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少し短めです
「――その頃の彼って、家に帰っても誰もいないし、料理なんかも出来ないし。食事も面倒だからって夜ご飯に屋台のホットドックだけとか、平気でやってたなぁ」
目と閉じたまま、しみじみと昔を思い出しているグランに、トレートルは膝の上に座ったまま彼のことを見上げた。
しかし不意に、体を揺らしたトレートルに、グランは目を開くと、彼が見ている方向へ顔を向けた。
『トレ坊! ……なんだ、グラン? 来てたのか』
「やぁ、メーヴェに用があってさ。遊びに来てみたよ」
画面に映るフェネアンに緩々と手を振り、その手でトレートルの頭を撫でているグランにフェネアンはフと笑みを漏らした。
『グラン……孫を膝に抱いてるじいさんみたいになってるぞ』
「もうボクも五十過ぎですー。本当の孫はまだいないけど、息子はとっくに自立してますぅ」
『待て待て、本当の孫ってなんだよ。トレ坊を孫扱いするんじゃねぇ』
ムッスゥと口を尖らせるグランにフェネアンは頬を掻き、苦笑した。そんなフェネアンにグランは小さく、悪戯っ子のように笑う。
「きみの子供も、見てみたいなぁ」
『オレはガキを作る気はねぇよ、オレなんかとガキを作りたいとか言う酔狂な輩もいねぇだろうし』
「出てきたらどうするの?」
『ま……考えてくれないとお前を殺して自分も死ぬ。とまで言われたら、考えてやらないこともないさ。今の時点ではアポートルの遺伝子を残すつもりはサラッサラねぇ。話がズレたが、今日はここで休む、グラン、お前はどうするんだ?』
「ボクは帰るよー、七時の飛行機―」
今五時だからまだ大丈夫、と腕時計を見ながらつぶやくグランに、フェネアンは口角を引きつらせた。
『……ボケてんのか……? 今何時だと思ってる、お前まさか、時計を弄らずにこっちに来ただろ!』
言われ、グランは、今度は部屋にある時計をヒョイと見上げた。……針はとっくに七時を回っており、無言のままに首をコテンと傾げる。
「あっちゃー。そう言えば少しだからって時計弄るの忘れてたなぁ」
『ったく……。どんだけ話し込んでんだよ、乗り損ねてんじゃねぇか。今日はもうオレの家に泊まればいい、トレ、鍵はあるよな』
「はい、えっと、お部屋は?」
「あ、それならいつものところを使わせてもらうよ。じゃあお言葉に甘えて」
グランが言うと、フェネアンはヒョイと肩を竦め通信を切った。グランは立ち上がり、背伸びをするとトレートルの手を握る。
「続きは、お家で話そうか」
「はい!」
元気良く頷くトレートルにグランは柔らかく笑い、二人は研究所を後にするのだった。




