表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/156

第八十話:紫の死霊召喚士の登場

 エルトリア北方の森。

 そこは月明かりすら届かない、深い闇の底だった。俺たちは不気味な紫色の光が揺らめく場所へと、一歩ずつ神経を削りながら近づいていた。空気があまりに冷たい。生命の営みを拒絶する「死」そのものの静寂が、肌にまとわりつく。

「気をつけろ。……奴らが近いぞ」

 シエラさんの鋭い警告に、俺は剣の柄を強く握りしめた。隣を歩くステファニーさんの呼吸が浅い。ギルドで告げられた「標的はお前だ」という言葉が、彼女の小さな肩に重くのしかかっているのが分かった。

 その時、前方の闇から紫色の燐光が揺らめきながら近づいてきた。現れたのは、ボロボロのローブを纏った骸骨たちの集団。その群れのさらに奥から、一際濃密な紫の魔力が噴出した。

 紫色のマントを翻し、顔を仮面で覆った人影。その周囲には、触れるものすべてを腐食させるような禍々しいオーラが渦巻いている。

「……やはりあの時の……迷宮で見た紫マントの魔族……!」

 シエラさんの呟きに応えるように、魔族はゆっくりと杖を振り上げた。仮面の奥の深紅の瞳が俺たちを舐めるように動き――そして、その視線は明確な意図を持って、背後のステファニーさんを射抜いた。

『……ククッ。……清廉なる癒しの魔力を感じるぞ。……そこの娘、貴様の魂こそ、我が研究の完成にこれ以上ない素材だ』

「……っ、ひいっ……!」

 ステファニーさんが短く悲鳴を上げる。ネクロアの視線は、獲物を品定めする捕食者のそれだった。

『我が名はネクロア。魔王三幹部の一角にして、死霊を統べる者。……さあ娘よ。貴様のその魔力があれば、神をも屠る不死の王を完成させられる。貴様の絶望こそが、最高のスパイスとなるのだ』

 ネクロアが杖を掲げると、アンデッドたちの視線が一斉にステファニーさんへと向いた。《ネクロ・アンプリファイ》によって異様に膨れ上がった軍勢が、統率された動きで、彼女一人を目掛けて牙を剥く。

「させないわよ!《流星炎舞メテオ・ストライク》!」

 レイナさんの放った火球が炸裂する。しかし、焼け焦げた骨は紫の魔力ですぐに再生していく。

「再生のたびに魔力が薄れている……! だが、削り切る前にこちらの消耗が限界に達するぞ。狙いは完全にステファニーさんだ、守りを固めろ!」

 アルトが叫ぶ中、シエラさんが一瞬で間合いを詰め、黒剣でネクロアの仮面を叩き割った。

 砕け散った破片の下から現れたのは、不気味に乾燥した「純白の頭蓋骨」だった。

「が、骸骨……?」

 俺は思わず声を上げた。人間じゃない。あれは人の形を真似ただけの、醜悪な怪物だ。

「そうだ、ライト! ありゃあ人じゃねえ。……遠慮なくブチのめせ! ステファニーを守るぞ!」

 シエラさんの声が、俺の足を一歩前へ出させた。一瞬だけ胸の奥が軋んだが、目の前の怪物がステファニーさんを「素材」と呼んだ時、俺の中の恐怖は、彼女を守るための怒りへと変わった。

(人間じゃないなら……ステファニーさんを守るために、俺は全力で戦える!)

 俺の内に眠る光属性の魔力が、剣へと激しく集約されていく。

「《光剣付与》!」

 光を纏った一閃が、ネクロアの骨の胸を深く切り裂いた。

『……ぐっ!? 聖なる光だと……貴様、邪魔をするな!』

 ネクロアが苛立ち、深紅の瞳を俺に固定した。

『……くどい羽虫め。ならば、その前に邪魔者の魔力を枯らしておくとしよう』

 ネクロアが杖を突き出す。放たれたのは、紫色の触手ソウル・ドレイン

 俺は咄嗟に身構えたが、その速さは予想を超えていた。触手が俺の体を蛇のように包み込み、魔力が内側から強引に引き抜かれる。全身の力が抜け、膝が折れそうになる。

「ライトさん! だめです、私なんかのために……っ!」

 泣きそうなステファニーさんの声。けれど、彼女の手からは温かな光《活泉》が溢れ、俺の消耗を必死に繋ぎ止めていた。

「大丈夫です……ステファニーさんは、俺が守る。絶対に、奴になんか渡さない!」

 俺は歯を食いしばり、魔力を吸われながらも光の剣を構え直した。

 三幹部ネクロア。その冷徹な計算を、俺は力ずくで叩き潰してやる。

「行くぞ、ネクロア!」

 俺は光の残像を引いて、再びネクロアへと肉薄する。

 生死を懸けた本当の激突が、今、始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