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リコルド  作者: 夢野 幸
二部 第三章 はっ……じめましてぇえ!
57/97

3-4

少し短めです


「――その頃の彼って、家に帰っても誰もいないし、料理なんかも出来ないし。食事も面倒だからって夜ご飯に屋台のホットドックだけとか、平気でやってたなぁ」


 目と閉じたまま、しみじみと昔を思い出しているグランに、トレートルは膝の上に座ったまま彼のことを見上げた。

 しかし不意に、体を揺らしたトレートルに、グランは目を開くと、彼が見ている方向へ顔を向けた。


『トレ坊! ……なんだ、グラン? 来てたのか』

「やぁ、メーヴェに用があってさ。遊びに来てみたよ」


 画面に映るフェネアンに緩々と手を振り、その手でトレートルの頭を撫でているグランにフェネアンはフと笑みを漏らした。


『グラン……孫を膝に抱いてるじいさんみたいになってるぞ』

「もうボクも五十過ぎですー。本当の孫はまだいないけど、息子はとっくに自立してますぅ」

『待て待て、本当の孫ってなんだよ。トレ坊を孫扱いするんじゃねぇ』


 ムッスゥと口を尖らせるグランにフェネアンは頬を掻き、苦笑した。そんなフェネアンにグランは小さく、悪戯っ子のように笑う。


「きみの子供も、見てみたいなぁ」

『オレはガキを作る気はねぇよ、オレなんかとガキを作りたいとか言う酔狂なやからもいねぇだろうし』

「出てきたらどうするの?」

『ま……考えてくれないとお前を殺して自分も死ぬ。とまで言われたら、考えてやらないこともないさ。今の時点ではアポートルの遺伝子を残すつもりはサラッサラねぇ。話がズレたが、今日はここで休む、グラン、お前はどうするんだ?』

「ボクは帰るよー、七時の飛行機―」


 今五時だからまだ大丈夫、と腕時計を見ながらつぶやくグランに、フェネアンは口角を引きつらせた。


『……ボケてんのか……? 今何時だと思ってる、お前まさか、時計を弄らずにこっちに来ただろ!』


 言われ、グランは、今度は部屋にある時計をヒョイと見上げた。……針はとっくに七時を回っており、無言のままに首をコテンと傾げる。


「あっちゃー。そう言えば少しだからって時計弄るの忘れてたなぁ」

『ったく……。どんだけ話し込んでんだよ、乗り損ねてんじゃねぇか。今日はもうオレの家に泊まればいい、トレ、鍵はあるよな』

「はい、えっと、お部屋は?」

「あ、それならいつものところを使わせてもらうよ。じゃあお言葉に甘えて」


 グランが言うと、フェネアンはヒョイと肩を竦め通信を切った。グランは立ち上がり、背伸びをするとトレートルの手を握る。


「続きは、お家で話そうか」

「はい!」


 元気良く頷くトレートルにグランは柔らかく笑い、二人は研究所を後にするのだった。

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