレイを見かけた気がしたんだ。
しっかり確認しようと近づいたら逃げられたから、きっと似た感じの鳥だろうな、とその時は思ってんだ。
だって、セグロセキレイも日本固有種の鳥なんだから。
こちらの世界にいる訳ないから、見間違いなんだろうなと思ったけど、あれってやっぱり、セグロセキレイで、偶然ゲートでも繋がって、こちらの世界に来たのかな?
一応先輩召喚者に聞いてみようと、まずはキシ家へウグイスを連れて行ったら、どうやら23世紀ではウグイスは絶滅していたらしく、地球の生き物という以上に、
「これがウグイスですか!
映像で見た事はあるけど、本物は素晴らしい!
これは是非標本に……」
大興奮で、何か危ない事言い出したから、逃げました。
フジ家へ連れて行って見たら、
「まさかこちらの世界でこの鳴き声を聞くことができるなんて、思っても見なかった」
と、泣き出した。
何事かと待合室の患者さんがジロジロ見るので、居心地が悪くてこちらも逃げてしまった。
牧さんは……あまり興味無さそうだった。
「リアル鳥はねぇ…。
モフれないし、鳥以外がいいな。
やっぱりモフってなんぼだよ。
それかせめて擬人化してくれるならこちらも……」
何だか斜めな事を言い出したので、通信を切った。




