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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第五十一話:ライトの光属性応用訓練

 《煌闇の紫矢》という切り札を手にしてから、数日が経過した。

 俺たちは連日、ギルドの訓練場にいた。シエラさんが手配しているという「五人目の仲間」の合流を待つ間、俺たちは一刻も無駄にするつもりはなかった。

 だが、俺とレイナさんの連携が深まるほどに、シエラさんの視線は厳しさを増していった。

「ライト。お前、いつまでレイナの『電池』でいるつもりだ?」

 訓練の合間、シエラさんの問いかけに俺は言葉を詰まらせた。

「……電池、ですか」

「そうだ。今のお前は、レイナの闇を増幅させることに特化しすぎている。だが、乱戦になれば常に隣にいられるとは限らねえ。お前自身の剣が鈍ければ、そこがパーティの穴になるんだよ」

 シエラさんは俺の愛剣を指差し、断言した。

「今日から光属性の応用訓練を始める。《光剣付与ライト・エンチャント》を、実戦に耐えうるレベルまで引き上げるぞ」

 俺は思わず、自分の剣を見つめた。これまでも《光剣付与》は使ってきた。だが、俺のそれはお世辞にも完成されているとは言い難い。

「今の俺の付与は……まだ不完全だ、ということですね」

「ああ、不完全どころか『基礎の入り口』で止まってる。お前の光は表面を撫でているだけだ。だからすぐに消えるし、持続しねえ。いいか、光の魔力を剣の内部――芯まで浸透させるイメージを持て」

 剣の内部へ、魔力を流し込む。

 言葉で言うのは簡単だが、魔法が苦手な俺にとって、目に見えない魔力を固形物の奥へ浸透させる作業は、針の穴に太い糸を通すようなもどかしさがあった。

「やってみます」

 俺は訓練場の中央に立ち、剣を構えた。背後では、ステファニーさんとレイナさんが静かに見守っている。

「頑張ってください~、ライトさん」

 ステファニーさんの柔らかな応援が耳に届く。一方で、レイナさんは黙って俺の魔力の流れを凝視していた。

 集中する。

 魔力を剣の表面で留めず、鋼の粒子の一つひとつに染み込ませるように。

 だが、光はパチパチと表面で弾け、すぐに霧散してしまう。

「違う。もっと奥だ。剣を自分の体の一部だと思え。お前の血管が剣の中まで通っている感覚だ」

 シエラさんの指導が飛ぶ。

 俺は歯を食いしばり、何度も、何度も魔力を流し込んだ。

 

 数えきれないほどの失敗の末、ふとした瞬間に感覚が変わった。

 剣が、内側から鈍い熱を持ち始めたのだ。淡い光が、鋼の奥底から滲み出すように定着していく。

「……消えない」

 これまでのように数秒で消える不安定な光ではない。弱々しいが、確かに剣の中に光が留まっている。

「よし、ようやく『初級の安定化』だな。だが勘違いするなよ、ライト。それはまだ“完成”じゃねえ。静止した状態でようやく維持できたに過ぎない。実戦の衝撃を受ければ、今のお前の制御じゃ簡単に崩れる」

 シエラさんの言葉は厳しかったが、それでも「安定した」という事実は俺の自信になった。

「はい。この感覚を忘れないようにします」

「休む暇はねえぞ。次は遠隔攻撃――《光弾》の理屈を剣で再現する」

 シエラさんの次なる課題は、剣から光の刃を飛ばす技術だった。

「魔法として放つんじゃねえ。剣に浸透させた光を、振る瞬間に遠心力と魔力圧力で『押し出す』んだ」

 これがさらに難航した。剣を振れば、纏わせた光まで一緒に霧散してしまう。

「あんた、力の使い方が雑なのよ」

 見かねたように歩み寄ってきたのは、レイナさんだった。

「シエラが言う『押し出す』だけじゃ、魔力が散らばるだけ。……剣を振る直前、魔力を一箇所に『圧縮』するの。極小の点にまで押し固めて、それを一気に解放する。そうすれば、嫌でも飛んでいくわ」

 魔法制御の天才である彼女の助言を反芻し、俺は剣の切っ先に意識を集中させた。光を限界まで凝縮し、暴発寸前のエネルギーを鋼の中に閉じ込める。

 今だ。

 踏み込みと共に、一気に剣を薙いだ。

 

 シュンッ――!

 

 空気を切り裂く鋭い音。剣先から放たれた三日月形の光刃が、数メートル先の木標の表面を浅く抉り、火花を散らして消えた。

「……飛んだ」

「最初にしては合格点ね。でも、今のじゃ威力不足よ。圧縮の精度も、放出のタイミングもまだまだ」

 レイナさんは厳しく指摘したが、その口元はどこか満足げに綻んでいた。俺が彼女の助言を形にしたことが、少しだけ嬉しかったのかもしれない。

「いいコンビだな、お前ら」

 シエラさんが歩み寄り、俺の肩を叩いた。

「今日の収穫は、光剣の安定と、光刃の入り口だ。だがな、ライト。今のお前はまだ『初級の枠』の中にいる。次に目指すのは中級技《輝剣纏装シャイン・ブレード》だ。これまでの表面的な付与とは次元が違う、光を完全に掌握する技だ」

「中級……」

 今の初級技を安定させるだけで、俺の魔力は限界に近かった。回復魔法をかけてくれるステファニーさんの手元で、自分の指先が微かに震えている。

 

「お前の光属性は、まだまだ伸びる。だが、その階段は一段ずつだ。明日もこの基礎を叩き込むぞ」

 訓練を終え、夕闇に染まる街を宿へと向かう。

 隣を歩くレイナさんは、どこか誇らしげに俺の歩調に合わせていた。

「ライト。あんた、今日だけでかなり魔力の使い方がマシになったわよ。あたしの指導がいいからでしょうけど」

「はい。本当に、レイナさんのおかげです。ありがとうございます」

 俺が素直に礼を言うと、彼女は「……ふん、次はもっとマシな光を見せなさいよ」と、いつものように顔を逸らした。

 一歩ずつ、確実に。俺は自分の光を、俺だけの剣を磨き始めている。

 いつか来る「最後のピース」との合流。その時、俺が彼らを、そしてレイナさんを守れる強さを持っていられるように。

 俺は心地よい疲労感と共に、明日への決意を新たにしていた。

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