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中年エスパーの大冒険  作者: 奏多 晴加
序章 少年時代
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A4 風は未来に吹く

 瞬間移動テレポーテーションを覚えてから車もバイクも必要がなくなった。

 手放すつもりだったのだが父親が乗りたいというので名義変更した。

 少しは金をくれるかと思ったが、くれなかった。無償譲渡だ。


(フジャッケンナ! フジャッケンナ!)


 まぁ持っていても自動車税やら自賠責保険、任意保険等々で金がかかるので気前よく譲ってやった。

 同じ家に住んでいるのだから乗りたくなったら借りればいいし。

 バイクはそのまま乗り続けていたが、後の世で豆腐屋が配達に使っていた名車は「年をとるとクラッチ付きの車は疲れる」ということで、同じメーカーの追跡者と名付けられたオートマ車に買い換えられた。


 20歳を迎えた年の年末ジャンボ宝くじは1等前後賞合わせて1億円になった。

 もちろん、いろいろ操作して当たった。


「都内にマンションを買おう!」


 当選金の支払日前に年号が変わった。少し自粛ムードになったが、まだまだバブルである。当選金を受け取りに行ったが手続きしている最中には連続当選の話は出なかった。

 若造が1億円を持っていても珍しくなかったのだ。

 両親は「あんた、よく当たるねぇ」と関心するだけだった。

 今回は全額、俺が自由に使えることになった。

 少し後ろめたかったので当選金額の1割は寄附した。少しでも平和のために、恵まれない子供のために役立てよう。いい人キャンペーンだ。


 マンションは港区に買った。何となく品川駅が使いやすい駅だと思ったからだ。

 実家にも帰りやすいし、大学・・・というより家庭教師先に出やすいからだ。

 瞬間移動テレポーテーションもいいけど、人の目が多いところでは毎度毎度駅のトイレには跳躍できないので、交通の便がいいところの方がいいのだ。

 駐車場も借りた。

 自動車なんてなくても不便じゃないけど、あれば「俺、車を持っているんだ。今度ドライブにいかない?」と女の子を誘えるかな?と思って。


 16年ぶりに復活するという赤いバッチをつけた4WDのスポーツカーに一目れして予約した。

 ちょっと高かったけど金は持っている。

 家庭教師は親が会社のお偉いさんという家庭以外、断った。

 これから控えている就職に有利な条件のところは残した。大学の同級生は「官僚になる」という目標をもったやつが多かったが、話を聞くとどこの省庁も下っ端は寝ないで働いているようだ。

 おまけに大学の先輩も多いし同期だって競争相手。

 何か人間関係が面倒くさそうだし、過酷な職場は新聞配達のアルバイトだけでおなかいっぱいだ。

 民間企業に東大出身者が就職したら学歴だけでチヤホヤしてくれそうなので、その方が良いと思った。


 この頃はベルリンの壁が壊されて東西ドイツが統合されたり、日本企業がアメリカの象徴ともいえるビルを購入したり、名画をとんでもない額で落札したりと、毎日ジェットコースターに乗っている気分だった。

 結局、就職は家庭教師先と一切関係のない企業にした。

 家に勉強を教えに行っているせいで各家庭の雰囲気が何となくわかってしまい、何だか嫌になったからだ。

 いざ就職試験!となったら俺と関係のない、俺のことを知らないところの方がいいように思え、そういう企業を選んだ。


 就職試験で面接での受け答えに不安があったが家庭教師をしていたおかげなのか、新聞配達でパートのおばちゃんたちにいじられたおかげなのか、あっさり合格をもらった。 ・・・大学のネームバリューのおかげかな?

