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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第四十八話:運命的な相性の発現

 翌日。訓練場に漂う空気は、昨日までとは明らかに違っていた。

 シエラさんは抜き身の剣を構え、俺とレイナさんを真っ向から見据える。

「昨日はお互いにブレーキをかけていた。ライトはレイナの闇を傷つけるのを恐れ、レイナは自分の闇が暴走するのを恐れた。……だが今日は違う」

 シエラさんが手を掲げると、訓練場の周囲に昨日よりも重厚な、二重の魔法障壁が展開された。

「正直、賭けだったが……この障壁が必要になるくらいの確信はある。ライト、レイナ。相手を信じて全力を出せ」

 レイナさんが杖を握る指先に力を込める。

「……わかったわ。あたしも、出し惜しみはしない。ライト、中途半端な光なら邪魔なだけよ。あたしの闇を……ちゃんと、包み込みなさい」

「はい。本気で行きます」

 俺は深く息を吸い、光属性の魔力を剣に集中させた。昨日とは練り上げる密度が違う。剣は眩い黄金の輝きを放ち、周囲の空気そのものが魔圧に押されて、キリキリと悲鳴を上げた。

「始めろ!」

 シエラさんの号令と同時に、レイナさんの詠唱が響く。

「闇のダーク・アロウ――!」

 杖の先に、漆黒の、底知れない闇が形成される。昨日よりも濃く、重い。

 魔力が集まり、形を成し、完成する――その瞬間。

 俺はレイナさんが放つのを待たず、彼女の魔力が「完成する」と信じて、コンマ数秒早く剣を振り抜いた。

 光を纏った剣が、闇の矢の軌道に重なる。

 光が闇に触れた瞬間、世界から音が消えた。

(……っ!?)

 視界が反転する。白が黒に、黒が白に。

 眩い光の中に、昨日よりも鮮烈な「黒いノイズ」が走り、俺の中の得体の知れない何かがレイナの闇に呼応して狂喜した。

 本来は反発するはずの魔力が、パズルのピースのように噛み合った瞬間の、爆発的な増幅。

 漆黒だった矢は、光を喰らい、呑み込み、禍々しくも美しい「紫色」へと変貌を遂げた。

 ズドォォォォォン!!

 放たれた紫の奔流は、訓練場の空気を熱線となって焼き切り、一直線に奥の壁へと衝突した。

 凄まじい轟音。一重目の障壁がガラスのように粉砕され、二重目の障壁に無数のひびが走る。透過した衝撃の余波だけで、周囲の小石が砂となって弾け飛んだ。

「……嘘でしょ」

 レイナさんが、呆然と自分の手を見つめていた。その手は、小刻みに震えている。

「色が、変わった……。あたしの闇が、紫に……。こんな、あたし一人じゃ、何年修行しても絶対に届かない場所に……」

 それは天才としてのプライドが、自分以上の「何か」に塗りつぶされた瞬間だった。

 恐怖、喪失感。そして、自分の魔法をここまで変貌させた隣の少年への、抗いがたい畏怖と恍惚。

「……ここまでとはな」

 シエラさんが、剣を収めながら呟いた。その表情には、冷や汗と、それ以上の興奮が混じっている。

「予想を遥かに超えたな。条件次第では、魔王軍幹部の特級結界すら正面から貫ける可能性がある。並の上級魔法を十発束ねたような威力だ」

「ライト……」

 レイナさんがゆっくりと俺を振り返る。その瞳には、今まで見たことのない複雑な感情が渦巻いていた。

「あんた……何者なのよ。あたしの闇を、こんな……見たこともない場所にまで引きずり込んで」

 俺は自分の右手の熱を確かめる。あの不気味なノイズの感触が、指先にまだ冷たくこびり付いている。

「……届いた、というより。触れてはいけない場所に、手が届いてしまった気がします」

「ふん、お似合いだな。光が闇を食らい、闇が光を呑んで昇華した」

 シエラさんが、不吉な笑みを浮かべて締めくくった。

「その紫の輝き――これからは、《煌闇の紫矢イクリプス・ボルト》とでも呼ぶんだな。不吉だが、これ以上ないほどお前らに相応しい」

 帰り道、レイナさんは一言も発さなかった。

 ただ、時折自分の杖と、俺の横顔を交互に見つめるその視線には、確かな「依存」と「執着」の兆しが混じっていた。

 それは偶然の相性などではない。

 ずっと噛み合うのを待っていた運命の歯車が、今日、初めて回り始めた音だった。

 俺たちの新技、イクリプス・ボルト。

 それは希望の光であると同時に、俺の中に眠る闇を呼び覚ます、禁忌の扉を開いたような気がしてならなかった。

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