第47話
第47話 春香の願い
突然聞かれた僕が戸惑っていると、春香は更に言葉を続けた。
「私昨日由紀ちゃんから聞いちゃったの。拓が私の知らない所で色々な事をしている事を。勿論この前由紀ちゃんとデートに行ったことも。」
由紀が話した・・。別に隠していた訳ではないが、正直春香には知られたくなかった。もし知られたら、春香はショックを受けるに違いないと思っていたから。でも今の彼女は少しだけ違うような気がした。何か決意がこもったような目をしている。
「そうなんだ・・。」
「これもその時に聞いた話なんだけど、由紀ちゃんにどちらか選べないって言ったらしいじゃない。」
「そうだよ。確かに僕はそう答えた。二人とも好きだから、どちらか選べないって。」
「そんなんで良いの?」
「どういう意味?」
「私はもうすぐ居なくなるのに、そんなん中途半端な気持ちのままでいいのかって聞いたの。」
「それは・・。でも、春香がいなくなっても簡単に忘れられないし、由紀を選んだら春香は絶対・・。」
「その後の話は私は関係しないでしょ!私は寧ろ拓が由紀ちゃんの気持ちに答えてあげるべきだと思う。」
「え?」
「だって拓にいつまでも現実から逃げて欲しくないもん。私が居ない世界から。しっかりと由紀ちゃんの気持ちに答えて、前に進んでほしいの。」
「春香・・。」
そうだった。春香はもうすぐ居なくなる。僕は居なくなった彼女の影をずっと追い続けるのか?いや、それは違う。春香の言う通り僕は前に進まなければならない。それが彼女の願いならばなおさらだ。僕にはこの後沢山やる事がある。それから逃げちゃだめなんだ!
「ねえ拓、もし由紀ちゃんと付き合う事になっても、私の事は忘れないで居てくれるよね?」
「そんなの当たり前だよ。僕も健も由紀も絶対に忘れる事はないよ。」
「そう・・。じゃあしっかりとお別れを言えそうな気がする。」
笑顔でそう言った彼女に、僕は思わずドキッとしながらも、一度離れたその手をもう一度握りこう言った。
「じゃあ行こう春香。」
「うん。」
僕なりの答えが出た。後は春香としっかり別れを言うだけ。ただそれだけ・・。
春香が僕らの目の前から居なくなる時間まで、残り二時間。
第48話へ続く




