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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第八十八話:トドメの一撃

 黄金の光が、夜空を塗り替えた。

 ステファニーさんの杖から解き放たれた《廻生アポカリプス・リバース》が、戦場のすべてを包み込む。それは、この場に満ちた膨大な死の魔力そのものを燃料として燃え上がる、一度きりの奇跡。

 生命の顕現――死を拒絶し、魂を解放する、究極の浄化魔法。

 光の奔流は、まず膝をつくタイラント・ゾンビの巨体を飲み込んだ。

「グ……オ……オ……」

 苦痛の咆哮は、瞬時に安らかな吐息へと変わる。死の魔力で無理やり繋ぎ止められていた腐肉が灰へと還り、呪縛から解き放たれた魂が星屑のように空へ溶けていく。

 それは破壊ではなく、あまりに慈悲深い「救済」の光景だった。

 そして――光は、上空のネクロアをも逃さない。

『何……これは……ッ!? 浄化だと……この私を……ッ!!』

 ネクロアを包む紫の魔力が、生命の奔流に押し流され、霧散していく。

 光に焼かれ、千切れ飛ぶ紫のマント。その下に露わになったのは、生身の肉体ではなかった。無数の怨霊が絡み合い、擬似的に「個」の形を保っていた死霊の集合体。

『私は……私はまだ……"あの方"の……観測を……続け……クロノ……スよ……』

 言葉が未完のまま、ネクロアという存在を繋ぎ止めていた核が砕け散る。

 紫の悪意は黄金の輝きに浄化され、この戦場におけるネクロアという「観測体」は、完全にその機能を喪失した。

 戦場に、深い沈黙が訪れる。

 光が徐々に薄れていく中、ステファニーさんは杖を支えにすることさえできず、その場に崩れ落ちた。

「勝った……の〜……?」

 震える声。頬を伝う涙。

 タイラントも、ネクロアの影も、もうどこにもいない。

 アルトは魔力を使い果たし、荒い息をつきながら地面に倒れ伏している。俺も、膝の震えを必死に抑えて彼女の隣に並んだ。

 シエラさんが、重い足取りでステファニーさんの元へと歩み寄る。傷だらけの手を伸ばし、彼女の頭を優しく、誇らしげに撫でた。

「ああ。お前が倒したんだ、ステファニー」

 その一言で、ステファニーさんのせきを切ったように涙が溢れ出した。

「私……私、本当に……みんなを、守れたんですね〜……!」

「ああ。お前の光が、俺たちの命を繋いだ。お前はもう、守られるだけの存在じゃない。俺たちの背中を預けられる、立派な仲間だ」

 シエラさんの言葉に、レイナさんが静かに微笑み、アルトが泥だらけの顔で小さく親指を立てる。

「ステファニーさん……あなたの癒し、最高に……眩しかったわ」

 レイナさんがそっと付け加える。

 俺は、震える手でステファニーさんの手を取った。

「ステファニーさん。……ありがとうございます。俺たちの命を繋いでくれて」

 ――この光を、この仲間たちを、俺は絶対に無駄にしない。

 掌から伝わる彼女の震えを、俺は力強く受け止めた。

「みんな……ありがとう〜……。私、もう怖くないです〜……」

 その笑顔は、もはや怯える少女のものではなかった。

 夜空には、闇を追い払った星々が輝き始めている。

「……終わったな、みんな」

 俺が呟くと、シエラさんが剣を鞘に納め、空を見上げた。

「ああ。だが、これは始まりだ。この光があれば、俺たちはどこまでだって行ける」

 俺たちは、勝利の余韻と心地よい疲労感に包まれながら、ゆっくりと立ち上がった。

 ネクロアという巨大な闇を退けた俺たちの前には、新しい朝への道が続いていた。

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