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第四章: 境界の守護者と四つの異能『選ばれし者たちは、まだ互いを知らない』  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第四十七話:ライトの光と闇の増幅実験

 連携訓練が始まって数時間が経過した。

 レイナさんの突撃に合わせるタイミング、ステファニーさんの癒やしの間合い。基礎的な動きは噛み合い始めていたが、シエラさんの表情は晴れない。

「休憩だ」

 シエラさんは水を飲み干すと、鋭い視線をレイナさんに向けた。

「お前の闇魔法、威力は十分だが……魔王軍の幹部クラスには届かねえ。奴らは闇を相殺する結界や特殊な障壁を持っている。今の火力じゃ、それらを突破できねえんだ」

「届かない……? じゃあ、どうすればいいのよ。魔力を増やせばいいの?」

「それだけじゃ足りねえ。お前に必要なのは――『増幅』だ」

 シエラさんは俺を指差した。

「ライト。お前の光属性は純度が高すぎる。普通、光と闇は打ち消し合うもんだが、お前の光ならレイナの闇を消さずに、その輪郭を焼き付け、加速させられる可能性がある。反発し合うはずの力が、噛み合ったときの――増幅だ」

 レイナさんは俺を怪訝そうに見つめた。

「……ライトの力を借りるってこと? 面倒くさそうね」

「お前一人じゃ勝てねえ。だが、ライトと協力すれば、一撃で奴らの障壁をぶち抜ける可能性がある。……やってみるか?」

 レイナさんは小さく息を吐き、渋々と頷いた。

「わかったわ。実験してみましょう」

 俺とレイナさんは訓練場の中央に立った。

「ライト。お前は光を剣に纏わせ、レイナの魔法を包み込み、押し出すように剣を振れ。斬るんじゃない、加速させる『風』になるんだ」

「加速させる、風……」

 俺は深く息を吸い、剣に光を集中させた。

「闇のダーク・アロウ――!」

 レイナさんの杖から漆黒の矢が放たれる。俺はその軌道に沿わせるように剣を振り抜いた。

 光が闇に触れた瞬間、パチリと火花が散り、矢が訓練場の壁に当たって乾いた音を立てた。

「……この程度?」

 レイナさんの声に失望が混じる。

「威力は三割増といったところね。でも、あんたに合わせて詠唱を調整して、意識を割いて、たったこれだけ? あたしが一人で二発撃ったほうが速くて強いわ。効率が悪すぎる」

 確かにその通りだ。今のままでは「連携」のメリットが薄い。

「……待って。今の、俺の光が弱すぎた気がします」

 俺は剣を握り直した。言われた通りにやるだけじゃダメだ。もっと、彼女の魔力の奥まで踏み込まないと。

「シエラさん、もう一度。今度は光を最大限に込めます」

 二回目。俺は意識の深層から魔力を引き出し、光の輝きを強めた。

 だがその時――。

(……っ!?)

 光を限界まで引き絞った瞬間、心臓の奥が不自然に冷えた。眩い黄金の輝きの中に、一瞬だけ、墨をこぼしたような「黒いノイズ」が混じった気がした。

 脳裏に響く、冷たい残響。だが俺はそれを無視し、レイナの放った二発目の矢に光をぶつけた。

 ドォォン!!

 先程とは比較にならない衝撃波が周囲を揺らし、壁に蜘蛛の巣状のひびが走った。

「……威力が上がった!?」

 驚くレイナさん。だが、シエラさんは厳しい表情を崩さない。

「いや、まだ不完全だ。偶然の成功に過ぎねえ。……ライト、推測だが、お前の光が触れるのは『闇が完全に形成された瞬間』である必要がある。レイナが放つと信じて、お前は先に剣を振り始めろ。賭けになるが、一歩でも遅れれば、お前の光はただの邪魔な壁になるぞ」

 レイナさんは俺を見て、少しだけ迷うように眉を寄せた。

「信じて先に振れ……なんて。あたしが失敗したら、あんたの光は空を切るだけよ?」

「構いません。レイナさんが失敗するなんて、思ってませんから」

「……。変なところで自信満々なのね、あんた」

 彼女はため息をつき、杖を構え直した。

「……明日も、付き合いなさいよ。このままだと、あたしが『未完成』のまま投げ出したみたいで気分が悪いのよ」

 いつもの高圧的な物言い。けれど、そこには明確に俺への「期待」が混じっていた。

「ライトさん、お疲れ様です〜」

 ステファニーさんが歩み寄り、痺れた俺の手をふんわりと癒やしてくれる。

「レイナさん、少しずつ歩み寄ってくれてますね〜」

「そうですね……。でも、まだ足りない。明日、もっと練習すれば、きっと」

 夕闇が迫る訓練場で、俺は自分の右手のひらを見つめた。

 光を増幅させた瞬間に感じた、あの「冷たい闇」の感触。

 増幅実験の成功への期待と、自分の中に潜む得体の知れない力への不安。

 その二つが入り混じったまま、俺たちは宿への帰路についた。

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