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Bad Guys  作者: ブッチ
Kinky Love
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Shoot Of Estoc

 ヴィショップとレズノフ、その両者の間に流れる緊張状態を打ち砕いて動き出したのは、ヴィショップの方だった。

 手甲を填めていないレズノフの右手を狙って左手の魔弓の引き金を弾く。レズノフは前に一歩踏み込みつつ身体を左に傾け、最少の動きで魔力弾を回避。撃ち出された魔力弾はヴィショップの衣服を切り裂いて僅かに出血させるだけに留まる。

 魔力弾を躱したレズノフは腰に吊るしていたもう一本の手斧を右手で持つと、ヴィショップ目掛けて横薙ぎに振り抜く。大きく筋肉を隆起させたレズノフの剛腕に振るわれた手斧は、低く重い風切音を上げてヴィショップの身体へと迫る。

 しかし手斧の刃はヴィショップの身体に届くことはなく、鈍い音を上げてその行進を止めた。


「読めてんだよ、脳筋…!」


 レズノフの手にした手斧の刃は、ヴィショップが右手に握っている魔弓のトリガーガードによって防がれていた。

 見た目にそぐわぬ強烈な一撃に顔を顰めながらも、ヴィショップは左手の魔弓の射出口をレズノフの左肩に押し当てる。そして引き金を弾こうと人差し指に力を込めようとした。


「なっ…!?」


 だが、渾身の力を込めて引き金を弾こうとも、引き金はビクともしなかった。何故なら、レズノフの左手の指が引き金の隙間に無理矢理差し込まれていたからだ。


「野郎…っ」


 悪態を吐くヴィショップだったが、振り解く間も無く眼前のレズノフの額がヴィショップの鼻先へと迫ってきていた。

 ヴィショップは咄嗟に頭を捩ってレズノフの頭突きを避ける。しかし避けた直後、ヴィショップの左手首に激痛が奔った。

 万力で締め上げられているかのような激痛に思わず汗を浮かべながら、ヴィショップは自身の左手首へと視線を向ける。するといつの間にか魔弓から手を離していたレズノフが、ヴィショップの左手首を掴んで捻り上げているのが目に入った。


「くそっ…馬鹿力が…!」


 ヴィショップはトリガーガードで受け止めていた手斧を力任せに押し返すと、右手の魔弓をレズノフの左腕に向けて引き金を弾いた。しかし引き金を弾く直前に、レズノフはヴィショップの左手首を離して左腕を引っ込める。そして左腕を引いた勢いそのままに身体を回転させ、レズノフの頭を狙って裏拳を放った。

 ヴィショップはレズノフの放った裏拳をしゃがんで躱す。続く負傷した右脚狙いのローキックを右肘で受けると、ローキックを放ったレズノフの左脚に魔弓を押し付けて引き金を弾こうとする。が、レズノフが左足を床に戻して右脚を振り上げる方が僅かに速く、左腕を蹴り上げられたことで狙いの狂った魔力弾は部屋の壁に向かってその姿を消す。


「ぎっ…!」


 魔弓の挙げた轟音の余韻が消える間もなく、レズノフは振り上げた右脚の足裏をヴィショップの顔面に叩き込む。ガードが間に合わずにその一撃を真正面から受ける形になったヴィショップは、吹き飛ばされて一瞬宙を舞った後、背中から床に着地した。


「かえる…家に…」


 スローイングダガーを手にして、レズノフは仰向けに倒れるヴィショップへと駆け寄る。ヴィショップは顔だけを起こすと、両手の魔弓をレズノフへと向けた。

 その姿を見たレズノフが手にしていたスローイングダガーをヴィショップ目掛けて投擲した。ヴィショップは右手の魔弓の引き金を弾いてレズノフの投擲したスローイングダガーを打ち落とす。

