表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/157

第六十三話:アルトの初任務

 訓練場を後にして、俺たちは再びギルドのロビーに戻ってきた。

 シエラさんは迷いのない足取りで受付カウンターへと向かう。

「ルナ、依頼を一つ受けたい。中級相当で、スピードのある連中がいい。……ああ、この『風狼フェンリル・パピー』でいいな」

 シエラさんが引き抜いた依頼書には、街の郊外に出没する群れの討伐が記されていた。

「個体は中級下位ですが、群れとなれば中級上位の危険度になります。お気をつけて」

 ルナさんの言葉に、俺は喉の奥が乾くような緊張を感じた。

「さて、坊主ども、初任務だ」

 シエラさんが俺たちを振り返る。

「風を纏って高速で動く、厄介な相手よ」

 レイナさんが冷静に、しかし魔術師としての矜持を込めて付け加えた。

「開けた場所なら、私の広域魔法で一気に――」

「いや、嬢ちゃん。今回は攻撃に参加するな」

 シエラさんの言葉に、レイナさんが絶句する。

「は? なんでよ」

「お前の魔法は完成されすぎてんだ。今回は後ろで坊主とステファニーの連携を観察してろ。それがお前の役割だ」

 納得がいかない。そんな表情でレイナさんは唇を噛んだが、シエラさんの有無を言わさぬ目力に、最後は「……わかったわよ」と視線を逸らした。

 街を出て、俺たちは鬱蒼と木々が茂る郊外の森へと踏み入った。

 シエラさんは先頭を歩きながら、ふと後ろの俺たちを見た。

「なあ、ライト。もしあいつらとステファニーの二人きりで放り出されたら、どうする?」

「正面は受け止めますが……相手がこれだけ数が多いと、俺の盾じゃ綻びが出るかもしれません」

「私は、理論上は……近づかれる前に森ごと焼き払うわ」

 その回答に、シエラさんは昔の自分を思い出したかのように苦笑した。

「落第だな。俺も昔それで死にかけた。ライト、お前が盾になっても、奴らは木々を蹴って真上から降ってくる。死角への本能的な嗅覚は人間より上だ。嬢ちゃん、お前がここで広域火炎を撃てば、火炎旋風で酸欠になるか、火だるまの木々に囲まれて自滅だ」

 レイナさんが息を呑む。ここは『殲滅』が正解にならない場所なのだ。

 シエラさんは、一歩前に出たアルトの背中を指差した。

「初級ってのはな、弱ぇから初級なんじゃねえ。

 『小回りがきく』から初級なんだ。それを学べ」

 アルトさんは深く一つ呼吸を置くと、手袋の紐を締め直した。

「ステファニーさん。魔力切れの心配はないので、僕が絶え間なく『網』を張ります。あなたは感知補助と、その隙間への追撃をお願いします」

「はい〜、信じてますよ〜!」

 その時、森の鳥たちが一斉に飛び立ち、視界の外縁から風を切る音が重なった。

「来るぞ。……木々の影を狙え」

 シエラさんの声と共に、灰色の毛並みが五つ、弾丸のように飛び出してきた。経験則に基づいた動きで、二匹が左右から木々の合間を縫い、三匹が不規則なステップで正面から距離を詰めてくる。

(速い……! 初級一発じゃ、軌道を読まれて絶対に当たらない)

 俺が身構えた瞬間、アルトさんの指先がピアノの鍵盤を叩くように細かく動き始めた。

 後ろに下がったレイナさんは、不満をあらわにすることもなく、ただ静かに詠唱を止め、その瞳でアルトの挙動を追い始めた。

 初級魔法による、静かな支配。

 アルトという異質な「計算」が、今、戦場を編み上げようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