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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第七十二話:初の同種複合魔法(風×風)

 翌朝。

 訓練場に集まった俺たちの間には、昨日からの重苦しい空気が残っていた。

 レイナさんはステファニーさんと目を合わせられず、不自然に視線を逸らしている。ステファニーさんもまた、何か言いたげに口を噤んでいた。

 その沈黙を破ったのは、アルトだった。

「レイナさん。……見つけました。あなたの魔法を、誰にも汚させずに増幅する方法」

 レイナさんが、弾かれたように顔を上げる。

「……本当に?」

「はい。試させてください」

 アルトの瞳にある確信に、レイナさんは一瞬だけ迷いを見せたが、やがて小さく頷いて中央へ進み出た。

 シエラさんが無言で訓練用の標的を設置する。

 アルトは、レイナさんの隣で静かに魔力を練り始めた。

「今までは、火に火を足そうとして失敗しました。だから、火そのものには触れません。……レイナさんの火を加速させるためだけの『道』を作ります。……二重連結デュアル・コネクト

 アルトが両手を広げると、彼の周囲に二つの魔法陣が同時に展開された。

 それを見たシエラさんの目が、驚愕に細められる。

「……おいおい。同じ属性を同時に、それも寸分の狂いもなく同期させてやがるのか? 互いの魔力が干渉して霧散しちまうはずだぞ、普通は」

 シエラさんの言葉を裏付けるように、アルトの額には大粒の汗が浮かんでいた。超速演算。頭が焼けるような負荷をかけながら、彼は二つの風を一つに「揃えて」いた。

「レイナさん、お願いします!」

「ええ……っ!《流星炎舞メテオ・ストライク》!」

 放たれた火球に対し、アルトが二つの風を放つ。

 それは単なる風の塊ではなかった。

 二つの《風の刃》が標的までの間に「真空の筒」を作り出し、レイナさんの火球を内側へ強烈に吸い込み、加速させたのだ。

 ――瞬間。

 オレンジ色の火が、風の加速を受けて白銀の閃光へと変貌した。

 ドォォォォォンッ!!

 訓練場全体が震えるほどの轟音。

 標的は粉々に砕け散るどころか、蒸発して消え去っていた。背後の壁には巨大な亀裂が走り、防護用の結界が耳障りな音を立てて軋んでいる。

「……嘘でしょ。私の魔法が、あんな……」

 レイナさんの声が震えていた。

 シエラさんは、もはや笑うしかなかった。

「初級二つで、上級の弾速をここまで引き上げたのか。……坊主、お前の『同種複合』……とんでもねえな」

 アルトは肩で息をしながら、レイナさんに向かって微笑んだ。

「……計算通りです。レイナさんの魔法を、汚さずに済みました」

 レイナさんは、標的のあった残骸と、目の前の少年を交互に見つめていた。

 やがて、彼女は顔を赤らめてそっぽを向く。

「……認めるわよ。あんたの応用力、認めるわ。……でも! これで満足なんてしないでよ。もっと……もっと私を強くしなさいよね」

 言葉は強かったが、昨日までの刺々しさは消えていた。

 アルトは、穏やかに頷く。

「はい。これから、もっと磨いていきましょう」

 沈黙が訪れる。

 レイナさんは、少し離れた場所に立っていたステファニーさんの方を、ちらりと見た。

 そして、逃げるように視線を逸らしながらも、絞り出すように口を開く。

「……ステファニー。……悪かったわね、昨日。私、どうかしてたわ」

 ステファニーさんの瞳に、一瞬で光が戻った。

「レイナちゃん〜……! 大丈夫ですよ〜、嬉しいです〜……!」

 駆け寄ろうとするステファニーさんを、レイナさんは「来ないでよ、暑苦しいわね!」と不器用にはねのける。だが、その口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。

 シエラさんが、満足げに俺の肩を叩く。

「よし。これで攻撃の核も決まった。残るは――」

 シエラさんの視線が、ステファニーさんへと向けられた。

 攻撃の進化を見たステファニーさんが、どこか決意に満ちた表情でアルトの手を見つめている。

 俺は、鞘に納めた剣の重みを感じながら、これからの自分たちの姿を想像していた。

 アルトが示した「可能性」は、俺たちをさらなる高みへと連れて行く。

 レイナさんは、もう俺たちの視線から逃げるように走ることはなかった。

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