 甲高い金属音が部屋に響き渡り、刃を砕かれたスローイングダガーが回転しながら真上に弾き上げられる。刹那、金属音の余韻を掻き消す轟音と共にヴィショップの左手の魔弓から魔力弾が撃ち出される。レズノフは腰に下げている長剣の柄を右手で握りつつ、左手の手甲でヴィショップの放った魔力弾を受け止めた。そして鞘から長剣を引き抜くと、強烈な踏み込みと共に白刃をヴィショップ目掛けて振り下ろす。


「ッ…!」


 振り下ろされた長剣を真横に転がってヴィショップは避ける。そして床を切り裂きながらヴィショップの首筋目掛けて真一文字に振り抜かれた長剣の刃を、真後ろに転がって躱し、その勢いを利用して身体を起こすと左手の魔弓をレズノフの腿に向けて撃ち込む。だが引き金を弾く直前にレズノフに右に一歩動かれ、射線から逃れられる。そして魔力弾を躱したレズノフは、ヴィショップが第二射を放つ前に彼の左腕に向かって長剣を振り下ろした。

 腕の一本など容易く切り落とせる程の威力を持った一撃を、ヴィショップは左足で床を蹴りつけて身体を右に転がすことで回避する。そして続く顔狙いの切り上げを頭を下げて躱すと、レズノフの脚目掛けて一発魔力弾を撃ち込んだ。レズノフはヴィショップの放った魔力弾を真横に動いて避けるが、それはヴィショップにとっては予想済みだった。

 ヴィショップは引き金を弾いた直後、レズノフの動きを予測して既に彼が動く方向に予測を付けており、そこに向かって魔弓の狙いを動かしていた。そして彼の予測通りにレズノフが動き、予めスライドさせておいた射線上にレズノフの右腕が入ってきた瞬間、すぐさまヴィショップは引き金を弾いた。


「駄目か…!」


 だがレズノフはそれすらも、左手に填めた手甲で防いで見せた。

 ヴィショップの表情が歯痒さに歪む。この瞬間、攻撃を防いだ左腕が邪魔になって、レズノフが長剣を握る右腕を振る際には一瞬のタイムラグを生むのが避けられなくなっていた。そしてレズノフはヴィショップの攻撃を避けるために横に跳んだ直後であり、攻撃と同じく次の回避行動を取るのにも一瞬のタイムラグが生じていた。

 つまりこの瞬間、ヴィショップの目の前にはほんの一瞬とはいえ、彼が待ち望んだ完全に無防備なレズノフの姿があったのだ。

 だがそれを目の前にしても、ヴィショップは引き金を弾くことが出来なかった。何故なら、既に彼の手に握られている二挺の魔弓のシリンダーには、未使用の魔弾が残っていなかったからだ。

 追い求めたチャンスは、何も出来ないヴィショップの目の前を横切って姿を消した。それは一度でも瞬きをすれば見逃してしまうような僅かな時間ではあったが、ヴィショップにはその何倍、何十倍もの長さの時が過ぎ去ったように感じられた。

 そしてその空白の時間が姿を消した後は、再び暴威の嵐が舞い戻ってきた。


「神導魔法白式…!」


 顔目掛けて突き出してきた長剣の切っ先を、顔を捩ってヴィショップは躱す。躱し切れずに切り裂かれた頬から血が噴き出すが、その痛みをはっきりと感じ取る暇も無くヴィショップの左の肩口目掛けて、レズノフが長剣を斜めに切り下す。


「第六十ッ…八録…ッ!」


 左手の魔弓のホルスター部分、右手の魔弓のトリガーガード部分でヴィショップはその一撃を受ける。既にヴィショップの魔弓が弾切れを起こしていることを見切っているらしく、レズノフはそのまま押し込むような真似はせずに次撃の一直線の振り下ろしを放つべく長剣を振り上げた。


「グラス・シルト!」


 ヴィショップが詠唱していた呪文を全て唱え終え、それによって彼とレズノフを隔てるようにして半透明の壁が生成されたのは、レズノフが長剣を振り下ろした直後のことだった。

