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「案の定よその奴らも廃棄命令出してたわ。外の奴らに指示は出しただろうな、ガキの保護者はどうなった」
頬の筋肉をさせ、インカムを外しながら戻ってきたフェネアンに、職員たちはサーっと青ざめるとけたたましい足音を響かせながら会議室を飛び出した。それに彼は目を点にし、振り返る。
「外の連中に指示しとけっつったろうが、このボケナス共! これ以上てめぇらの仕事増やしてぇか、あぁ!」
「落ち着け、落ち着け」
「てめぇはガキの保護者特定出来たんだろうな、面倒事をゴリゴリ増やしていくんじゃねぇぞ!」
「あ、あの」
いつの間にか、トレートルがフェネアンの前に立っていた。ボロボロの白衣の裾をキュッと握り締め、顔を精一杯上に向けてフェネアンを見ている。
「おじさん、ういるす、真ん中のコンピュータで消せるって言ってました」
「……はぁ……?」
突然の言葉に、シャルとフェネアンは揃ってトレートルの前に腰を降ろした。彼はコトンと首を傾げたまま、再び口を開く。
「えっと、ちゅーおーのコンピュータを使えば、どーる、全部しょきかされるって……」
「ド、ドールって。また古い言い方を知ってるね」
「中央のコンピュータ……、セントラルの中央管理室にあるコンピュータの事か? なるほどな、バンボルを初期化させちまえばウイスルもまとめて消去できるか……。だがなガキ、お前のおじさんはなんでそれを知っているんだ」
フェネアンの問いかけに、トレートルはキョトンとしていた。シャルも同じように眉を寄せて顎に手を置いている。
「確か、中央管理室には……お偉いさん方しか入れなかったよな。オレ達下っ端は入ったら職員カードをはく奪されただろ」
「それどころじゃねぇよ。バンボルに関わる一切のことは禁止されるか、最悪の場合……もっとも環境の悪い研究所に飛ばされて奴隷のごとく働かされる。って話だ」
「……総電波受信アンテナがある、施設……」
「この星の、地軸の最底辺。……考えてみりゃあ妙だ、なぜそこまでする必要がある」
「……中央管理室に、オレ達に見られちゃマズいものでもあんのか」
揺れているフェネアンの肩に、シャルは悟られないよう彼の顔を覗き込んだ。口角はニィッと上がり、普段はつり上がっているその目も弧を描いている。
「え、えーっと……アン?」
「……なぁシャルよ。人間とは業が深い生き物だとは思わないかね……」
「お前何言ってんの」
「そうだよ、なんで今まで不思議に思わなかったんだ。入ったら厳罰を受けるような施設だぞ、気になるだろ。気になり過ぎるだろその中身! ただのプログラムやデータの管理施設じゃないってことだろ!」
「お前、なに言ってんのぉ!」
高笑いをしながら勢いよく立ち上がるフェネアンに、シャルも立ち上がると彼の肩に手をかけようと腕を伸ばした。それをヒョイと躱す(かわす)と、フェネアンはトレートルの脇の下に両手を運び、体を抱えあげる。
「よし、行くぞ! 中央管理室の内部に!」
「アンー!」
「良いだろ、バンボルのウイルス騒ぎは解決できて、オレは拘束され続けた研究所からやっと出られる! まさしく一石二鳥じゃねぇか!」
そう言う彼の瞳は、今までにないほどに、輝いていた。




