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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第七話:剣術と光属性の特訓開始

 山間部での訓練が始まって、三日目の朝。


俺は、いつもの訓練場所で剣を構えていた。


不安定な地形での訓練は、想像以上に過酷だ。足元は常に傾き、石や木の根が行く手を阻む。


だが――。


シエラさんの容赦ない指導のおかげで、俺の体は少しずつ環境に順応し始めていた。石の位置を足裏で感じ取り、木を避けるために剣の軌道を自然に修正できる。


王宮の完璧に整えられた床でしか振れなかった俺の剣は、確実に「実戦の剣」へと変わりつつあった。


「おう、だいぶ良くなってきたな。足の運びも柔軟になってきた」


「ありがとうございます」


そう答えると、シエラさんは一歩前に出て、俺を見据えた。


「だが、まだ足りねえ」


空気が、少しだけ引き締まる。


「今日からは、剣術に加えて――お前の本質的な力。光属性の基礎魔法も一緒に鍛える」


「光属性の……魔法ですか?」


思わず、聞き返していた。


前世では、もちろん魔法なんて使えなかった。この世界に召喚され、勇者として光属性の適性があるとは言われてきたが、実際に使った記憶はほとんどない。


「お前は勇者として召喚された。光属性の適性は高いはずだ」


そう言うと、シエラさんは手のひらに光の球を浮かべてみせた。


夕焼けよりも眩しい、純粋な光の塊。


「魔王を討つには、剣だけじゃ限界がある。魔法は、剣と組み合わせてこそ真価を発揮する」


「……わかりました」


俺は剣を下ろし、話を聞く姿勢を取る。


「まずは基礎だ。魔力を集中させて、光を生み出せ」


手のひらの光が消える。


「呼吸を整えろ。落ち着いて、自分の中にある“力”を感じるんだ」


深く息を吸い、ゆっくり吐き出す。


体の奥で、温かい何かが流れている感覚。それが魔力なのだと、直感的に理解した。


――手のひらに集める。


「……っ!」


微かな光が、灯った。


蛍のように弱々しいが、確かに俺の力だ。


「おう、いいぞ。初めてにしては上出来だな」


シエラさんが、満足そうに頷く。


「だが、まだ弱い。魔物相手じゃ目くらましにもならねえ」


「はい……」


言われるまでもない。さっき見た光とは、比べ物にならなかった。


「焦るな。光属性は精神状態に左右されやすい。力を込めすぎるな。流し込むイメージだ」


肩を叩かれる。


「今日は、この光を強くする。溢れるくらいになるまで、何度も繰り返せ」


俺は頷き、何度も手のひらに光を灯した。


最初は微かだった光が、少しずつ、確実に明るくなっていく。


「いいぞ。その調子だ。集中しろ。一点に集めるんだ」


午前中いっぱいを費やし、ついに掌全体を覆うほどの光を生み出せるようになった。


「よし、そこまでだ。よくやった、ライト」


光を消す。


「次は、その光を剣に纏わせる」


「剣に……?」


「そうだ。剣に光属性の魔力を通せ。斬撃の威力も、魔物への効果も段違いになる」


剣を構え、魔力を意識する。


手のひらから、刀身へ。


「……っ」


剣が、淡く光った。


「できたな。だが――すぐ消えた。短剣みてえだ」


苦笑しながらも、シエラさんは続ける。


「今やったのが、光初級《光剣付与ライト・エンチャント》だ。だが――今のままじゃ使えねえ。慣れだ。何度も繰り返せ。体に覚えさせろ」


俺は黙って、訓練を続けた。


光はすぐに消えなくなり、徐々に維持できる時間も延びていく。


「次は、そのまま剣を振れ」


「振る、ですか?」


「光を纏ったまま動かせ。それが実戦だ」


剣を振る。


斬撃の軌道に、光の尾が流れた。


「……すごい」


思わず、呟いていた。


だが――。


「甘い」


即座に、指摘が飛ぶ。


「光に意識を取られて、剣が鈍ってる。昨日教えた軌道修正も忘れてるぞ」


胸が、ちくりと痛む。


確かに、体が硬くなっていた。


「剣と魔法を同時に扱うのは簡単じゃねえ。だが、それができなきゃ強くなれねえ」


真剣な目で、告げられる。


「基本こそ、攻撃の土台だ。魔法を纏わせることで、お前の“攻撃を避ける癖”を上書きする」


「型を崩すな。光を纏え!」


「はい!」


そこからの訓練は、さらに厳しかった。


失敗しては、やり直す。その繰り返し。


「集中しろ!」「光を維持しろ!」「剣を止めるな!」


だが、不思議と心は折れなかった。


――この人は、本気で俺を強くしようとしている。


そう分かっていたから。


そして、ついに。


光を纏わせたまま、滑らかに剣を振り抜けた。


「おう、できたな! よくやった、ライト」


「ありがとうございます……!」


息を切らしながら、笑みがこぼれる。


「だが、これはまだ基礎だ。明日からは、光を維持したまま不安定な地形を移動する」


「はい!」


夜。


焚き火を囲み、食事を取る。


「今日の訓練、きつかったです。でも……楽しかった」


「当たり前だ。成長してる証拠だ」


その言葉に、胸が温かくなる。


テントに戻り、横になる。


剣術と光魔法。


それを組み合わせることで、俺は確実に前へ進んでいる。


この力が、過去の恐怖を上書きしてくれると信じて――俺は眠りについた。

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