会議室へ乱入(他力)
「あれ?起きて大丈夫なの?
……ってか何それ?」
手にした毛布を落とし震える指でこちらを指差す。
キャーキャー言いながら周りに居た妖精達は窓から外に出て行く。
残ったのは女王と王だけだ。
「え?さっきの全部妖精?
あんなにいっぱいの?
一度にあんなに沢山居るの見た事無いよ。
それに残りの二匹他のより明らかに大きいよね」
半ばパニックになりながら近寄ってくる。
「え?大きさって他の子達と変わらないよね?」
左右の肩の二人を見ても、先程まで居た他の妖精と同じく五センチサイズだ。
『この人不敬、二匹とか言うの不敬!』
『酷い…虫とか動物みたいに二匹とか……』
女王はプリプリ怒って王はまた泣き出す。
マキはえっ?て顔でこちらを見てる。
「それと匹呼びはやはりちょっと失礼かもよ。
いくら小さくても人型なんだから」
「………………ええええー⁉︎」
大きな声を出したと思ったら二の腕を掴まれてガクガクと揺すられた。
「貴方は彼らが人型に見えるのですか⁉︎」
「見えるも何も……ちっちゃいお姉ちゃんとお兄ちゃんだよね?羽の付いた」
左右を見て視線をマキに戻すと目をひん剥いて顎が外れたくらい大きな口を開けている。
そこそこ美形なのに台無しだよ。
『あのね、見えないのよ』
『人や半魔には光にしか見えないよ。
完成なる魔族か祝福四つ以上無いと見えないけど知らなかったのかな?』
『それか私達のどちらかの祝福でしか見えないの』
「え?知らなかったのか?」
「知りませんでしたよ!純粋なる魔物以外で妖精の姿を見た人なんて居ないんですから!
唯一の例外が初代だけなんですから!」
女王達に問いかけたつもりが激怒しているマキが答える。
「そうなんだってね。
僕の場合祝福が沢山有るのと女王と王が居るから見えるみたいだね」
僕の言葉にマキが凍り付いたように動きを止めた。
「あれ?どうしたの?ちょっと大丈夫?」
ソファーから降りて今度はこちらがマキを揺すってみる。
まぁ、身長差が有るから脚にしがみついてるみたいな感じになってしまってるけどね。
はっと我に返ったマキの行動に度肝を抜かれた。
*****
何と彼は無言で俺を抱き上げ走って部屋を出て、行き交う人が驚いても、声をかけても無視して走り、辿り着いたのは会議室?
大きなテーブルをグルリと椅子が取り囲み、そこに先程居た一部の人が座って居たけど、何の先触れもなく勢い良く扉を開けたマキに皆の視線が集まる。
無論抱っこされてる僕も注目の的だ。
爺さんに抱っこされるおっさんか……年相応の姿ならシュールだな。
喜劇通り越してホラーだよ。
などと現実逃避している間に無言のままのマキは王様の近くに歩み寄り、僕を降ろして跪く。
どうして良いのかわからない僕は棒立ちだ。
「どうしたマキ、まだ会議中だし、礼儀がなってないぞ」
先程も王様の近くに居た白髪混じりの黒髪の男性が声をあげる。
黒髪って事はこの人も英雄の血筋か。
「恐れ入ります、至急お伝えしたき事が……。
彼は妖精の姿が見えているそうです」
ああ、またどよめかれた。
何度目だ?
「いや、でもあり得ない事では無いだろう?
確か初代様も見えていた事から一定数以上の祝福が有れば姿は見えるのではと研究者が言ってたと思うが?」
「勿論存じております。
しかし今両肩に居る妖精は妖精王と女王だそうです」
騒めきが大きくなる。
「確かに他の妖精より光が大きい様だが……何故王と女王だと分かる」
問いかける声にマキはゴクリと唾を飲み込んで声を落とし「実は……」と話し出す。
椅子に座って居る人達も釣られて唾を飲み口を閉じて言葉の続きを待つ。
「……彼は妖精と会話が出来るそうです」
「何だって!」「あり得ない!」「そんな馬鹿な事!」
あちらこちらから叫びに似た大声が上がる。
殆どの人が立ち上がりこちらに詰め寄って来た……怖っ!
「静かに!皆落ち着くのだ」
今にも掴みかからんとして居た人達は王様の一声でピタリと止まる。
おお、まさに鶴の一声、などちょっと逃避してみる。
「そなた妖精の姿が見えるとは誠のことか?
ならどういう風に見える?」
王様に聞かれて見たままを答える。
玉虫色と言うか七色に輝く頭髪の夫婦。
女王は蝶の羽、王はトンボの羽でどちらも透明で髪と同じく七色に輝いて居る。
瞳は小さくて見にくいけど金色だと思うと伝えると、伝書の通りだとと騒めき再び。
「成る程、本当に姿が見えて居るのだな。
それは確かにあり得ない事では無い。
魔物も姿を見る事が出来るからな。
しかし本当に会話が出来るのか?
そんな話は魔物でも聞いたこと無いぞ」
王様に言われてこちらがビックリだ。
人も魔物も会話が出来ないってマジか?
『マジなのよ。
こっちは何言ってるか分かるのに、だーれもこっちの話は分かんないの。
不思議よね』
『祝福してるのに通じないってガッカリだよね』
女性の言葉に頷きながら王も言う。
「へぇ、こっちの言葉は完全に伝わるんだ。
でも祝福受けたら繋がるのに会話出来ないって不思議だね」
『でしょう。
言いたい事の雰囲気は伝わるみたいなの。
でも会話は出来ないの。
だからたまにちんぷんかんぷんな事起きるの』
「ああ、まぁ会話しなきゃ細かいニュアンス通じないだろうね」
そうそうと大きく頷く二人。
いつのまにか静かになって居た周囲に気づかず会話してたら、とうとう王様迄立ち上がって近づいて来た。
「おおお、本当に会話をしているのだな。
これは奇跡か……」
な…何だか大袈裟な事になってないか?
「これは是非国の為、いや全世界の為に妖精との橋渡し役として勤めて頂けないだろうか。
頼む」
王様が僕の手をガシッと握って頭まで下げるもんだから周りの重臣達は大絶叫。
余りにも煩いので妖精夫婦は『またあとでね』と避難して行った。
僕も逃げ出したいよ……。
キャラが暴走してて話がなかなか進みません……。
主人公が呑んで居た時から時間的に2、3時間しか経って居ません。
10話で2、3時間って……(笑)
連続公開は今日迄となります。
次回から奇数日更新となりますので、宜しければまた奇数日にお会いしましょう。
……って明日だよ。