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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第七十四話:ライトとレイナの「衝突」

 エルトリア郊外の訓練場。

 夕陽が地面を赤く染める中、俺とレイナさんは向かい合っていた。

 だが――何度やっても、うまくいかなかった。

 俺の《光壁ライト・シールド》は、レイナさんの火力を受け止める前に、必ず崩れる。触れる直前で、防御魔法が勝手に壊れていく。

 まるで――俺の無意識が、相手に干渉することを拒絶しているみたいに。

「中断だ!」

 シエラさんの一喝で魔力が霧散し、重い沈黙が落ちる。

「……何やってるの。やる気がないなら、最初から言いなさいよ」

 冷たいレイナさんの声。俺は言い返せず、地面に崩れ落ちた。剣を握る手の震えが止まらない。

「ライト」

 シエラさんが俺の前に立ち、逃げ場を塞ぐように低く響く声を出す。

「前にも言ったはずだ。お前が『傷つけたくない』って理由で手を抜くせいで、結果として仲間を死なせる。それがお前の言う『優しさ』か?」

 その言葉に、レイナさんの表情が強張った。

「……傷つけたくない? どういうことよ、シエラ」

「こいつは前世の模擬戦で、全力の制御を誤って仲間を大怪我させてるんだ。それ以来、本気でぶつかることを……相手を壊してしまうことを、病的に怖がってやがる」

 空気が凍りついた。レイナさんは言葉を失ったまま、俺の震える手を見つめていた。

「……馬鹿じゃないの」

 その声に棘はなかった。彼女は杖を握り直し、強い覚悟を瞳に宿して俺を真っ直ぐに見据えた。

「私たちが戦ってるのは、お互いを守るためでしょ。あんたの手加減は――ただの侮辱よ」

「シエラ。私の闇属性・特級魔法《影との対話アブソリュート・シャドウ》を使わせなさい。これで、解決できないか探りたいの」

「光と闇だぞ。下手をすればライトの精神が闇に呑まれる」

「正反対だからこそよ! ライトが恐れている『壊れる相手』じゃない。私の『闇』と、直接向き合わせるの」

 シエラさんは苦渋の表情で、二人から距離を取った。

「……わかった。だが無理はするな。もしもの時は俺が力ずくで止める」

 レイナさんが深く息を吸い、俺の足元を杖で指し示した。

「闇よ、全てを映せ。――《影との対話アブソリュート・シャドウ》!」

 地面から漆黒の闇が滲み出し、俺の意識を引きずり込む。冷たい闇の中、レイナさんの声が響く。

「見せなさいよ、ライト。あんたを縛ってる影を。全部、受け止めてやるから!」

 その瞬間、闇の奥底で俺の「光」が激しく暴走した。かつて俺が傷つけてしまった少女の泣き叫ぶ声が、光の奔流となって溢れ出す。

「魔力反応が異常です!」

 遠くでアルトの叫び声が聞こえる。

「ライトさんの光が、レイナさんの闇を『燃料』にして肥大化している! これは拒絶だ……! 自分の加害性を見られる恐怖から、無意識がレイナさんを『敵』と誤認して、全力で排除しようとしている!」

「なっ……! レイナ、解除しろ!」

「できない……!」

 シエラさんが割って入ろうとするが、強烈な精神連結の余波に弾かれる。今無理に介入すれば、二人の精神が壊れる。Sランクの彼女ですら、見守るしかない極限状態。

「私の意志を通さず、光が闇を食ってる……制御が――っ!」

 レイナさんの悲鳴。俺の光が、彼女の闇を無理やり引き裂き、臨界点を超えて爆ぜた。

 轟音と衝撃。

 俺は地面に叩きつけられ、意識が遠のく中、涙に濡れたレイナさんの声を聞いた。

「……ごめん……あんたを、独りきりにして……」

――――

 目を覚ましたのは、宿の部屋だった。

「……ライト」

 隣には、目が赤いレイナさんが座っていた。

「……ごめん」

「謝るのは、私よ。あんたをあんな目に遭わせて」

 レイナさんは俯いた後、強く顔を上げた。

「でも……私は諦めない。あんたのトラウマも、私に見せたくない弱さも、全部知った。それでも――私はあんたを、その影の中に置いておかない」

 彼女は杖を握りしめた。

「必ず、この連携を成功させる。アルトの演算も使うわ。屈辱だけど、あんたの震えを止めるためなら効率を取る」

 扉の前で、彼女は一度だけ振り返る。

「……ライト。あんたは、本当は誰よりも強いわよ。私がそれを証明してあげる」

 扉が閉まった後、俺は天井を見つめた。

 問題は何も解決していない。俺の光は、助けようとしてくれた仲間を殺しかけた。

 それでも。彼女の瞳に宿った炎を、信じてみたいと思った。

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