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初夏のさなか(じゃなくても)感じること。

作者: 月潟 隼

 「死にたい」


 ネガティブ過ぎる口癖を吐きながら、机に突っ伏した友達の頭を、俺はゆっくりと撫でた。


 「んー知明(ともあき)はいつも頑張ってるからな。今吐き出しとけ」


 「んーいっつも悪ぃな、頼ってばっかで……」


 いつもの日向ぼっこしてる猫みたいに惚けた顔で申し訳なさそうに謝る知明。


 「気にするな」


 お前がいる日常もあと少しなんだから。心の中でポツリと呟いた。




 知明は、あと少しで海外に1年間留学することになっている。帰ってきたら留年することはないものの、みんな受験生で今みたいにバカすることもできなくなる。



 その事を、このバカは懸念しているのだ。

 本人の言葉を借りるなら、「オレのいない間みんなの時間は進むのに、オレの時間は1年間止まったまま」だとかなんとか。中二病かよ。



 ……俺からすれば、知明はいつも一緒にバカをするメンバーの中でも一歩二歩先を歩いているように見えた。中学の頃から『ドイツに行きたい』と言っていたし、惚けた顔をしながらも進路をまっすぐ見据えているように見えた。



 それこそ、悩みなどないように。


 

 「なぁ、なんでお前はドイツに行こうと思ったんだ? 」

 


 頭を撫で続けながら、俺はなんでもない調子で問う。


 知りたかった。知明が前を見据えるようになったきっかけが。俺に無いなにがコイツをそうさせたのかが。

 

 知明は驚いたように数回目を瞬かせた後、またいつもの惚けた顔に戻って、


 「んー国境が見たいからかなぁ…」


   と、答えた。


 予想の斜め上を行く回答に、今度は俺が目を瞬かせるハメになった。


 


 「日本はさ、所詮島国なんだよ。別にバカにしてる訳じゃないんだけどさ。日本人に無い国境っていう概念とか思想を手に入れたいんだ。日本にいるうちでは絶対に手に入らない。イギリスだって島国だからアレだしアメリカだと広いなぁってなってね。だからドイツなんだ」


 話された目的はあまりにも大きくて、ふわふわとしていた。


 そのふわふわとしたものを捕まえに行こうとするとは考えられない、いつもと変わらないように見える知明は、なぜだか大きく見えた。


 「じゃあ進路は? もう決まってるんだよな? それに経験を生かしてーとか、もう決まってるんだよな? 」


 「えー?まだ決まってないけど? そんなのまだ考え中だよ。向こう行って何か変わるかもしれないし、そこまで焦ることじゃないよ。うん」


 そう言って笑った姿はやっぱりいつもの知明だった。


 何歩も先に進んでいた気がした奴が急に自分と同じ場所にいるような気がして。

 不意に肩の力が抜けた気がした。

前に書いた進路二部作の続き。完結させる予定がどうしてこうなった。

明日あたりって一年以上放置してんじゃん。

タイトルも季節過ぎ去った感半端ないですが。

続くのかな…

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