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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第五十二話:ライト、新技の習得

 《光剣付与》の基礎を叩き込まれてから、さらに数日が経過した。

 失敗と魔力枯渇を繰り返し、指先が痺れるような疲労に耐えながらも、俺は毎日訓練を続けていた。地味な反復練習だが、少しずつ、自分の魔力が鋼と馴染んでいく感覚だけが頼りだった。

 だが、シエラさんはその歩みを止めさせてはくれない。

「ライト。その『初級』の安定だけで満足してんじゃねえぞ。次は――中級に引き上げる」

 シエラさんが掲げた次なる目標、それは光中級《輝剣纏装シャイン・ブレード》だった。

「中級……俺に、届くでしょうか」

「届かせるんだよ。今のお前の《付与》は、魔力が剣の中心に固まりすぎている。ムラがあるんだ。刃の先端から柄の先まで、均等に魔力を編み込め。……剣そのものを、光の器にするイメージだ」

 俺は訓練場の中央で剣を構えた。

 視界の端では、ステファニーさんとレイナさんが見守っている。

「頑張ってください~」というステファニーさんの声に混じり、レイナさんが短く言った。

「中級なんて、今のあんたならすぐよ。……やりなさい」

 突き放すようでいて、確かな期待が混じるその言葉に、俺は短く「はい」と答えて意識を研ぎ澄ませた。

 集中する。魔力を力として押し出すのではなく、剣の一部として「同化」させる感覚。

 最初は、光が先端に届く前に霧散し、あるいは柄に溜まりすぎて弾けた。

「もっと細かく、丁寧にだ。神経を鋼の先にまで通わせろ!」

 シエラさんの怒声が飛ぶ。

 試行錯誤の末、俺は一つの境界を越えた。

 その瞬間、剣のどこかではなく――剣そのものが、ひとつの光として脈打った。

 白銀の剣身が、内側から溢れ出す純白の光に包まれる。

 中心部も、切っ先も、柄の装飾まで。すべてが均等な輝きを放ち、安定していた。

「……これが、《輝剣纏装》」

「ああ。中級としては申し分ねえ。その状態なら物理的な刃よりも、わずかに外側まで光の干渉領域が広がっている。……つまり、リーチが伸びてるってことだ」

 俺は訓練場の奥にある木製の標的に向かい、一気に踏み込んだ。

 シュン、と。

 物理的な鋼が届くよりも一瞬早く、拡張された光の層が標的を捉えた。

 抵抗は、ほとんどなかった。

 光を纏った一撃は、重厚な木標を吸い込まれるように真っ二つに分断した。切断面は、凄まじい熱量によって黒く焦げ、煙を上げている。

「習得だな。だが、浮かれるなよ。今の精度じゃ維持できても数分だ。集中を切らした瞬間、その光は一気に霧散する。まだ常用できる技じゃねえぞ」

 シエラさんの称賛を聞きながら、俺は自分の右手に目を落とした。

 凄まじい破壊力。焼き切れた断面。

 その光景が、不意に、前世の忌まわしい記憶を引き摺り出してきた。

 逆上して剣を振り回し、女性に大怪我を負わせてしまった、あの日の血の匂い。

 俺の指先が、目に見えて震え始める。

「ライト」

 シエラさんの声。

「お前、今――何を考えてた」

 俺は迷ったが、喉の奥から絞り出すように答えた。

「……怖くなったんです。この威力で、また人を傷つけてしまうんじゃないかって」

 シエラさんはすぐには答えなかった。

 一拍の沈黙。彼女は数秒、俺の震える手から視線を逸らした後、静かに俺の肩を掴んだ。

「……その震え、ただのビビりじゃねえな。女性恐怖症の原因も、根っこはそこか」

「はい……」

「いいか、ライト。お前がその剣で何を斬るかは、お前が決めることだ。確かにお前の光は鋭い。だが、お前が剣を振るわなければ、そこにいるレイナもステファニーも守れねえ。……その光を『凶器』にするか『守護』にするかは、お前の心次第だ」

 肩を掴む手の強さが、俺の震えをわずかに抑えてくれた。

 そこへ、レイナさんが歩み寄ってくる。

「ライト。あんたの気持ち、分からないでもないわ。……でも、あんたの光はあたしたちを守る光なのよ。あたしが、そう認めてるんだから。……自信持ちなさいよ」

 レイナさんの視線は、真っ直ぐに俺を射抜いていた。

「今の段階では――あたしの闇をここまで引き上げられるのはあんただけよ」と、彼女は小さく付け加える。

「……ありがとうございます」

 ステファニーさんも「ライトさんの光は、とても優しいですよ」と微笑んでくれる。

 

「焦るな、ライト。恐怖は持っておけ。それがない奴の剣は、ただの暴力だ」

 シエラさんの言葉を胸に刻み、俺は深く息を吐いた。

 中級技《輝剣纏装》。これを自在に制御できるようになれば、俺は本当の意味で、この人たちの「盾」にも「剣」にもなれる。

 訓練を終え、夕闇に染まる宿への道。

 隣を歩くレイナさんの歩調は、以前よりもずっと近かった。

「あんた、本当に成長したわね」

「レイナさんや、みんなが支えてくれるおかげです」

 俺がそう言うと、彼女は「……ふん、謙遜しすぎ。次はもっと完璧な光を見せなさいよ」と、少しだけ嬉しそうに笑った。

 自分の力を恐れる気持ちは、まだ消えない。

 けれど、守りたい人たちが、俺の光を「優しい」と言ってくれる。

 俺は心地よい疲労感に耐えながら、震えの残る右手で、もう一度剣を握り直した。

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