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雪女  作者: 海猫
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雪女・上

 大きく険しい雪が降る山の中で、父なる神の下で

冷たい氷と雪でできた女の子が生まれました。

生まれたばかりの女の子は何にもしらない初雪のような可愛い子でした。

山の神さまは女の子を雪ん子と呼び大切に育てていました。


そして何年も月日がたち、6歳の子ほど雪の子は大きくなりましたが心は氷のように冷たく冷え切っていて

山に住む動物たちに意地悪をしたり酷いことをするのが大好きでした。


「ねぇ雪ん子さんどうしてこんなことをするの?」


石を思い切り投げつけられた野ウサギに聞かれると女の子はこう答えました。


「皆を困らせるのが楽しいの」


「なあ雪ん子こんな事をして胸が痛くならないのか」


大きなクマさんに聞かれてもよくわかりません


「痛くないよ?なんで痛いの?」


どんな優しい言葉も酷い言葉も氷の心を持った雪ん子には響きません。

何が悪いか聞かされても、どうしてダメなのかもわかりません。



そんなある日、動物たちに話を聞いた神さまは怒って雪ん子に呪いをかけました。


「お前が少しでも優しい心を持たなければ冬以外は外に出さない」


そう言われ頭に簪を着けられると急に雪ん子は眠くなってしまい、それからは冬以外の季節をを

眠って過ごすことになりました。

温かい春も、暑い夏も、綺麗な秋も見れなくなりました。


真っ白な雪の中に動物たちは春まで眠っているので起きているのは雪ん子一人だけです。


「つまらないよ・・・」


 どんなに大きな声を出しても、耳をすましても何も聞こえません。

毎日が同じでつまらなくなった雪ん子は神さまが目を離した隙に山の麓にある人里にいたずらに行きました。

足をかけて転ばせたり、桶を壊したりと人を困らせてばかりを繰り返していました。


 神さまは山に雪ん子がいないと気づいて探してみると今度は人を困らせているのを見ました。

ものすごく怒った神さまは雪ん子を今度は山から出られなくなりました。

されども雪んこの性格は治りません



そんな雪が降る冬の間だけを一人で遊んで何年か過ぎたころ、前が見えないほどの夜の闇が覆う山に人が歩いていました。

「あれ?」


山の天辺から下を見ると背中に大きな籠を背負った若い男が危ない足つきで山を下っていました。

雪の季節ほとんどの人間は雪崩など危ないので山には入りません。

久しぶりに神さま以外に出会った雪ん子は嬉しくてしかたがありません、強く舞っている吹雪に身を隠し急いでその人間のもとへ向かいました。


「こんな山奥に何か用?」


雪ん子が吹雪の中問いかけると人間は目を見開き驚きました。


「君こそ小さな子がこんな吹雪の中に?」


といかけると男は直ぐにギョっとした表情をすると着ていた防寒着を一枚雪ん子に被せました


「大丈夫か?!あぁ・・こんなに体が冷たくなって・・」



たしかに男と比べると雪ん子は薄着で足には何も履いていません。

でも雪ん子は寒くはありません、でも不思議なことに何時も冷たかった胸がなんだか暖かく感じました。


「いっしょに村に帰ろう」


男はそう言うと背負っていた籠の中に雪ん子を入れ背負うと山を下り始めました。

でも吹雪がひどく一歩先も見えません、でも男は背負った籠にすっぽりと入ってる雪ん子を気にかけながらも足は止めません


「大丈夫か寒くはないか」

「私は大丈夫、お兄さんは?」


何度も何度も大丈夫かと聞かれて氷と雪で出来てるか全く寒くもありません。

何時間と歩き続けて男は三回ほど籠を下し休みましたが雪ん子は自分から逃げようとは思っても

かならず男が心配そうな顔で雪ん子を見るから。

男はいろんな話をしてくれて見たこともないことを語り聞かせてくれ其れが珍しくも面白くて仕方がありません。

語り終わり雪ん子が大丈夫なのを確認すると籠を背負ってまた男は必ず歩きだします。


いつしか吹雪も弱くなり空が白くなり陽の光が差し込み始めたころ、少し遠くに村が見えてきた頃

雪ん子はなんとなく籠から頭を出して男に話しかけました。

二人は振り向かずには話したがふと、雪ん子が何かおかしいと気がついた。


「・・・・ねぇ、お兄さん」

「どうした」

しばらく雪ん子が黙りこむと意を決して口を開いた。


「ちょっとお兄さんこっち向いて」


男は不意に黙りこみ、雪を踏む音が静寂の森の中に響いた。

しびれを切らした雪ん子が思いっきり片耳と髪の毛を引っ張り無理やり顔を振り向かせた。


「っ?!」


不意にやられたことなので痛みで顔を向かせることは成功したが見た瞬間、雪ん子は目を見開いて涙を流した。

初めに見た時と違って顔が赤や紫に腫れているしこっちを見てバレて困った顔をしている。


「ごめんなさい」


雪ん子は自分を気遣って男が下山に時間がかかったのを判ってた、だいぶ前から凍傷かもしれないことも

何と無く解かってた、そして自分がこの人を殺せない……優しいこの人を好きになってしまった事もわかってた。


でも自分が生まれて初めて流した涙は止め方が分からなくて余計に好きな人を困らせるし、何よりも雪でできた体が涙と陽の温かさで少しづつだけれども溶けてしまう。


「おい!お前」


正直体がしんどい、でももう少し・・あとちょっとだけでもそばにいたい


「お兄さんこれあげる」


そう言うと溶けかけの体を無理やり動かして頭に飾ってあった簪を男の手に握らせた。

驚く男に対して雪ん子は静かに告げた。


「これは私の宝物だけどお兄さんに持っててほしいの」


いらないと何度も首を振る男に対して若干雪ん子は頬を膨らませすねたように告げて簪を握らせた手を

両手で握った。


「じゃ預かっておいて、次に会いに行く時に返してもらうから!」


そう言い放つと雪ん子の体は宙に溶けるかのようにして消えてしまった。

はっと我に返った男にとってはまるで幻の様な出来事であったが、手に握られてる物があるから現実。

男は籠を背負いなおすと一瞬笑って村への帰路へ着いた





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