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転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?  作者: 紫 和春


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第12話 男子会

 どうにかして無事に午前中の授業を切り抜けた長屋。昼休みへと突入する。

 持参したおにぎりをバッグから取り出したところで、またもや女子生徒たちに取り囲まれた。


「長屋君、一緒にお昼食べよー!」

「あっずるい、私が先に声かけようとしたのに!」

「まーまー。ここは公平に、日替わりで一緒に食べるってのはどう?」


 このように、長屋をめぐってちょっとした小競り合いが発生する。


(さすがにこの状況はマズい……。このままじゃ平穏な日常を過ごす前に、女子に命を狙われる可能性がある……! これを回避するには、俺からお断りを入れるしか……!)


 そう考えた長屋が、拒否する決心を固めた時だった。

 校内放送のマイクが入る音がする。


『あーあー、2年1組の長屋陽介君。至急、2階の特別委員会室に来るように』


 男の声での呼び出しだった。これは何かあるのではないかと思い、長屋は持ってきた弁当を持って席を立つ。


「ご、ごめんなさい。呼び出し食らったのでちょっと行ってきます……」


 そういって長屋は、女子生徒の波をかき分けて教室を出る。

 そこではたと思い出す。


「まだ校内の案内されてないんだっけ……」


 このままでは校内で迷子になる可能性がある。


「いや、そんなに大きな校舎じゃないから、ローラーすればたどり着けるかもしれない……」


 そう考えたものの、それでも初めて来た場所で過信は禁物であろう。

 長屋は恥を忍んで教室に戻り、一人で小さな弁当を食べている黒須に声をかける。


「黒須さん、今大丈夫ですか……?」

「ふぁ、ふぁいっ」


 食べている途中で声をかけてしまったので、もごもごとした状態で返事する黒須。

 口の中の物を飲み込んで、返事をした。


「なんでしょうか……?」

「その、特別委員会室ってどこですか?」

「特別委員会室は、階段で1階に降りて、左に曲がった廊下の奥にあります」

「ありがとうございます。では……」


 そそくさと教室を出た長屋は、とりあえず階段を降りる。そして降りた先の廊下を左に曲がって、突き当りまで早歩きで移動する。

 突き当りの教室が見えてきた。その扉の上には「特別委員会室」のプレートが掲げられている。

 その扉の前に立ち、一呼吸置いた。


「ふぅー……。よし」


 36世紀(この世界)で初めて会う同年代の同性。21世紀となんら変わっていないことを祈るほかない。

 長屋は扉をノックしようとした。その瞬間、先に扉が開く。長屋は思わずビクッと体が跳ねる。

 そこにいたのは、金髪の男子であった。


「君が長屋陽介だね? ささ、入っちゃって~」


 長屋の返答を待たずに、金髪男子は肩を掴んで特別委員会室へと無理やり入室させる。

 委員会室の中には、他に二人の男子が座っていた。


「ようこそ、和光高校男子会へ」


 座っていた男子の片方、赤髪の男子生徒がそのように言う。

 一方で青髪の男子生徒は、目を瞑ったまま腕を組んでいた。


「えっと……」

「おや、同年代の男子を見るのは初めてだったかな?」

「とりあえず、自己紹介はしておかないとな」


 そういって赤髪の男子生徒が立ち上がる。


「俺は和光高校男子会の会長、3年の野沢(あきら)だ。よろしく」


 そういって野沢は握手をしようと手を出してくる。


「あっ、よろしくお願いします」


 長屋は野沢の手を取って握手する。


「僕は中下来栖。こう見えて1年生でーす!」


 金髪の生徒━━中下が無理やり長屋の手を取ってぶんぶん握手する。


「ど、どうも……」

「そして、そっちの寡黙な男は2年の塩谷道久だ」


 野沢が青髪の生徒である塩谷を紹介する。

 一応、長屋は塩谷に対して頭を下げた。


「さて、昼食がまだだったな。せっかくなので、この4人で食べようじゃないか」


 3人は席について、それぞれ弁当を取り出す。長屋も空いていた席に申し訳なさそうに座った。


「それで、長屋はどうしてこの学校に? 転入時期も始業式から何日か経っているが、何か理由はあるのか?」


 野沢がなかなか鋭い質問をしてくる。


「そ、それは……」


 長屋は脳内で、今まで説明してきた嘘の理由を思い出す。


「自分は……、つい最近まで病院で眠っていたらしくて、しかも記憶が失われているんです。記憶を取り戻すのにも時間がかかるし、そもそも身分が分からない人間だったので、ならいっそのこと新しい人間として生活したほうがいいんじゃないかって病院の先生に言われて……。で、準備とかしてたら今日転入することになりました」

「ほう、記憶喪失ってやつか」

「えー? ヨウちゃん可哀相~」

「よ、ヨウちゃん?」


 中下が変なあだ名を付けたようで、長屋は聞き返す。


「陽介の陽でヨウちゃん」

「はぁ……」


 相手のことを拒否出来ない長屋、ここでも人見知りとの相乗効果で否定することができなかった。


「それは災難だな。まぁ、いずれふとした瞬間に思い出すだろうさ」


 そういって野沢は弁当を食べる。長屋も、おにぎりを頬張るのだった。

 そんな彼らを見て、長屋は一つの疑問が思い浮かぶ。


「そういえば、この学校には男子生徒が7人いるって聞いたんですが……?」

「あぁ。そいつらは今頃自分の彼女とイチャイチャしてるだろう」

「はぁ……」

「でも僕にも彼女二人いるもんね~」

「ぶっ!」


 中下のカミングアウトで、長屋は思わず噴きだしそうになった。


「あれ? 僕何かおかしなこと言った?」

「いや……、二股はいけないと思って……」

「いまどき男子が二股なんて、普通のことだぞ?」


 野沢が解説し、それに塩谷も頷いて同意する。


(えぇ……? やっぱ21世紀の常識は通用しないわ……)


 そのことをよく実感した長屋であった。

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