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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第八十六話:ライトの突破

 ステファニーさんの《活泉》が、タイラント・ゾンビの巨体を蝕み続けていた。かつて無敵を誇った超再生は完全に沈黙し、漆黒の外殻は剥がれ落ち、山のような巨体は地に膝をついている。

 だが、上空のネクロアは依然として健在だった。俺たちの消耗を嘲笑うかのように、高みから死の残滓を見下ろしている。

(今だ。ステファニーさんが奴の切り札を無力化した今こそ、本体を叩く唯一の好機!)

 俺は剣を握りしめ、その紫の瞳を見据えた。

「シエラさん、レイナさん、アルト! 俺が本体へ突っ込みます!」

「何!? 無茶だライト、奴はまだ空中にいるぞ!」

 シエラさんの制止の声。だが、俺の決意は揺るがなかった。

「大丈夫です。……俺には、レイナさんに教わったこの『槍』がある!」

 俺は地を蹴った。ネクロアの紫の瞳が、俺の動きを捉える。その口元に、冷徹な嘲笑が浮かんだ。

『愚かな。単機突撃など、死を望む行為に等しい』

 ネクロアが杖を振るう。タイラント・ゾンビと、残存するアンデッドたちが一斉に俺の進路を塞ぐ盾となった。

 だが、地上戦で無敵を誇るタイラントを盾にする前提で組まれた迎撃陣は、ステファニーさんの癒しに焼かれ、タイラントが膝をついたことで致命的な「隙」を晒していた。空からの強襲を想定しきれていない、不完全な包囲網。

「《輝剣纏装シャイン・ブレード》!」

 剣を光で覆い、俺は一陣の風となってアンデッドの群れを切り裂いた。タイラントの巨躯の脇を駆け抜け、奴の膝を踏み台にして、俺は空中へと跳躍する。

 当然、物理的な跳躍だけではネクロアの高度には届かない。だが、俺は空中で剣を正眼に構え、先端に意識を集中させた。

(思い出すんだ、あの特訓を。面で叩くんじゃない。点で貫く……針の穴を通すようなイメージで、光を凝縮しろ!)

 剣に纏わせた光が、先端の一点に収束していく。細く、鋭く。魔族に対する絶対的な特効を秘めた、俺の『槍』。

「貫け……! 《輝閃:シャイン・ランス》!!」

 剣を突き出すと同時に、槍状に圧縮された光が射出された。

 空間を切り裂く白銀の閃光。それはネクロアが慌てて展開した多層防御陣を、まるで紙細工のように貫通していく。特訓で三つの標的を貫いた時以上の、鋭い手応え。

『……ッ! 馬鹿な、迎撃用の結界を突破しただと――!?』

 ネクロアが焦りに顔を歪めるが、もう遅い。命中点で閃光が激しく弾け、ネクロアの防御を内側から強引に抉り開けた。

 その光の軌跡を道標にするように、俺は空中で《輝剣纏装》の光をさらに強め、防御が崩れたネクロアの懐へと肉薄した。

「逃がさない……ここで崩すッ!」

 光の刃が、無防備になったネクロアのローブを、そしてその肩口を深々と斬り込む。

 鮮血が、空中に舞った。

『グアアアアアッ!?』

 初めて響く、魔族の生の悲鳴。それは、観測者としての冷静さを完全に失った、純粋な苦痛の叫びだった。

 ネクロアの身体が、空中で大きくよろめく。その紫の瞳に、驚愕と――初めて、俺という存在に対する明確な警戒が浮かんでいた。

『貴様……貴様ごときが、この私に……傷を……!』

「ごときで悪かったな! でも、俺たちは諦めない! お前が何度襲ってきても、俺たちは立ち向かう!」

 俺は着地し、剣を構え直した。ネクロアの肩から流れる不気味な血が、地面に滴り落ちる。

 訓練場でレイナさんに頭を下げたあの日の選択が、今、勝利への流れを引き寄せた。

 シエラさんが剣を振り上げる。

「いいぞ、ライト! 奴は傷ついた! 畳み掛けるぞ!」

「ええ! 私の教えた通りね、ライト!」

 レイナさんが誇らしげに笑い、火魔法を構える。ステファニーさんは杖を握りしめ、俺たちの背中を支える光を絶やさない。

 ネクロアは肩を押さえながら俺たちを睨みつけた。だが、その瞳にはもはや余裕はない。

『……認めよう。貴様らは、想定以上の“イレギュラー”だ』

 戦況は、完全に逆転した。

 ステファニーさんの覚醒が切り札を封じ、俺の《輝閃》が本体に消えない「脅威」を刻みつけた。

 俺は仲間たちと共に、ネクロアを見据えた。

「ここからだ、ネクロア! お前の計画は、俺たちが終わらせる!」

 黄金の光が、闇を焼き始めていた。

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