 レズノフの振るった長剣は火花を上げて、ヴィショップの前に出現した半透明の壁に防がれる。その反動でレズノフは後ろに下がると、長剣を下げて自身とヴィショップとを隔てる半透明の壁を見つめる。

 ヴィショップが神導魔法で生み出した半透明の壁は部屋の端まで届き、二人を完全に分断していた。ヴィショップは荒い息遣いで、一度うつ伏せに身体を転がしてから床に両手を突いて立ち上がりレズノフに向き直る。


(マズイな…レズノフの動きが速すぎる…)


 ヴィショップには、今までの経験や相手の気配、身体の動きといった様々な情報を統合して、相手の動きを先読み出来るという特技がある。しかし、いくら先読みが出来たところで、身体が相手の動きに対応出来なければ避けることは出来ず意味が無い。今のヴィショップはレズノフ相手に、まさにそのような状況に追い込まれていた。


(ククッ…都市伝説染みた存在に祭り上げられるだけのことはある、って訳か。脚を潰したのは失敗だったな)


 ヴィショップは出血の止まらない右脚に視線を落とす。恐らくは両脚が揃っていても、ヴィショップがレズノフと渡り合うのはかなり骨が折れることだっただろう。ヴィショップの側に武器の圧倒的なアドバンテージがある状態であっても。

 にも関わらず、今のヴィショップに使えるのは左脚のみ。右脚が使い物にならない以上、移動はもちろんのこと防御や攻撃の手数もかなり制限されることとなる。それに加えて右脚からの出血も酷く、このまままともにレズノフに付き合っていれば、遠からずレズノフの凶刃はヴィショップの命に届き得るのは確実と言えた。

 その為ヴィショップは魔法で生み出した壁に守られている間に考え付く必要があった。魔力弾をレズノフの致命傷になり得ない位置に撃ち込む術を。


(こちらが撃ち込んできた際に奴がとる反応は……武器の投擲、回避、手甲によるガードの三つ…)


 装填されている魔弾を使い切った両手の魔弓のシリンダーを開き、ヴィショップは使用済みの魔弾を床へと落とす。木製の魔力弾と木の床がぶつかって乾いた音が室内の空気を震わせた。


(武器の投擲、回避…このどちらを先に奴が行うかは分からない…だが手甲によるガード行うのは常に、ガードした後攻撃に転じれる場合…)


 クイックローダーをシリンダーに押し込んで魔弾を装填する。装填作業を二挺分行うと、ヴィショップは使い終わったクイックローダーを投げ捨て、魔弓を振ってシリンダーを閉じた。


(……これでいくか)


 ヴィショップは心中でそう呟いて思考を締めくくると、レズノフに背中を向け、右脚を引きずりながら部屋の奥へと歩き出す。

 それを見たレズノフが手にしている長剣を振り上げて、半透明の壁に叩き付け始める。どうやらヴィショップが自分をこの場に閉じ込めたまま逃げようとしていると考えたらしかった。


「…馬鹿が。それが出来たらこんな苦労してねぇんだよ」


 背後から喧しいぐらいに鳴り響く金属音を聞いたヴィショップは、レズノフが考えたことを悟って微笑を浮かべる。そして懐から手巻きの煙草を取り出して口に咥えて火を灯すと、シューレの邸宅の玄関へと通じる扉の横に背中を預けつつ煙を吐き出した。

 ヴィショップの口から吐き出された紫煙が彼の視界を僅かな間白く染め上げる。ヴィショップは自分の履き出した煙が空気の中にその姿を消し、半透明の壁越しに長剣を振り上げるレズノフの姿が目に入ってくると、両手に手にした魔弓をゆっくりと持ち上げた。


「そろそろハーフタイムも終わりにするか。2ラウンド目だ、来い。ノックアウトしてやるよ、デカブツ」


 煙草を咥えたままヴィショップが軽口を飛ばす。その直後、両者の間を隔てていた半透明の壁がその姿を消した。

 半透明の壁が姿を消した瞬間、レズノフは右手で長剣を構えヴィショップ目掛けて突っ込んでくる。ヴィショップは自分目掛けて真っ直ぐに突っ込んでくるレズノフの方に魔弓の照準を合わせて引き金を弾いた。