 俺が就職した年は就職氷河期直前でよかった。翌年からは大変だったみたい。

 入社式を終え、新入社員研修を受け、配属されたのは総務部だった。

 学部は異なっていたけど法律に詳しいことを面接でアピールしていたからなのか、渉外部門を担当することになった。


 ここでつまずいてしまう。

 とにかく会話が苦手で「相手の気持ちになって接する」ということができなかった。

 交渉ができない。すぐに相手を怒らせちゃう。

「法律ではこうなっています、過去の判例ではこうでした」と正論しか言わないので相手の印象がものすごく悪くなるらしい。

 俺は間違ったことを言ってはいないし、何で怒られるのか理解できなかった。

 上司から「頭は良いけど、使えないやつ」という評価をされた。


 配属から1年で労務部に異動となった。

 こちらでは労働管理や衛生管理等が主な仕事だったが会話の相手は社員のみだったので、社外の人を怒らせずに済むからまだマシという上層部の判断だと思う。

 とにかく俺なりに一生懸命働いたのだが、いかんせん人間相手の仕事。

「気が利かない。言われたことしかしない。頭でっかちで使えない」と、さんざんな評価だった。


 これじゃ営業なんてできないから労務部門で飼い殺しである。

 それでも給料をもらっているのでガッツとファイトでがんばった。

 ただし残業はしない、休日出勤は嫌々、飲み会の誘いも断る等々で「新人類世代」と呼ばれていた。社内でも宇宙人扱いである。まいった。

 何かというと「バブル入社は使えないやつが多いなぁ」と嫌みをいわれ肩身が狭かった。


 そこで上司や同僚を俺の思うがままに操れないかと試してみた。

 他人に対して使う超能力は慎重に実行しないと俺の立場が危なくなる。

 会話中に相手の目をじっと見て「俺の思い通りになれ」と念じる。

 いきなり強く念じると俺が超能力者だとバレてしまうので少しずつ、少しずつ、いろいろな人に施術した。


 結果は・・・。

 弱く念じると「じゃんけん」に勝つ程度。俺の職場では休憩時間にじゃんけんをして一番負けた人が全員にコーヒーやジュースをおごっていた。これはこれで負け知らずでよかった。

 強めに念じると一から十まで行動を指示しないと動かない、リモコン操作のお人形さんになってしまった。

 操っている最中はたまにトイレに行く命令をしないと漏らしやがる。会話もいちいち台詞せりふを念じないとできない、無表情になる等々、手間がかかるだけで俺にメリットはなかった。


 本当は俺を神とあがめたて何を言っても「はい、おっしゃるとおりです!」というイエスマンに洗脳したかったのだがうまくいかなかった。

 多分毎日、程よいくらいの力でコツコツ施術していれば洗脳できたと思うが程よい力加減を覚えるのが難しかったのでしなかった。

 また弱い力ではそうでもなかったが強い力でお人形さん状態にすると解放した後に相手は何故なぜかとんでもなく落ち込んでいた。

 ある上司を服従で操っていた後にトイレの個室で「生まれてきてスイマセン、生まれてきてスイマセン・・・」と泣いていたのに気づき、それからは使うことを控えた。


 本当は馬鹿みたいに上司や先輩の言うことを「はい」、「はい」と聞いていればかわいがられ、集団で働く「会社」という組織に馴染なじめたのだろうが20代の俺はそれに気がつかなかった。


 何年っても会社の仕事は面白くなかったし人間関係も良くなかった。

 自分は使われるより使うがわの人間なんだと思っていた。

「こうなったら自棄やけよ!人生を転がり落ちてやる!」と少し自暴自棄になっていった。


 会社帰りにパチンコ屋に寄りスロットで稼いだ。高速思考を使えば「目押し」が簡単にできたので毎日稼げた。

 パチンコ屋が閉店するとキャバクラに通った。パチスロで稼いだ分はすべてキャバクラに使った。

 キャバクラは良い。かわいいお姉さんが俺のことをチヤホヤしてくれる。

 金を使えば使うほどチヤホヤしてくれる。大変気分が良い!


 俺は当初、苦手だった女子との会話が練習できると思ってキャバクラに通っていたのだが、きれいなお姉さんたちが余りにもチヤホヤしてくれるので徐々に「こいつら、俺のことが好きなんじゃないのか!?」と勘違いしてきた。


