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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第七十七話:ステファニーの不安

 昨日の凄まじい「光と闇」の衝突から一夜明け、エルトリアの朝は静かだった。

 旧訓練場に集まった俺たちは、誰もが疲弊の色を隠せない。魔力の枯渇以上に、あの相性の絶望さを目の当たりにした精神的な消耗が大きかった。

「……よし、今日は基礎訓練だ」

 シエラさんが、俺たちの顔色を見て短く告げた。

「昨日の実験で魔力を使いすぎた。今日は魔力回路の回復に専念しろ。ステファニー、お前もだ」

「……はい〜」

 ステファニーさんの返事は、いつもの伸びやかなトーンではなかった。どこか心ここにあらずといった様子で、昼の訓練中も、彼女は俺たちの後ろで杖を抱えたままだった。

 俯いて地面を見つめる時間が、昨日から明らかに長かった。

「ステファニー、あんた無理してるでしょ」

 休憩中、真っ先に気づいたのはレイナさんだった。

「……え〜? そんなことありませんよ〜」

「嘘言いなさい。顔に書いてあるわよ」

 レイナさんは腕を組み、いつもの鋭い口調で核心を突く。

「あんたの笑顔、硬いのよ。言いなさい、何が不安なの?」

 ステファニーさんはしばらく沈黙した後、絞り出すように呟いた。

「……私、攻撃スキルがありません〜。昨日みたいに、二人がボロボロになるまで戦っているのに……私はただ、傷ついた後を癒やすことしかできない。足を引っ張ってるんじゃないかって、そう思っちゃうんです〜……」

「馬鹿ね」

 レイナさんは鼻で笑い、そのまま彼女を真っ直ぐに見据えた。

「あんたがいないと、私は本気が出せない。私の命を預けてるんだから、勝手に卑屈にならないで。……あんたの回復しんらいを背負ってるから、私は無茶ができるのよ」

「レイナさん……」

 一歩引いた場所で魔力を練っていたアルトも、無機質な声で付け加える。

「僕の演算の核は、ステファニーさんの『意志』です。あなたが揺らぐと、僕も揺らぐ。……だから、信じててください。僕はあなたを信じていますから」

 仲間たちの不器用な励ましに、ステファニーさんは少しだけ頬を緩めた。だが、その瞳の奥にはまだ、拭いきれない無力感がおりのように残っていた。

 ――その夜。

 宿の食堂にステファニーの姿はなく、シエラさんが一人で彼女の部屋を訪ねた。

「ステファニー。お前、『強さ』ってのは敵を倒す数だと思ってんのか?」

 ベッドに腰掛ける彼女の隣に、シエラさんはどっかと座り込む。

「お前は、攻撃スキルがないことを気にしてる。だがな、お前の役割は『生かす』ことだ。誰よりも先に死線を見極め、仲間が戻る場所を守り抜く。それは、俺のような前衛にも、レイナのような砲台にもできない『特権』なんだよ」

「でも〜……私一人では、何もできないんです〜」

「当たり前だ。一人で何でもできる奴なんて、このパーティにはいねえ。アルトとの《永護》だってそうだ。それは『弱さ』じゃねえ。誰かと一緒だからこそ、一人では届かない領域まで強くなれるって証拠だ」

 シエラさんは、ステファニーの柔らかな髪をくしゃりと撫でた。

その手つきは乱暴だが、確かに温かかった。

「泣くな。お前は俺たちの『背骨』だ。自信を持って、その杖を握ってろ」

 翌朝。

 訓練場に現れたステファニーさんは、昨日とは違う、晴れやかな笑顔で俺たちの前に立った。

「おはようございます〜! 今日もバッチリ守りますからね〜!」

 その声には、本物の熱が宿っていた。

 もちろん、攻撃スキルがないことへの不安がすべて消えたわけではない。自分自身の在り方を完全に肯定するには、まだ時間が必要だろう。

 それでも。

 仲間から託された「命の重さ」を再確認した彼女の瞳には、今の自分にできる全力を尽くそうという、強い決意が灯っていた。

 俺も、その笑顔に負けないように剣を握り直す。

ステファニーさんが自分の役割を見つけたように、俺も自分の光を信じなければ。

次は、俺の番だ。

 俺が、彼女の守りの中で、自分の光を導き出す番だ。

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