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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第五十七話:次の仲間への言及

 エルトリアへと続く街道。夜の帳が下り、焚き火の爆ぜる音だけが周囲の静寂を際立たせていた。パチパチと火の粉が舞い、夜気とともに湿った土の匂いが漂う。俺は一日の歩行で重くなった脚を休めながら、使い慣れた剣を布で拭い、金属の鈍い光を見つめていた。

「そういえば」

 不意に、パチリと爆ぜる火を見つめていたシエラさんが口を開いた。

「レイナたちには、前に少し話したよな。これから面白いヤツに会いに行くって」

 その言葉に、スープの木皿を手にしていたレイナさんとステファニーさんが顔を上げた。

「……面白いヤツ、か。そういえば、そんなこと言ってたわね。五人目の仲間が、とんでもなく変わったヤツだって」

 レイナさんが、わずかに対抗心を滲ませた瞳でシエラさんを見返す。

「ああ。もうすぐ、そいつに会える」

「あんたがそこまで言うくらいなら、相当な実力者なんでしょうね。私以上の魔法の使い手なのか、確かめたいのよ」

 レイナさんの挑戦的な視線に、シエラさんは肩を揺らして笑い出した。

「ははっ! お前、そういうこと気にすんのか。タイプが違うだけだ。お前が『最強の矛』なら、あいつは……そうだな、絶対に壊れねえ『仕掛け』みたいなもんだ。お前も負けてねえが、あいつの粘り強さは常識が通じねえぞ」

 レイナさんは「ふん」と鼻を鳴らしたが、その口角はわずかに上がっていた。

「どんな人なんでしょうね〜……楽しみです〜……」

 ステファニーさんがおっとりと微笑む。シエラさんは俺の方へ視線を向け、その顔にはいつになく柔らかな笑顔が浮かんでいた。

「坊主、元気にしてっかな〜……」

「坊主……? シエラさん、誰のことですか?」

 俺が首を傾げると、シエラさんは火を突きながら答えた。

「ああ、その五人目のことだよ。俺は、そいつを『坊主』って呼んでる」

「じゃあ……次は男の子なんですね?」

 俺の言葉に、シエラさんは力強く頷いた。

「ああ、そうだ。男だ。安心しろ、ライト」

「……男の子。……それは、良かったです」

 つい本音が漏れ、俺は少しだけ肩の力を抜いた。

「ライト。あんた、何を安心してるのよ」

 レイナさんが意地悪く笑う。

「え……いや……その。ステファニーさんみたいに綺麗な人ばかりだと、剣を振るう以外で緊張しちゃうというか」

「あら、正直ね。ライト、あんた本当に可愛いわよ」

「本当ですね〜。ライトさん、真っ赤です〜……」

 二人にからかわれ、俺はいたたまれなくなって剣を磨く手に力を込めた。

 シエラさんはそんな俺たちのやり取りを愉快そうに眺めていたが、ふと思い出したように言葉を継いだ。

「そういや、年の話をしてなかったな。あいつは今16歳だ。レイナ、お前より一つ年下だが、中身は驚くほど大人びてるぞ」

(……レイナさんより年下。じゃあ、俺よりも年下か)

 俺が内心で年齢を数えていると、シエラさんは火の粉を散らしながら続けた。

「初級魔法の類しか持たねえはずなのに、その『使い道』がとんでもねえんだ。まるで、複雑な精密機械を組み立てるようにな。それを千回、万回と途切れることなく繋ぎやがる。会えばわかるさ。……それに、あいつは性格も変わってる。バカがつくほど、優しい」

「優しい……ですか〜?」

 ステファニーさんの問いに、シエラさんは少しの間沈黙し、どこか遠くを見るような目をした。

「ああ。自分のことなんてこれっぽっちも考えねえ。他人のために、平気で自分を削りやがる。……俺にとっては、放っておくとどこまでも無茶をしかねねえ戦友なんだ。見張ってねえと危なっかしくて見てられねえんだよ」

 シエラさんの口調には、戦友としての深い親愛と、確かな心配が混じっていた。

「……あたし、わかる気がします〜。放っておけない人、なんですね〜……」

 ステファニーさんが小さく呟く。その共感に満ちた瞳を見て、シエラさんは頷いた。

「ああ。だから、お前とは仲良くなれると思うぞ。ライト、お前からもあいつに声をかけてやってくれ。あいつは……あまり自分のことを話したがらねえ質だからな」

(俺より年下で、バカがつくほど優しくて、シエラさんにそこまで言わせる少年……)

 俺が前線で彼を支えられるだろうかという不安。だがそれ以上に、彼が背負う重荷を、今度は俺が剣を振るい、背中を預けられる盾になることで少しでも軽くしてやりたい。その覚悟が、胸の奥で静かに熱を帯びた。

 夜が明け、俺たちはついにエルトリアの白い城門を目前にしていた。

 開門を告げる重厚な鐘の音が響き渡り、街の鼓動が始まりを告げる。

「坊主……待ってろよ。もうすぐ会える」

 シエラさんが小さく、独り言のように呟いた。

 俺は一晩かけて磨き上げた剣の柄を、強く握り直した。

 俺たちの目の前で、城門がゆっくりと開放された。

 押し寄せる朝の喧騒と、商人たちの呼び声。

 その中に、俺たちの新しい希望であり、この旅の答えを握る少年が、待っているはずだった。

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