6-1
「――要するに、シュランゲ研究所所長が緊急会議から帰ってきたすぐに隣の研究所と意見が衝突して、こっちはこっちで好き勝手バンボルを回収しまくっているわけだ」
青年の家に着くとフェネアンは一家総出に手荒い歓迎を受けかけたが、手にしている青年を盾にして無理やり室内に入った。それから自身がファルケ研究所のプログラマーである事、そしてバンボルのウイルス騒ぎを収めるために遠出をしてきていることを半ば脅すように説明してから今この大陸で起きていることを訊きだす。つい癖で煙草に手が伸びかけたがそれをごまかし、ライターの蓋を開け閉めして遊んでいた。
「……ただ回収していっているだけか。一気に、大量に?」
「はい。どれだけ……持っていかないでくれと、止めてくれと言っても……」
「オイレが、次の日には帰ってきていた……ならここは会議があったその日、管轄は町二十か三十……で、会議が終わって九日目。……今乗り込めば間に合うな」
呟いたフェネアンに、家の人たちは彼を見つめた。相変わらずライターで遊びながら眉を寄せ、煙草を咥えるだけ咥える。
「恐らく、だが。今はバンボルを回収だけしてるんだろ。大量に回収してて、廃棄が間に合うはずがない。なら、今なら取り返せる」
「どういうことです?」
「バンボルの廃棄ってーのは少々面倒くさくてな、ただ回収してぶっ壊せばいいってもんじゃないんだ。
まずはチップの内部データを全て消去するところから始まる。データは残さない、欠片もな。それから外身だが、これもパーツごとに解体しそれから更に、ネジと鉄くず、電子信号を送る機械と徹底的に分解する」
家の主に進められ、フェネアンは煙草に火をつけた。持ってきたコンピュータに自身のタブレットを繋いで画面を彼らに見せ、廃棄までの過程を説明していく。
「そこまで分解されて初めて、バンボルの廃棄が終わる。ここまでする理由としては、研究所以外でのバンボル製作を防ぐためだ、プログラミングに必要な要項を抜かして犯罪に使われたり、ウイルスの自然発生なんかが起きたら今以上に面倒くさいことになるからな。……寝ずに作業したとしても、バンボル一体にこれらの過程を行うためには所長クラスで最低三日、一般職員で五日はかかる」
コンピュータを閉じ、タブレットをしまうとフェネアンは煙草をもみ消した。トレートルの頭をグシャリと一度撫で、立ち上がり、ポケットに手を突っ込む。
「つまりだ、奴らは集めるだけ集めて最後にその作業をしようとしている、ってわけ。研究所の中にさえ入れてしまえば一般人は手を出せなくなるからな。……一般人なら、な」
ニイッと口角を上げて笑う彼に、トレートルはキュッと白衣の端を掴んだ。だが彼はその手をはがし、家の人たちへ向けて背を押す。
「お前はここで待ってろ、チョロチョロされたら邪魔だ」
「フェネアンさん」
「なに、せっかくてめぇらのためを思って別の指示を出してやったのに……こうも見事、無下にされちまっちゃあオレの気が済まねぇし。船に乗りっぱなしで体もガチガチだ、チッと運動してくるだけさ」
言いながらテーブルの上に荷物を広げ、工具一式と煙草、職員カードをポケット突っ込んだ。それからバンボルの所持者であるという、青年とその弟の頭にポンポンと手を乗せる。
「……なに、もし間に合わなかったとしても、だ。何とかしてやる」
「……そんなこと出来るの?」
「さあな。完璧に元通り、ってわけにはいかないだろうが……やれるだけはやってやるよ」
ヒョイと肩を竦め、頭を掻き。フェネアンはその場を後にした。




