第37話
第37話 出ない涙
春香の話の後、重い気分のまま僕達は解散となった。
「どうしてだよ、まだ一緒に居られると思っていたのに。春香の笑顔をもっと見られると思ったのに、逆に泣かせてしまった。でも、夏休みが終わったら、もう会えないなんてそんなの誰だって・・。」
嫌に決まっている!
なのに何なんだろう。この気持ちは?別れるのは悲しい事なのに、どうして涙が出ないんだろう。元々春香が死んでいるから、いつかは別れが来るって分かっていたから?だから涙が出てこないのか・・。
「分からないよ・・。」
一人で歩く夜道は、いつもより寂しさが増していた・・。
・・・・・・
翌日の天気はあいにくの大雨で、僕は自分の部屋でずっと引きこもりながら、春香の事を考えていた。
「今日を抜いてあと四日・・。どうすればいいのかな・・。」
しかも今日からしばらくは天気が良くないらしい。最終日は大丈夫そうだけど・・。
「はぁ~。」
何度目かの深いため息をつく。何かをしてあげたいけど、なかなか見つからない。どうすれば・・。
「あれ?電話がきてる。」
ベットでボーッと天井を眺めていると、突然携帯が鳴り出した。
「もしもし?」
『もしもし?拓?』
電話は由紀からだった。
「どうしたの?由紀。」
『拓・・、私達これからどうすればいいの?もう嫌だ・・誰かが居なくなるのは嫌だよ・・。』
何の前置きもなく由紀は突然、電話の向こう側で泣き出していた。やっぱり春香の事で由紀も考えること沢山あって、どうすればいいのか分からなくなったんだ・・。
「僕だってそれは嫌だよ。春香は元々死んでいたとはいえ、瑞樹と同じように目の前から居なくなるのは嫌だよ・・。けど。」
『けど?』
これは本心だった。瑞樹のように僕達の目の前で一人欠けるのは嫌だ。でも一晩、一睡もせずに考え続けていたら、ある答えが浮かんでいた。だからあと何日か数えていたのだ。
「けどそれを最終日まで引きずっていたら、春香はどう思う?」
『あ。』
「春香自身が悲しみの感情のまま消えてしまう。そんなの僕は一番嫌な事だよ。その状態で消えていったら、また戻ってきてしまうかもしれない。そんなのいつまでも繰り返していたら、春香は一生成仏できないと思う。だからさ、今はまだ悲しいかもしれないけど、この現実をしっかり受け止めて最後は笑顔で見送ってあげないと。」
『拓・・。』
「まあ、僕自身受け止められているか定かじゃないけどね。」
そうやって話を終わらした後、少し由紀と会話をしたのだが、電話したての時より口調は明るくなっていた。
はあ、良かった・・。
夏休み終了まであと4日 第38話へ続く