 爆音を上げて深紅の魔力弾が撃ち出される。撃ち出された魔力弾はヴィショップの狙い通りまっすぐレズノフの右肩に突き進むも、レズノフは左にステップを踏むことで難無く魔力弾を躱した。


「まずは回避…!」


 呟くと同時にヴィショップは右手の魔弓の引き金を弾く。しかしその照準はレズノフではなく、彼が左手で抜き取り間髪入れずに投擲してきたスローイングダガーへと向けられていた。


「投擲…!」


 射出口から飛び出した魔力弾が空中でレズノフの投擲したスローイングダガーを穿つ。だがレズノフは怯むことなく床を蹴りつけヴィショップへの距離を詰める。木の幹を連想させる彼の太い右脚は古びた床を容易く抉る程の力を発揮し、それによって生み出された瞬発力はあともう一度同じことを繰り返せばヴィショップを捉えることの出来る位置にまでレズノフの身体を運んでいた。

 一気に距離を詰めてくるレズノフへとヴィショップは右手の魔弓の矛先を向ける。後撃ち込むことが出来るのは一度だけ。後ろは壁で、それを外せば逃げ道など無い。先程までのナイフや手斧などとは段違いの重さを持つ長剣の一撃なら、受け止めることも出来ないだろう。

 ヴィショップが生きるにせよ死ぬにせよ、次に放つ一撃が彼の放つ最後の一撃となるのは間違いなかった。


「そして、ガード…!」


 ヴィショップが引き金にかけた人差し指に力を込める。対するレズノフは左腕の筋肉を怒張させつつ填めている手甲を盾のように身体の前方に差し出した。

 狙いを定め、ヴィショップが引き金を弾く。轟音を従えて撃ち出された魔力弾はヴィショップの狙いに従って真っ直ぐ飛んでいく。その先にはレズノフが左腕に填めている手甲があった。

 魔力弾の発射音が鳴り響いた刹那、甲高い金属音がそれを打ち消した。ヴィショップの放った魔力弾は、レズノフが填めている手甲のど真ん中に撃ち込まれていた。ヴィショップの攻撃は最後まで、レズノフの手甲による防御を掻い潜ることは出来なかったのだ。

 にも関わらず、長剣を持ったレズノフが最後の一歩を踏み出して距離を詰め、ヴィショップに切りかかることはなかった。彼は長剣を手にし手甲を填めた左腕を前に差し出した格好のまま、その場に立ち尽くしていた。


「……あ?」


 左腕に奔った痛みに、思わず意味の伴わない言葉がレズノフの口から漏れる。レズノフはヴィショップへと向けていた視線をゆっくりと下げると、自身の左腕へと視線を下げた。

 音を立てて、レズノフの左腕から流れ出た血が床に落ちる。レズノフの填めている手甲の表面は流れ出た血で濡れていた。そして手甲を濡らしている血は、ヴィショップが放った魔力弾を受け止めた場所に空いた風穴から流れ出ていた。

 手甲に空いた穴、そしてそこから流れ出る血を見た瞬間、レズノフは腰が抜けたかのように膝を床に突いた。


「…ふぅ」


 レズノフが膝を突いたのを見て、レズノフは安堵の溜息を漏らす。床に膝を突いたレズノフは、両腕を力無く垂らして俯いていたが、ヴィショップが歩き出すとその足音に反応して顔を上げた。


「よぅ、ジイサン。頭と…ついでに腕が痛ェんだが、こいつは一体どういうことだァ…?」

「憶えてないのかよ。ったく、めでてぇ造りの頭してんな、てめぇは」


 顔を上げたレズノフの右目には先程まで失われていた精気が戻ってきていた。それで薬の効果が切れたことを確認したヴィショップは手にしていた二挺の魔弓をホルスターに収めると、レズノフの発した質問の内容に呆れ混じりの声を上げつつ、懐から煙草を取り出して一本放ってやった。

