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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第九十一話:パーティの再評価

 翌朝、エルトリアの宿の食堂で、俺たちは朝食を囲んでいた。

 昨夜の祝勝会の賑わいとは打って変わって、静かな朝の空気が流れている。だが、その静けさの中には、昨夜までの自分たちとは違う、確かな「地足の良さ」があった。

「ステファニー、体調は戻ったか?」

 シエラさんが尋ねると、ステファニーさんは一瞬、自分の手元を見つめてから、小さく息を吸って顔を上げた。

「……はい。少し、怖かったですけど……でも、もう大丈夫です。魔力も、ほとんど回復しました〜」

 その声には、以前のような震えはなかった。

「救済を、誰かに任せるんじゃなくて……私の光で、届ける。それが、私の戦い方なんだって。……ようやく、そう思えるようになりました〜」

 ステファニーさんの瞳には、自分という存在への静かな受容があった。

 レイナさんが、パンを齧りながらその様子を横目で見て、短く鼻を鳴らす。そのまま彼女は、隣でスープを飲んでいたアルトに視線を移した。

「アルト。あんたの魔力供給……少なくとも、あの土壇場で私という最大火力を御してみせたのは、事実よ」

「え……レイナさん?」

「……勘違いしないで。あの状況なら、という話よ。でも、戦場を自分の盤面として動かすその目は……認めざるを得ないわね」

 レイナさんはそれ以上言わず、視線を逸らした。称賛というよりは、対等な戦力としての「検分」に近い。

 アルトは一瞬言葉を詰まらせ、眼鏡のブリッジを押し上げながら、小さく、噛みしめるように頷いた。

 俺は、その光景を眩しく感じながら、自分の胸に手を当てた。

 これまで俺は、どこかで全力を出すことを恐れていた。自分が前に出すぎて誰かの役割を奪うことを、あるいは自分が目立つことで平穏が壊れることを。

 (……まだ、怖い。でも、もう逃げない。仲間を守るために、俺は全力で道を抉じ開けていい。それが、俺にしかできない役割なんだ)

 守るための盾ではなく、勝利を掴み取るための前衛。その自覚が、俺の心に重い楔を打ち込んだ。

「ライト、いい面構えになったな」

 シエラさんが、俺の心中を見透かしたように言った。

「お前の《輝閃》は、今回の勝利における要の一つだ。誇りに思え、ライト。お前はもう、背中を守られるだけの立場じゃない」

「……はい。次はもっと、鋭く踏み込みます」

 シエラさんは満足げに頷くと、視線を落とした。

「……だが、ネクロアの残した言葉が、砂のように胸に沈んでいる」

 食卓に、重い沈黙が降りた。

「『"あの方"の観測』……ですね」

 アルトが、沈黙を切り裂くように声を落とした。

「シエラさん、もしあれが何かの『試験』に類するものだったとしたら……僕たちは合格という名の手札を、敵に晒してしまったことになります」

 アルトの言葉に、俺は息を呑んだ。勝利の意味が、一瞬で反転する。

「僕たちの連携を、敵は把握した。次はそれを踏まえた上で、僕たちの"穴"を突きに来るはずです」

 勝ったからこそ、次は自分たちの「勝ち筋」を知る敵が来る。

 残酷なまでの戦術的予測に、空気が一瞬で凍りついた。

「……上等じゃない」

 レイナさんが不敵に笑い、杖の柄を指先で弾いた。

「観測だろうが何だろうが、その予想すらまとめて壊してやるわ。私たちは、昨日と同じ場所に立ち止まってなんていないもの」

「はい〜。次も、みんなで一緒なら、もっと強い光が出せる気がします〜」

 ステファニーさんの言葉に、俺も強く頷いた。

「次の敵が誰であろうと、俺たちの連携を上回らせはしません。必ず、勝ちましょう」

 シエラさんが、俺たちを見渡して静かに笑った。

「……ああ。お前たちがいれば、どんな深淵から来る敵にも、負ける気がしない」

 窓から差し込む朝日は、俺たちがこれから向かう過酷な道程を、その険しさごと、鮮明に描き出していた。

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