第21話
第21話 受け止める余裕
「春香、君は一体何者なの?」
息を切らしながら言う僕に、春香はさすがに驚いていた。
「な、何を急に言い出すのよ?私は普通の人間だから何者でないわよ。全く意味が分からないよ拓。」
そうは言いながらも、春香は動揺していた。やっぱりなにかある・・。
「突然の話かもしれない。でも、ちゃんと君に聞いてもらいたいんだ。僕の話を・・。」
「拓の話?」
「うん。」
僕は彼女が知っているであろう事実を一から話した。本当は話すべきじゃなかったかもしれない。でも、僕自身がこの事実を受け止めるにはそうするしかなかった・・。春香は既にこの世に存在しないという事実を・・。
十分後
「・・・・。」
僕が知った事を全て話した後、春香はずっと黙っていた。やっぱり本当なのかな・・。
「ねえ拓・・。」
「何?」
「その話さ、旅行の時にちゃんとするから、その時まで待ってくれない?」
「え?」
「多分話さなきゃいけない事、沢山あるから・・。整理させて・・。」
「・・分かった。」
という訳でその時は春香と別れたのだが、僕は帰り際に見てしまった。彼女が泣いているのを・・。
・・・・・
話は再び元に戻る。僕は今、乗り越えなければならない現実に直面している。彼女の正体という名の現実に・・。
「じゃあ春香はやっぱり・・。」
「うん・・。」
再び長い沈黙・・。彼女自身なかなか口に出しにくいのだろう。自分が何者か、それを話すのは決して簡単な事では無い。それを承知で僕は彼女に尋ねたのだ。それから少しして、彼女は口を開いた。
「私は・・、本当は二年前に死んでるの、交通事故で・・。中学校に入学して新しい友達が出来ると思っていたのに・・。楽しい生活が待っていると信じてたのに・・。」
やっと開かれた口から語られる彼女の真実。それをしっかり受け止められるだけの余裕が僕の心には多分無い。でも、受け止めなくちゃ・・。受け止めて前に進まなきゃ・・。
「事故で死んだ私は、後悔だけがずっと残っていた。もっと遊びたい、もっと沢山の事を知りたい。ずっとそんな事を念じているうちに、いつの間にか私は実体化してこの世界に戻ってきていたの。全く不思議な話だよね。念じてるだけで、まるで生き返ったかのように、この世界に戻ってくるんだもん。」
「普通はあり得ない話だけどね。」
「さすがに戻ってきた時はさすがに焦ったけど、時間が経つとそれに慣れてきちゃって。でも、ある時気付いたの。戻ってきたけど、私には友達が居ないんだって。寂しくなった。せっかく戻ってきたのにこれじゃあ意味が無いって・・。でもその時浮かんだのが、幼稚園の頃からずっと好きだった子だった。」
「それは誰?」
春香が何を言いたいのか何となく分かるが、あえて尋ねてみた。
「それは、拓の事よ・・。」
「え?僕の事?」
「うん・・。」
突然の告白に僕は言葉を失ってしまった。
第22話へ続く




