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転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?  作者: 紫 和春


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第1話 召喚

 眩しい光が瞼の上から降り注ぐ。意識は朦朧としていて、夢と現実の区別がはっきりと分からないような感じだ。


『心拍……基準値より低い……ありません』

『呼吸も浅く……です。酸素マスク……』

『瞳孔の反応あり……生きています』

『念のため集中治……』


 そんな声が聞こえてくる。病院のような場所なのだろうか。


『被検体NM-002……研究所の管理下に入ります』


 その声が聞こえたとき、彼は一度意識を手放す。


——


 次に彼が目を覚ましたのは、西日にかかってきた太陽の光が差し込む真っ白な病室だった。


「おお、知らない天井だ」


 思わず感嘆の声が出る。某有名アニメ作品でおなじみのセリフだ。視界の端にはいくつもの点滴のチューブが見える。

 彼は体を起こそうとするが、うまく体に力が入らないことに気が付く。


「なんだ……これ……」


 どうにか体を動かそうと数分ほど格闘していると、部屋の扉が開かれて誰かが入ってくる。


「どうやら起きたようね」


 女性の医者のようだ。隣には看護師の女性もいる。


「あ、あなたは……?」

「発声に問題はなさそうね。少し問診に付き合ってくれるかしら?」


 彼は今の状況がどうなっているのか分からないが、とにかく女医の問診に付き合うほかないだろう。

 そんな彼の内心は置いといて、女医は問診を始める。


「あなたの名前は?」

「長屋陽介」

「年齢は?」

「16歳」

「生年月日は?」

「201O年4月19日」

「身長と体重は?」

「確か……170センチ、72キロ」

「一応聞くけど、男性よね?」

「はい」


 カルテに書かれているであろう基本的な情報を聞かれる彼——長屋。女医はそれをタブレットに記入しているようだ。


「何か既往歴はあるかしら?」

「いえ、特には……」

「アレルギーなどの疾患もなし?」

「一応ないです」

「今、体のどこかが痛むとか、違和感を感じることはあるかしら?」

「力が入らないですね……」

「なるほどね」


 そのままタブレットに記入していく女医。


「基本的なことは分かったわ。ありがとう」


 その時、初めてタブレットから視線が外れ、長屋に向けられる。


「私のことを紹介するわ。私は馬渕。医者であり、ここの所長を兼任しているわ」

「所長……」


 長屋はその言葉に引っかかった。長屋は疑問を馬渕にぶつける。


「ここは病院じゃないんですか?」

「そうよ。あなた、以前の記憶はあるかしら?」

「以前の記憶……」


 そういって長屋は過去の記憶を思い出そうとする。しかし、記憶に霧がかかったように、ぼんやりとしか思い出せなかった。


「うまく……思い出せないです」

「なるほど、記憶障害の可能性あり……と」


 馬渕はこの情報をタブレットに入力する。


「やはり再構成した肉体では、脳に障害が残る可能性があるわね……」

「再構成した肉体……?」


 また引っかかる言葉が出てきて、長屋は思わずその言葉を繰り返す。


「そうね。あなたにいつまでも隠しているのは筋じゃないわね」


 そういって馬渕は長屋の目を見る。


「今から話すことは、嘘でもドッキリでもないわ。すべて事実よ。落ち着いて聞いてちょうだい」

「はぁ……」

「あなたは今、3534年……つまり36世紀の世界にいるわ」

「……え?」


 長屋の脳は、一瞬理解することを拒否した。


「36世紀って……どういうことですか?」

「そのままの意味よ。あなたがいた時代から1500年以上経過しているわ」

「嘘だ……。じゃあこの病室は? 窓の外に見える景色は?」


 そういって長屋は窓の外を見る。そこには樹木があり、鳥は羽ばたき、春のような陽気の天気に、21世紀と何も変わらない街並みが見えていた。


「残念ですが、これは間違いようのない事実です。この世界は、21世紀からほとんど変わらず、停滞したまま時間が過ぎ去った状態なの」

「そんな……」

「そしてあなたは、そんな21世紀から召喚された過去の人間よ」


 衝撃の事実に、長屋は打ちひしがれる。思わずうまく力の入らない手で頭を抱えてしまい、現状の理解と打破を試みる。


「そ、そうだ。これはドッキリですよね? じゃないと説明がつかない……」

「さっきも言ったと思うけど、これはドッキリじゃないの。嘘でもない。すべて現実で、事実なのよ」

「じゃ、じゃあ夢か何かの……」

「それでもないわ」

「そしたら……自分は交通事故か何かで死んで、本当に異世界転生したとか……」

「それは言い得て妙ね。状況としてはそれが一番近いわ」


 そこまで言われてしまい、長屋はいよいよ虚ろな目になってしまう。


「俺は、結局死んだんですか?」

「おそらくそうよ。1500年も前の情報なんて残っていないもの、いつどうやって死んだのかなんて分かりようがないわ」

「でも俺は生きている……」

「生きているの定義にもよるでしょうけど」


 馬渕はタブレットの時計を確認する。


「そろそろ会議の時間になるわ。申し訳ないけど、お話はここまでね。この続きは明日以降にしましょう」


 馬渕は病室から出ていく。一緒に入ってきた看護師は残って、長屋の点滴の手入れをしていた。

 長屋は天井をぼんやりと見上げる。


「過去の人間……、古代人かぁ」


 漠然とした不安が、長屋の心を覆い隠していた。

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