僕のお仕事
武器屋の仕事は楽しい。
店の裏に中庭が有って、そこで購入したい武器を試す事ができるようになっている。
窓から見てるだけでワクワクするし、近いから迫力も有る。
特にゲームや漫画の中でしか見た事無いような、バカでかい両手剣や戦斧なんて、勢いよく振り降ろすと風圧を感じる。
幾つになっても武器は男の子心をくすぐるよ。
生まれて50年近いんだけどね。
実はトキ家に来た時、仕事はしなくていいと言われたんだけど、見た目は幼児でも中身はおっさんなんだから、働かなきゃダメでしょ。
それに自分的に働かないってのはムリ。
なのでこちらから頼み込んで、働かせてもらう事になったんだけど、次にどの店で働くかと言う事が問題となった。
スイーツの店に誘われたけど、女子供が沢山集まるお店の客寄せパンダはごめんなさいだよ。
衣料品は、全然わからないのでパス。
後誘われたのは食料品。
だけどこちらも元の世界と違うものが多くて、お客さんに聞かれたら答えられないなと、お断り。
輸入品も同じ理由でパス。
家具もムリだな。
高額な嗜好品や、装飾品は怖くてムリ。
スイーツショップ以外の、加工食品か、金物関係で悩んで、ダメ元で武器屋を希望したら、オッケー貰えました。
ここの仕事は、武器の注文を受けるのと、引き取りに来た人に渡すのが主な仕事だ。
店内展示の見本品を実際に、見て触れて、振ってみて、自分に合ったものを決めた後、細部のオーダーを聞き、鍛冶屋に発注する。
出来上がったら、お客さんに連絡して、渡す前に微調整、その後に無事引き渡しとなる。
後は買った後のメンテナンスかな。
防具屋も同じ流れだ。
農具や工具、調理器具などは、出来合い品を売っているだけなんだけど、武器と防具は個人個人に合わせないと、命に関わる物なんだからね。
実際にこの15年の間に、魔獣の大繁殖期が二回あった。
一度目はチムルの異常繁殖。
チムルとは、草食動物なんだけど、増えすぎると草だけでは足りず、木の皮も食べるから木が枯れるし、鋭い爪を持っているので、木に登り、木の葉も食べるので、間引かないと、一面枯れ野原になってしまう。
見た目は緑色の狸もどき。
狸と違うのが、尻尾が短い。
尻尾の短い狸と言うと穴熊だけど、顔つきが狸で、どちらかと言うとハムスターみたいな尻尾だ。
因みにこいつの肉はタンパクでとても美味い。
二度目は、マフの大繁殖。
マフはカパピラによく似た小型の肉食獣だ。
群で狩りをするし、のほほんとした見た目と反して、凶暴ですばしっこい。
魔物や人すら襲うから、大人ならまだしも、子供なんて本当に危なくて外に出せないよ。
普段なら年に一度の繁殖期に一匹か二匹しか生まれないのに、大繁殖期には前年にメスしか生まれず、そのメスが一斉に五、六匹生むので大変だ。
生態系も壊れるし、放置してると町まで襲って来るかもしれない。
なので騎士団と国軍が合同で狩りまくるのだ。
因みにこいつは食べるところは少ないが、脂が乗って大変美味しい。
……どちらにせよ、我々の食料が増えると言う結末なのだけどね。
他の魔獣も大繁殖期は有るそうなのだけど、不定期でその期間が読めない。
だから普段から国軍が見回りをする時に、魔獣研究員を連れて行っているそうなのだ。
そう言う事があるので、戦争などない世界なのに、騎士や兵士は身体を鍛える事を怠らないんだって。
仕事は楽しいんだけど、休みの度にネイが一日中入り浸る……。
団員さんとしては、急用があれば武器屋に行けば団長が捕まるので、有難いとか言ってるけど……。
まぁ、いい加減慣れはしたけどね。




