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「――ところでフェネアン。一体どういうつもりだい?」
「あ?」
トレートルがシャルを呼びに行っている間、グランは滅法機嫌悪そうに眉を寄せながらフェネアンをジットリと見つめた。そんな目で見られる心当たりが一切ないフェネアンは煙草を指に挟み、灰を落としながら何とも言えない声を出す。
「何が? あ、悪い。今日の会議は確かに忘れてた……」
「ちがあああう! そこじゃない! そこじゃないんだよ、フェネアン!」
声を荒げるグランに、フェネアンは首を傾げていった。それにますます立腹したのだろう頬を膨らませていく彼に、付き添いでリベレから一緒に来ている職員は肩を震わせ顔を背けている。
「きみね、サッサとファルケなんかクビになってうちにおいでって! 常々言ってるのに! なんで所長なんかになっちゃうの、なんで昇任しちゃったの!」
「オレに言うなよ! セントラルのお偉いさん連中、てか総務局長に言え! そこの付き添い、さっきから震えてんのは笑い堪えてたせいか!」
牙をむくグランに目を吊り上げ返し、フルフルと震えている職員に指を着きつけると、彼は今度こそ吹き出してしまった。瞼を薄く閉じ、肩を怒らせて跳ねる前髪を震わせるフェネアンに今度はグランが笑い始め、フェネアンは頬を赤らめていく。
「そもそもオレはトレートルを再起動させて、データの入力を終えたらサッサと辞めるつもりだったんだ! なのにやっぱり辞表は突っ返してくるは他にファルケに適任がいないとかどうとかゴチャゴチャ理由つけやがって! オレは! サッサと! 辞めたいの!」
「辞められるわけないだろー。聞いてくださいよグラン所長、このバンボル馬鹿、バンボルのことになったら平気で二日、三日徹夜するんすよ」
トレートルの手を握って歩いて来るシャルにフェネアンはギラリとした眼光を向けるが、彼はヘラヘラと手を振りトレートルを膝の上に乗せるよう、フェネアンの隣に座った。ヒョイとフェネアンの胸ポケットからライターを拝借し、煙草に火をつけて笑う。
「さて、んで、本題は……?」
「お前が来るの待ってたんだよ。技術面で元々技術部のお前にも助言を貰いたくてな」
「ボクが元々研究部、フェネアンがプログラマー。シャル君と、ボクが連れてきた子が技術部だから調度いいかなと思って。セントラルの依頼で、底辺へ向かう船を改良するらしくって、船で従業員の代わりとなるバンボルを作ってほしいってさ」
「あれ、合同の企画の方は?」
「あれはボクとフェネアンで十分だよ。ね」
「おー。企画書は丸投げするわ。あとはどうにかするから、チェックを頼む」
「頼りにしてるよ」
と、コーヒーカップに手を伸ばすグランを他所にしてフェネアンは立ち上がった。何をするのだろうと一同は彼に視線を送り、それに気づいたのかフェネアンは煙草を灰皿に押し付けると頭を荒く掻く。
「どうせあいつ、部長から何の話も聞いてないんだろ。適当に書かれて再度やり直し突きつけるのも面倒くさいから説明してくるわ」
「なんだかんだ、甘いんだー」
「るっせぇ」
ニヤニヤと笑いながら茶々を入れるグランに短く返し、フェネアンは一同の視線を背後に受けながらその場を去っていくのだった。