「ねぇ、ねぇ!明日、同伴してよ!お寿司すしが食べたい!!」

「(おぉ!そんなに俺と一緒にいたいのか!)OK、OK!おいしい寿司すし屋を知っているから、そこに行こうか!」


「私、今月はあと1回同伴しないとペナルティなんだよね・・・」

「(そんな内情まで告白してくれるのか。俺って頼りにされているなぁ!)OK、OK!俺も暇だから同伴してあげるよ!」


 初心うぶだった俺はいいように金を吸い上げられていったが、カモにされているつもりは全然なかった。

 それより「何か、俺ってモテモテ!っていうかモテ期到来!? わはははは!」と喜んでいた。

 遊び慣れてないし、遊びを教えてくれる先輩も友達もいない。

 どんどんのめり込んでいくのだが、あるとき突然ひらめいた。


「お金を使っているからモテてるんじゃね?」


 お姉さんたちの休みを聞き出し「その日にデートしよう!」と誘ってもすべて上手うまかわされた。

 同伴はしてもらいたいがアフターは嫌だ、とも言われた。同伴出勤はお姉さんたちの稼ぎになるがアフターにはない。お姉さんたちの任意なのだ。

 やはりモテていたのではなく「たくさんお金を使ってくれる、良いお客さん」というだけなのだ。

 この事実に気がついたら急に気持ちが冷めてしまい、俺はキャバクラ遊びを卒業した。


 人生の目標もなく、しばらくはダラダラ生きていた。

 朝起きて会社に行って、帰りにパチスロして、家に帰るとマンガを読んで、東京○チャンネルでアニメを見て寝る。そんなことを毎日していた。

 パチスロで稼いではいたが遊びに多くの金を使ってしまい、貯金がかなり減ってしまった。「また宝くじでも当てようかな?」と思っていたら日本でも「ロトくじ」が発売されることになっていた。


 ロトくじは自分で好きな番号を選んで買える宝くじだ。

 抽選は「電動攪拌(かくはん)式遠心力型抽選機(通称:夢ロトくん)」という機械を使い、番号の書かれたボールを無作為抽出する。

 つまり俺的には「どうとでもなる抽選方式」なのだ。

 しかも毎週行うという。


 1等ばかり当てていると目立って仕方がないのでわざと3等を当てた。

 ロト6なら5つの番号は俺の選んだ数字を抽出した。たまにだけど俺が操作していない最後の1つが適当にマークした数字になってしまうことがあったが、そういうときは換金しない。

 ちょっともったいない気がしたが毎週抽選しているし、1等を何度も当てていると変に思われるのではないかと思ってあきらめた。

 ちなみに宝くじの当選金は非課税だ。俺は後ろめたい気持ちが少しあるので当選金の1割を寄附し続けている。

 もうけた金は食べ歩きに使った。

 都内は世界中の料理が食べられる。海外旅行をしなくても各国の名物料理を堪能できる。

 平日は会社とパチスロ。土日は都内で食べ歩きという生活を続けた。


 魔が差したのだろう。


 食べ歩きに出かけ昼食と夕食の間にプラプラと散歩をしていた。

 いつもなら気にもめない犬の散歩にかれた。短い足でチョコチョコと歩く姿にくぎ付けになった。

 ジークンドーの達人が賞金稼ぎをするアニメの影響だろうか。ウェルシュ・コーギー・ペンブロークが無性に欲しくなった。

 住んでいるマンションは幸いにもペットは1匹までなら飼っても良い。

 そのままペットショップ巡りをした。


 ウチに来たコーギーは雌だった。アニメに出てきたデータ犬と同じ名前にしようと思っていたが女の子なのでちょっとひねって「アン」と名付けた。

 乳離れしたのを機に売りに出されたようだ。まだ乳歯が生えそろっていない。

 子犬用のドッグフードを暖めた犬用のミルクでふやかせてから食べさせた。

 まだ消化器官が発達していないので御飯を食べさせた後には肩に抱き、背中を軽くたたいてゲップさせた。


 幼稚園に通っていたとき、友達の家で飼われていた大人しい老犬が俺の中での犬のイメージだ。

 仮○ライダーごっこの際にはいつも怪人役を押しつけ4~5人の幼稚園児に代わる代わるライ○ーキックをされていた。

 怒るわけでもなく、えるわけでもなく、俺たちが仮○ライダーごっこに飽きると尻尾を振りながらみんなの顔をなめ回していた。

 思い返せば俺たちよりも実年齢でずっと年上だったのだろう。やんちゃな俺たちをいつも優しく見守っていてくれた。

 アンも優しいワンコになってほしい。ついでにアニメのように天才犬になってほしい。


 俺はそんなイメージでアンに接していたので、自分自身が気づかぬまま「頭脳活性」をほどこしていた。

2016/01/15 誤字訂正

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