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「へい! フェネアン……あれ」
「あ、グランさん」
遠慮なく扉が開け広げられたかと思うと、グランが飛び込んできた。だがファルケ所長室にはトレートルしかおらず、彼は苦笑して頬を掻く。
「フェネアンさんは今、お外に行ってます。ごーどー企画の話し合いですか?」
「ううん、今日はメーヴェに用があって来たの。向こうの用事は終わったから、せっかくだし寄ってみたんだけど……どこに行ったか解る?」
「オイレに行くって言ってましたー。なんか、バンボルで不具合があったらしくて、フェネアンさんが勝手に修理していた物のようで」
「アッハ、一般職員時代にかな。結構弄ってたみたいだからね、どうせ歩いて行ったんだろうから帰ってくるのは早くて夜かな」
腰に手を当ててケラケラと笑い、グランはソファに腰を降ろした。トレートルはコーヒーを出しながらむず痒そうに体を動かし、対面するよう自身も腰を降ろす。
「えっと、お尋ねしたいことがあるんです」
「なぁに? どうしたんだい、トレ君」
「グランさんとフェネアンさんは、とても仲がいいなと思って……」
俯く彼に首を傾げ、グランはソファを立った。トレートルの隣に腰を沈めると彼を膝に抱えあげ、頭を撫でる。
「ボクはね、素晴らしいドライバーがどうしても欲しいんだ。何にでも変われる、それこそナイフにだってなってきたあのドライバーが」
「……どらいばー?」
グランの突然の言葉に、トレートルはキョトンと首を傾げた。
「そう、ドライバー。でも周りの人はね、そのドライバーに、プラスであれ、マイナスであれって形を押し付けちゃう。だから彼はそれに反発して、ナイフであり続けた。……本当、当時はここの所長も周りの連中も、バカだと思ったよね。いや、あの所長に至っては今でもバカだなぁと思ってる。大体、自身の昇任しか頭になかったような人だしね」
と、瞼を緩く閉じて微笑むグランに、トレートルはどこか口を尖らせた。プラプラと足を揺らし俯く。
「なんとなく、フェネアンさんを道具みたいに言われてるようで……イヤです」
「ごめんね、そんなつもりじゃないんだよ。そうだ、ボクが初めてフェネアンを知って、会った時の話をしてあげようか。今から十年近く前の話になるけどね」
コーヒーに少し口をつけ、グランは昔を思い出すよう目を閉じて口の端を柔らかく持ち上げた。




