食中毒
いきなりで悪いが、俺は今非常に困った状況にある
目の前には、突然レストランで倒れて、運び込まれた患者
その横にはご主人だろうか・・壮年の男性が寄り添っている
ここまで色々な検査をしてきたが、今表れているような症状が出る病気は一切検知されなかった
後はアレルギーによる拒絶反応か食中毒な訳だが・・一向に原因物質の特定が出来ない
彼女は特にアレルギーが激しく出る体質らしく、レストランにも彼女の食べられる物以外は出さないように釘を刺していたとの事で、レストランから出された使用食材一覧に彼女のアレルゲンは無い
となると食中毒菌などの疑いな訳だが、残った食材からそういったものも検出されなかったし、更に言えば症状が出るのが早すぎた
後は毒物などが混入していた可能性だが・・そう言った物も検出されない
なんだ?
一体何が原因なんだ?
一応アレルギーと仮定して対アレルギーの処置をして峠は越えたようなので、アレルギーである事はほぼ確定だろう・・・
だが、それでは責任の所在の問題が出てくる
俺は原因を特定しなくてはいけない立場な訳だが、それが皆目見当もつかない
彼女のアレルギーの中でも、把握していない食材が原因なんだろうか?
だとすればパッチテストが必要になってくるわけだが・・・
念のため、後日使われていた食材全てでパッチテストを行ってみたが反応は無かった
これでレストランには責任が無いことになる
後日、又彼女が病院に担ぎ込まれた
症状は前回と同じという事で、前回と同じ処置が取られ、症状は改善された
何があったのかと聞いてみると、その日件のレストランからケーキを買って快気祝いに来た人が居たらしく、彼女はそれを食べたとたんに倒れたそうだ
もちろんそのケーキは、彼女は食べた事が無かった・・が、前に彼女が倒れたときもデザートのケーキを食べた直後だったらしい
必然的に、互いの材料が比較され、同じ材料がピックアップされた
小麦粉
卵
蜂蜜
生クリーム
このくらいか・・・
今回はこの4つ全てで入念に調べる
結果、真の原因は蜂蜜であった
このレストランが使っていた蜂蜜は、純国産でとある養蜂場から直接買い付けた生蜂蜜という売りだったのだが、実際には中国産の同じ花を原料とした蜂蜜であった
しかし、この中国産の蜂蜜を作ったよう豊穣の近くには蕎麦の農場もあったらしく、蜂蜜には蕎麦の花粉が混入していたという
彼女はこの「蕎麦の花粉」にアレルギー症状を引き起こされていたのだ
この事から、彼女の入院はレストランの責任として謝罪会見が行われることとなった
食品偽装というには微妙と思われる事件であったが、しかし被害者からしてみれば殺人未遂と言えなくも無い深刻な事件であった
この間から頻発している食品偽装問題の本当の意味での深刻さを描いてみました
アレルギーって本当に怖いんですよ?
ちょっと書いてある産地と違うだけでもアレルゲンが混入している事があります
うちの身内でも国産の安い豚肉では抗生物質や残留農薬でアレルギーが出ますが、アメリカ産の豚肉だと平気と言う本人以外納得の行かないアレルギーが出る事もあります
蕎麦アレルギーに至っては、蕎麦の花の蜂蜜を口に含んだだけで危篤状態になることもあると聞いた事があります
素材が同じ種類のものだから良いとかそう言う問題じゃないんです
雇い手の側が意識せずに混入しているともう原因の特定すら難しくなるという事をもっと理解してくれないと困る
「現場の理解不足」で済むような話じゃありません