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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第七十五話:ライトとレイナの「衝突連携」の再構築

 翌日。

 俺が目を覚ましたとき、昨日の《影との対話》の影響で体は鉛のように重かった。

 だが、このままベッドで寝ているわけにはいかない。

「……ライトさん、大丈夫ですか?」

 部屋の隅で、ステファニーさんが心配そうに俺を見ていた。

「レイナさんは……?」

「朝からアルトさんと訓練場に。レイナさん、独りで闇を練り直していましたが……上手くいかないみたいで、アルトさんを呼びに行ったんです」

 自尊心の高い彼女が、大嫌いな効率主義のアルトを頼った。その事実が、彼女が背負った覚悟の重さを物語っていた。

 俺はふらつく足で、訓練場へと向かった。

 訓練場では、レイナとアルトが険しい顔で資料を広げていた。

「……だから、光の魔力を直接闇に触れさせるんじゃなくて、間に『緩衝材』を挟むのよ」

「その構造を作るのが、僕の《二重連結デュアル・コネクト》というわけですね」

 アルトが俺に気づき、静かに頷く。

「ライトさん。昨日の失敗の原因は、あなたの光がレイナさんの闇を『拒絶の燃料』にしたことです。今日は、僕の魔力で『中立的な演算結界』を二人の間に架けます」

 シエラさんが少し離れた場所で、腕を組んで俺を見た。

「お前、まだ不安か?」

「……はい。また、傷つけるかもと思うと」

「レイナもアルトも、お前のために本気になってる。だったら、お前も本気で応えろ」

 シエラさんの激励に、俺は拳を握りしめ、二人の間に入った。

「アルト、始めて」

 レイナの合図で、アルトが複雑な魔法陣を展開した。

「《二重連結》――演算結界、展開」

 俺は剣に光を纏わせ、結界へと流し込む。

 昨日の暴走が嘘のように、光と闇はアルトの結界の中で美しい螺旋を描き始めた。

「……すごい。共存してる」

 ステファニーさんの歓声が聞こえる。光と闇が互いを食らうことなく、一定の距離を保って回転している。成功か、と思った。

 だが、俺の心には、昨日とは違う奇妙な違和感があった。

(……流されている?)

 傷つけるのが怖い。だから俺は、アルトの制御にすべてを任せ、光を「差し出す」だけになっていた。

「……っ、光の波形が減衰している!?」

 アルトが声を上げた。

「ライトさん、もっと主導権を握ってください! あなたが光を『委ねすぎて』いるせいで、結界のバランスがレイナさんの闇に傾き始めている!」

 魔法陣が黒く染まっていく。

 闇が強すぎるのではない。俺の光に「意志」がないせいで、アルトの天秤が闇の方へ一方的に崩れ落ちていたのだ。

「ダメだ、侵食が止まらない! 二人分の波形制御だけでは、この反応を抑え込めない……!」

 アルトの顔に冷や汗が流れる。

「光と闇の出力を等価にする『第三の意志』が……中核に足りない!」

 その瞬間、シエラさんが動いた。

「そこまでだ!」

 シエラさんは抜剣するなり、暴走しかけた魔法陣の中央へ迷わず踏み込み、その莫大な圧力ごと術式を物理的に断ち切った。

 強引に魔力が散らされ、訓練場に静寂が戻る。

 アルトは地面に膝をつき、唇を噛んだ。

「……僕の設計ミスです。二人の魔力を繋ぐだけでは、この『衝突』は完成しない。演算の軸となる要素が、もう一つ欠けていました」

 レイナもまた、震える手で杖を握りしめていた。

「……今のままじゃ、ダメなのね。光と闇を並べるだけじゃ、この壁は越えられない……」

 絶望ではない。だが、今の自分たちに「足りない何か」の大きさに、レイナは唇を噛み締めていた。

 俺は、散っていった光の残滓を見つめていた。

(俺が、ただ守られていただけだ……)

 レイナに救われようとし、アルトに制御されようとした。

 俺自身が、俺の光を信じて主導しなければ、誰の助けがあってもこの盾は完成しない。

「今日はここまでだ」

 シエラさんが剣を納め、冷徹に、だがどこか慈悲深く言い放つ。

「お前ら、進むべき方向は見えたはずだ。これ以上は命に関わる。各自、頭を冷やせ」

 重い沈黙が訓練場を支配する。

 だが、俺の隣で立ち上がったレイナの瞳には、まだ消えない炎が燃えていた。

 そして俺も――

 自分の不甲斐なさを噛み締めながら、剣を強く握り直した。

 次は俺が、この光の舵を執る。

 アルトの演算が追いつかないほどの、確かな意志を持って。

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