 レズノフはヴィショップが放り投げた煙草をキャッチして口に咥える。そしてヴィショップから火を灯してもらうと、味わいながら煙を肺に吸い込み、そして吐き出した。


「そうじゃねェよ、ジイサン。俺が今まで何やってたかは、ちゃんと憶えてる。俺が訊いてんのは、どうやってこいつをブチ抜いたのか、って話さ」


 レズノフは左腕から手甲を外して、穴の開いた部分をヴィショップに見せつける。ヴィショップは咥えていた煙草を床に捨てて足裏で踏みにじり、彼の質問に答えた。


「前に二発そいつには魔力弾を撃ち込んでた。その撃ち込んだ二発の内、片方の着弾点にもう一発撃ち込んでやったんだよ。その手甲の強度は大したもんだが、所詮は手甲だ。同じ場所に二発も撃ち込まれて耐えきれる程の耐久性は無いと踏んだのさ」

「ヒュー…。大したモンだなァ、ジイサン。少しは見直したぜ」


 口笛を吹くレズノフの表情には嘘偽りの無い驚きが浮かんでいた。

 外せば次は無いというプレッシャーの中、レズノフの放つ攻撃を捌きつつ、たった数ミリ程度の目標を一発で撃ち抜いてみせる。それはまさしく神業であり、魔技と呼ばれるに相応しい所業だった。

 しかしそれを成し遂げた本人であるヴィショップの顔には達成感など微塵も浮かんでいなかった。彼の顔に浮かんでいるのは疲れと、レズノフに対する辟易だけだった。


「俺を殺しかけといて出てくる言葉がそれだけか?」

「何だよ、褒めてるからいいじゃねぇかァ?」

「チッ、宣言通りタマの一つでも潰しとけばよかったぜ」


 ヴィショップは悪態を吐いて座り込むと、自分のコートの袖を力任せに破く。そしてそれを自分の右脚の太腿に巻きつけて止血を試みる。


「ジイサン、俺にもくれよ」

「ノースリーブのコートなんて珍妙な恰好で出歩く趣味は無いんでね。自前のを使え」


 流れ出た血で真っ赤なった左腕を振って、レズノフがヴィショップのもう片方のコートの袖を顎で指し示す。太腿を切れ端できつく結んだヴィショップが右手の中指を立ててその要求を断ると、レズノフは肩を竦めて咥えている煙草を右手で口元から離し、左腕の傷口に押し当てた。


「…無茶苦茶だな、てめぇは」

「聞き飽きたよ」


 肉の焼ける音が薄らと鼻孔をくすぐる中、ヴィショップは、傷口に煙草を押し当てているのに微かに顔をしかめているだけのレズノフに視線を向けて、引きつった笑みを浮かべる。それに対してレズノフは何てこと無さそうな声音で返事を返し、煙草を傷口から離し火を吹き消してから部屋の端へと放り捨てた。


「で、これからどうすんだ、ジイサン。強姦魔の野郎は居ねェ。お目当ての男はくたばってる。おまけにジイサンは片足を、俺は片手を使い物にならなくしちまってる」


 倒れたままのブルゾイの死体、そしてヴィショップの右脚と自身の左腕に視線を動かしつつレズノフはこれからとるべき行動をヴィショップに訊ねる。

 ヴィショップは被っていたカウボーイハットを取って真横に置く、そして無造作に伸ばされた手入れのされていない黒髪をガシガシと掻き毟った後、諦めたような口調でレズノフの質問に答えた。


「仕方ねぇ。魔法でヤハドを呼び出して迎えに来てもらうか」

「ヒャハハッ、情けねぇなァ。強姦魔風情に、お迎えが必要な程痛めつけられちまうとはよ。なァ、ジイサン」

「うるせぇ」


 ヴィショップは気怠そうに答えると、ヤハドと連絡を取るべく神導魔法の詠唱を始めたのだった。

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